「今ならメガプレゼンの絶好の機会だったのに」そんな風に私がガッカリしていたのは月曜日、とうとう今季リーガ1部の全日程が終わり、W杯も11月開催とあって、これからしばらく暇を持て余すことに気がついた時のことでした。いやあ、去年の夏もエムバペ移籍に2億ユーロ(約280億円)のオファーを出して、PSGに蹴られたレアル・マドリーだったんですけどね。昨季はコロナの流行により、ホームゲーム全てをエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で無観客開催。サンティアゴ・ベルナベウではシーズオフになっても全面改装工事が続いていたため、とてもファンをスタンドに入れての入団プレゼンなんて望めなかったのは本当ですよ。

今季はまだ事情が変わり、昨年9月からはベルナベウのスタンドにも観客が入れるようになって、いえまあ、そのおかげでCL決勝トーナメント16強対決PSG戦、準々決勝チェルシー戦、準決勝マンチェスター・シティ戦と3回も奇跡のremontada(レモンターダ/逆転突破)を達成することができたという見方もありますけどね。もちろん、この土曜のリバプールとの決勝もスタジアムに大型スクリーンを設置して、ソシオ(協賛会員)限定のスタッド・ド・フランスのチケット購入権やUEFA販売分の抽選に外れたファンのため、もしくは航空券や宿泊費の高騰で涙を飲んだ私のような者のため、パブリックビューイングを実施してくれるんですが、マドリーの場合、ピッチに組んだその設備が翌日夜には祝賀イベントの舞台に転用されるのも2014年以来、4回あったCL決勝のお約束。

その分、スタッフも手馴れているというのはともかく、まだ場内にはシートに覆われているセクションがあるため、2009年夏に8万人を集めたクリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッドから移籍)には及ばずとも、エムバペの入団プレゼンも2019年に5万人が駆けつけた現時点で最後のギャラクティコ、アザール(同チェルシー)並みの規模にはなったんじゃないかと思いますが、いやあ。それがまさか、2週間程前にはマドリッドをチームの同僚アクラフと電撃訪問。フランス・サッカー協会の年間最優秀選手表彰行事のミックスゾーンなどでも一段と流暢になったスペイン語での受け答えを披露していたため、もうマドリーへの入団契約はまとまっているとまで言われていた彼なんですけどね。

先週半ば辺りから急に風向きが変わり、とうとうリーグ1最終節のメス戦キックオフ前にパルク・デ・プランスのピッチにアル・ケライフィ会長と立ち、2025年までの契約延長を発表って、もしやこれがPSGのレモンターダ返し?うーん、そのメス戦でハットトリックを挙げ、リーグ優勝したチームの有終の美に華を添えたエムバペは日曜の記者会見で、「マドリーファンの失望はわかるけど、ボクの決断を理解してほしい。自分はフランス人で、ここでキャリアを続けてタイトルを獲りたい」と言っていましたけどね。マルカ(スポーツ紙)などによると、マドリーの提示したPrima de fichaje(プリマ・デ・フィチャヘ/移籍金なしで入団する選手へのボーナス)は1憶3000万ユーロ(約180億円)に対して、PSGのPrima de renovacion(プリマ・デ・レノバシオン/契約延長へのボーナス)は3億ユーロ(約420億円)。

年棒も向こうが税引き後5000万ユーロ(約69億円)、マドリーは2600万ユーロ(約36億円)と、金額だけ見ると、比べ物にならないんですが、何とも世知辛い。こうなると今回、パリでの決勝では絶対勝って、クラブ大会最高のタイトルを得るには、マドリーが最適な場所であることを知らしめてやりたいという、ファンの気持ちもわかりますが、実際問題として、今季リーガ27得点でピチチ(得点王)に輝いたベンゼマは34才とはいえ、まだ1、2年は賞味期限がありそうですしね。

同17得点で2位のビニシウス、ロドリゴらも順調に成長しているため、アタッカーの補強が是が非でも必要ではないとはいえ、ここしばらく、ギャラクティコ選手の加入がないのはちょっと、淋しい感もなくはなし。まあ、モナコにいた2017年頃から、追いかけていたクラックに振られてしまったペレス会長が次に誰をターゲットにするかは、おいおいに名前も出て来るかと思いますが、今は先週末のリーガ最終節の話をしていかないと。

金曜にはベルナベウでのベティス戦に行った私だったんですが、5節前には優勝が決まり、ここ4試合はずっと消化試合モードだったせいか、ファンの関心もすでにCL決勝一択。ええ、fondo sur/フォンド・スール(南側ゴール裏席)に上がった横断幕も「El Rey de Europa siempre vuelve/エル・レイ・デ・エウロッパ・シエンプレ・ブエルベ(ヨーロッパの王は常に戻ってくる)」という文面でしたし、「Nos vamos a Paris!/ノス・バモス・ア・パリス(ボクらはパリへ行く)」のカンティコも何度か聞こえましたしね。試合の方はまず、マドリーの選手がPasillos de campeones(パシージョ・デ・カンペオネス/チャンピオンの花道)を作って、コパ・デル・レイ王者であるベティスを迎えると、そこを通り向けた選手たちがまたは花道を作って、リーガ王者のマドリーを称えるというdoble pasillo/ドブレ・パシージョ(花道ダブル)でスタート。

