「いよいよ見応えのあるカードが出てきたわね」そんな風に私が頷いていたのは金曜日、ラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるスペイン・サッカー協会施設で行われたコパ・デル・レイ16強対決組み合わせ抽選の結果を見た時のことでした。いやあ、この辺まで来ると、生き残りのほとんどが1部のチームなのは例年のことなんですが、何せ昨季はマドリッド両雄が揃って早期敗退したため、ほとんどコパを堪能できず。それが今季はどちらも32強対決を突破して、レアル・マドリーはエルチェ、アトレティコはレアル・ソシエダとそれぞれ、マルティネス・バレロ、レアル・アレナでのアウェイ戦で準々決勝行きの切符を争うことに。

ちなみに1部勢同士のカードは5つあって、他はベティスvsセビージャのアンダルシアコパダービー、アスレティックvsバルサの昨季コパ決勝の再演、そしてマジョルカvsエスパニョールなんですが、ちょっと得した感じなのは2つしかない2部生き残りの1チーム、ジローナと当たった弟分のラージョだったかと。2部で残留争いをしているマドリッドの弟分、フエンラブラダから後半ロスタイムに1点を奪って勝利、次もスポルティング・ヒホンと当たることになった、自身も残留争い真っ只中にあるカディスなどは、逆に1部のプライドみたいなのがあるため、少々、有難迷惑だったりするかもしれませんけどね。そんな中、当たりを引いたのは、ヘタフェを5-0と破った後、セルタも2-1で倒し、RFEF1部(実質3部)で唯一、ここまで上がってきたアトレティコ・バレアレスとの組み合わせになったバレンシアでしょうか。

え、そのコパ16強対決はスペイン・スーパーカップに出場しないチームは来週の週末、出場するチームはその次の週のミッドウィークに開催とまだ先だし、肝心のマドリッド勢の32強対決はどんなだったのかって?そうですね、順番にお伝えしていくことにすると、まず先陣を切ったのは2部の弟分、レガネスで水曜の夕方にレアル・ソシエダとブタルケで対戦。やはり1部、しかもその上位チームでEL決勝トーナメントにも残っている相手というだけでなく、「Hoy hemos traído a todo lo que teníamos. Hemos sacado el mejor once possible/オイ・エモス・トライドー・ア・トードー・ロ・ケ・テニアモス。ヘモス・サカードー・エル・メホール・オンセ(使える選手全員を連れて来て、最高のスタメンを並べた)」(イマノル監督)せいもあったんでしょうね。

前半9分にはイサクに、43分にもオジャルサバルにゴールを決められて、対照的に柴崎岳選手をベンチ外にするなど、控え選手中心で挑んだレガネスは互いの実力差をはっきり示されてしまったんですが、冷たい雨の中、スタンドのファンが傘をさして応援する後半、まさかサプライズが待っていたとは!それが始まったのは15分、ランジェロビッチの上げたクロスをファン・ムニョスがヘッドで1点を返したかと思いきや、その10分後にもまた彼がエリア前からのシュートを決め、あっさり同点に追いついてしまったとなれば、昨年はコロナ禍で開催できなかったロス・レジェス・マゴス(東方の3賢人)のcabalgata(カバルガタ/パレード)を見に行かず、寒さに耐えてスタジアムに残っていたサポーターたちも報われた?

でもねえ、そのすぐ後だったんですよ。せっかくremontada(レモンターダ/逆転勝利)ムードに入りながら、この試合に抜擢されたカンテラーノ(レガネスBの選手)、リーガ出場未経験のルビオが自陣エリア内でオジャルサバルの足を踏んでしまったのは。PKのスペシャリストである当人がこれを決め、最後はアルナイスやルーベン・パルド、ボルハ・ガルセスら、主力を投入したものの、レガネスが追いつくことはできませんでしたっけ(最終結果2-3)。

それでもファンは、「ハーフタイムまでに0-2にされ、点差はもっと開いていた可能性があった。その時点でのオプションは2つ。土曜のリーガのことを考えるか、勝利を信じて戦うか。Lo hemos querido hasta el final/ロ・エモス・ケリードー・アスタ・エル・フィナル(ウチは最後まで勝利を求めた)」というナフティ監督のチームの健闘を拍手で称えてくれていましたからね。これはこれで、今はまだ勝ち点差9もありますが、昇格プレーオフ出場圏入りを目指して、シーズン後半戦の巻き返しを図るのには、いいキッカケになるかもしれませんよ。

そして水曜にはラージョも2部のミランデスと戦ったんですが、こちらは後半22分までスコアが動かず。先発したファルカオではなく、アンドレス・マルティンのヘッドで奪った1点を最後まで守りきり、イラオラ監督がアンドゥーバへの凱旋帰還を16強進出で飾ることができたのは良かったかと。そうそう、彼らはこの日曜にはベニト・ビジャマリンでベティス戦なんですが、リーガ前節の年明け試合では、アトレティコにワンダ・メトロポリターノで2-0と負けてスタート。おかげで兄貴分だけでなく、マジョルカに勝ったバルサにも抜かれ、6位になってしまったんですが、まだ3位のベティスとの勝ち点差は3ですからね。アウェイの苦手意識を克服する意味でも勝利を目指してもらいたいところですが、相手もコパではローテーションメンバーを使って、2部のバジャドリーに0-3と快勝したばかりとなると、ちょっと難しいですかね。

え、それで2年連続でエル・コジャオを訪れたマドリーはリベンジを果たせたのかって?そうですね、クルトワ、ベンゼマ、モドリッチ、メンディにお休みを与えたアンチェロッティ監督のチームは少々、手こずったものの、前半39分にはロドリゴの蹴ったCKをミリトンがヘッドで決め、先制点奪取に成功。でもこれって、延長戦で2-1とアルコジャーノに負けた昨季とまったく同じパターンで、しかもこの日は後半開始早々、遠征に同行した唯一のCFだったマリアーノがハムストリンングスをケガして交代という不幸に見舞われたから、さあ大変。おまけに仕方なく、アセンシオを入れて、アザールにfalso nueve(ファルソ・ヌエベ/シャドーCF)をさせていた20分、カセミロをエリア内で切り返したダニ・ベガがとてもRFEF1部の選手とは思えないgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決め、同点にされてしまったとなれば、胸がザワザワし始めたマドリーファンも多かったかと。

でも大丈夫。この日の彼らには昨季はなかった運があったんです。いやだって、31分に撃ったアセンシオのシュートは敵に当たって軌道を変え、GKホセ・ファンを惑わして勝ち越しゴールになりましたし、その2分後など、アルコジャーノがクリアしようとしたボールがチームメートに跳ね返されてエリア内に。それを追ったイスコがホセ・ファンにぶつかられる直前に蹴っていたんですが、最後は相手の踵に当たって3点目になったとなれば、これをツキと呼ばずして何と呼ぶ(最終結果1-3)?

いえ、アンチェロッティ監督は「Este equipo esta noche ha puesto la calidad abajo y ha luchado/エステ・エキポ・エスタ・ノチェ・ア・プエストー・ラ・カリダッド・アバホ・イ・ア・ルチャード(今夜のチームはプレーの質を脇に置いて戦った)。ここではそれをしないと、昨季のように負けることになる」と言っていましたけどね。大体がして、実質3部のチーム相手に敗退した前回が異常だっただけで、いえ、去年はコロナ禍のせいで無観客試合となり、スタジアムに隣接したマンションの住人だけしか、生で見られなかったゴールデンマッチのリピートとあって、この日はスタンドどころか、ピッチが見える周辺道路からも応援していた地元のファンには残念でしたけどね。

この先は負けても言い訳のできる同等の1部チームとしか、ほぼ対戦しないとあって、今ではマドリーの関心も土曜午後9時(日本時間翌午前5時)からのバレンシア戦に移っていますが、ちょっとこの試合は用心が必要かも。というのも、相手がコパでは後半ロスタイムにチェリシェフが決勝ゴールを挙げ、2部のカルタヘナを1-2で下したというのは別にして、ボルダラス監督は前節、多彩なファールを駆使して、マドリーから1-0の勝利を挙げた弟分ヘタフェを5年間率いていた指揮官。その哲学はバレンシアでも忠実に引き継がれ、今季は20チーム中、ヘタフェを2位に抑えて、ファール数1位を維持しているから。

ただ、司令塔のカルロス・ソレルがコパで負傷、他にもユネス・ムサー、ディアカビ、ラチッチと出場が微妙な選手もいる上、ボルダラス監督の愛弟子、ヘタフェのカンテラ出身のウーゴ・ドゥーロも出場停止となると、バレンシアのプレーも変わってくるかもしれませんけどね。どちらにしろ、コリセウム・アルフォンソ・ペレスではまだクリマスのバケーション気分が抜けなかったマドリーの選手たちもアルコジャーノ戦のように闘争心を忘れずにプレーしないと、サンティアゴ・ベルナベウのファンをガッカリさせることになりかねないかと。

でもまあ、今度はコパでお休みをもらった選手たちに加え、いよいよコロナ明けのビニシウスも戻って来ますしね。この試合に勝てば、2位セビージャとの差を勝ち点5のまま維持して、サウジアラビアでのスペイン・スーパーカップ準決勝のクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)に挑めますし、そちらでは背中に痛みを抱えるベイルは間に合わないかもしれませんが、カルバハルとヨビッチは復帰できそうというのはいいニュースですよね。

そして翌木曜、極寒の夜9時半からラージョ・マハダオンダ(RFEF1部、ラージョ・バジェカーノと経営関係はない)と対戦したアトレティコはというと。いやあ、いくら相手がホームして使っているとはいえ、いつも自分たちが練習しているマハダオンダ(マドリッド近郊)のミニスタジアムでは真剣勝負の雰囲気に欠けると心配したか、ワンダ・メトロポリターノを会場として提供したのがバッチリ当たったんですよ。というか、よっぽどここ2年、格下の2部B(今季からRFEF1部と2部に分裂)だったクルトゥラル・レオネサとコルネジャに早期敗退を喰らっているのが効いたんでしょうね。これまでコパでは常に控えGKを使っていたシメオネ監督がルコントではなく、オブラクを先発させていたのには私も目を白黒させるばかり。

それ以外の選手もリーガ前節のラージョ戦から、コレアがクーニャに、エルモーソがフェリペに、ニューキャッスルに行ってしまったトリッピアーが負傷から復帰したマルコス・ジョレテンテに代わっただけと、バリバリのレギュラーを並べたとなれば、「La Copa es muy importante para nosotros y la vamos a pelear/ラ・コパ・エス・ムイ・インポルタテ・パラ・ノソトロス・イ・ラ・マモス・ア・ペレアル(ウチにとって、コパはとても重要で、優勝を争うつもりだ)」(クーニャ)と、選手たちが監督からのメッセージを感じ取ったのも当然だった?おかげで鼻息荒く、序盤からトップギアでスタートした彼らは、うーん、1万7000人という、ワンダの正面スタンドを除いた1、2階を埋めるだけの人数ですが、定員3000人のホームを大いに上回るチケット収入を得ることができたぐらいが慰めで、マハダオンダにはちょっと、気の毒だったんですけどね。

相手は開始1分になる前にFKから、コンドグビアのヘッドを弾いたGKゴルカが手をルイス・スアレスに踏まれ、ほとんど夢の舞台でプレーすることなく、控えのアルバロに代わらないといけなかったという不幸も重なりましたが、こうなるともうカテゴリーの差がありあり。ええ、12分のゴールはオフサイドで認められなかったものの、17分にはエリア内からボールを出そうとしたカサードのパスがカラスコに当たり、またもやオフサイドの位置だったクーニャのシュートによるゴールがスコアに挙がって先制点に。おかげでワンダでの試合ながら、ACDCのサンターストラックが大音響で鳴り響くラインアップ紹介の電飾ショーもなく、アカペラでクラブ歌を合唱することもできず、欲求不満を感じていた多数派のアトレティコファンがどんなに沸いたことか。

いえ、こういう不具合も16強対決から、VAR(ビデオ審判)が入れば、なくなるはずですけどね。更に17分、アトレティコはレマルのスルーパスをロディが撃ち込んで畳みかけると、41分には右サイドから切り込んだジョレンテのラストパスを受け、とうとう9試合ぶりにルイス・スアレスがゴールを挙げてくれたとなれば、こんなに心強いことはない?最近、よくケガがぶり返すヒメネスとジョレンテがコケとベルサイコに、スアレスのリーガ次戦出場停止に備えて、クーニャがコレアに代わった後半もアトレティコの勢いは止まらず、22分にはコレアのスルーパスから、こちらも途中出場のグリーズマンが4点目をゲット。唯一の後悔はその後、昨年のマドリーダービーの後、右太ももを痛め、バケーション中のコロナ感染もあって、ようやくこの日、実戦復帰となった彼が31分に同じケガを再発してしまったことでしょうか。

ええ、この週末ばかりか、来週のスペイン・スーパーカップにも出場できないことが自分でもわかったか、泣きながら、当人もピッチを去って行ったんですが、いやもう、その時はすでにアトレティコの交代枠は残っておらず、チームは10人で残り時間をプレーすることになったんですけどね。34分にはカラスコが自陣から放ったスルーパスを追いかけ、ジョアン・フェリックスが5点目を決めているとなれば、これぞまさに昨季リーガ王者の実力?

いえ、2つもカテゴリーが下のチーム相手に0-5と大勝したからって、全然、威張ることはできませんけどね。選手たちが真価を見せつけないといけないのはこの日曜、午後9時からのビジャレアル戦で、何せ、出場停止なのはスアレスだけでなく、ヒメネスもですし、サビッチはまだリハビリ中。グリーズマンもいないとなれば、それこそクーニャ、コレア、ジョアンの3人で点を取ってもらわないといけないんですが、さて。ちなみにウナイ・エメリ監督のチームは木曜にスポルティング・ヒホンに2-1で負け、コパ敗退しているんですが、リーガはレバンテに5-0のgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らわせたばかり。昨年の4連敗で勝ち点差14ついた首位のお隣さんに追いつく望みを持っているアトレティコファンはもうあまりいないとはいえ、今はCL出場圏の3、4位が激戦区になっているため、しばらくこの調子を維持してほしいところです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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