それはそれで私も初めて見たため、興味深かったんですが、ゲーム的には同時刻に始まったエスタディオ・バジェカスの方が沢山、ゴールが生まれていたんですよね。ええ、前半18分にはアルバロ・ガルシアが口火を切って、1部残留祝いに集まったラージョのファンを歓喜させたものの、すでに兄貴分とのベルナベウの試合で2部降格が決まっていたレバンテながら、26分にはマレロが反撃の狼煙を上げる同点弾。44分にもロジェールに決められ、リードが広がっただけでなく、後半はキャプテンのモラレスに1部お別れゴールを奪われたと思いきや、一転、その直前のプレーが見直しVAR(ビデオ審判)でペナルティに。セルジ・グアルディオラがPKを沈めて、1-4のスコアが2-3に変わるとは、あら不思議。

とはいえ、3節前の弟分ダービーで残留を達成して以来、すでにラージョの選手たちの頭はバケーション入りしていたんでしょう。結局、31分にはコケに4点目を決められて、2-4で負けてしまいましたが、え、私がオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継でレバンテのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を聞いている間、マドリーとベティスは何をしていたのかって?いやあ、それがロドリゴとナチョ以外、土曜のCL決勝先発メンバーを並べたアンチェロッティ監督だったんですが、選手たちも「El partido ha sido más para coger ritmo, se notaba más como un partido de verano/エル・パルティードー・ア・シードー・マス・パラ・コヘール・リトモ、セ・ノタバ・マス・コモ・ウン・パルティードー・デ・ベラーノ(どちらかと言うと、リズムを掴むための試合で、夏のプレシーズンマッチみたいな感じだったね)」(クルトワ)というのが災いしましたかね。

遠めからシュートを撃つばかりだったんですが、後半24分には6月で契約の終わるマルセロ、イスコ、移籍濃厚のセバージョスが出場。結局、ベンチにも入らなかったベイルを除いて、ベルナベウのファンとのお別れセレモニーとなってしまったのと並行して、相手のベティスもやはり、勝ち点1で5位確定となれば、どこにムリする必要があるでしょう。こちらも28分には7月に42才となるホアキンがピッチに立ち、両チームのファンが1部リーグ最多出場歴代2位の600試合となる彼を拍手で迎えていましたが、最後までゴールはなく、試合はスコアレスドローで終わってしまいましたっけ。

ちなみにマドリーは週明けの月曜から、CL決勝に向けての練習を再開したんですが、そちらには予定通り、負傷のリハビリの終わったアラバの姿があったのは心強いかと。ええ、アンチェロッティ監督も「4月26日からプレーしてないが、決勝はフィジカルだけが出場の目安ではない。También la habilidad y la experiencia/タンビエン・ラ・アビリダッド・イ・ラ・エクスペリエンシア(能力と経験もある)」と言っていた通り、彼がナチョに代わってスタメンに入るのは確実なようですが、何せ相手のリバプールはマドリーより2日遅い日曜にプレミリーグ最終節をプレーしていますからね。

それだけでなく、せっかく序盤に先行された1点をマネ、サラー、ロバートソンのゴールで3-1と逆転して、ウォルバーハンプトンに勝ちながら、やはりアストン・ビラに2点リードされたマンチェスター・シティも終盤にギュンドガンの2発とロドリのゴールで逆転勝利したため、リーグ優勝には届かず。勝ち点差1で2位に留まった無念さが、2018年にキエフでのCL決勝でマドリーに負けているクロップ監督のリベンジ願望を更にヒートアップさせるかどうかはわかりませんが、その試合ではチアゴ・アルカンタラが筋肉系の負傷をするという逆境も。

そのチアゴが月曜に発表された6月のネーションズリーグ用のスペイン代表招集リストに入っていたのは気になったんですが、CL決勝には間に合わないようですしね。そうそう、バルサを率いてCL優勝経験のあるルイス・エンリケ監督は、「si alguien merece ganar esta Champions es el Real Madrid/シー・アルギエン・メレセ・ガナール・エスタ・チャンピオンス・エス・エル・レアル・マドリー(誰かがこのCLを勝つに値するとしたら、レアル・マドリーだ)」と代表の記者会見で言っていたんですが、きっと今頃はクロップ監督も如何に敵のレモンターダ発動を封じるか、頭を絞っているんじゃないでしょうか。

そして1日空けて日曜、何も懸かってなかったもう1つの弟分、ヘタフェは午後5時30分という早い時間の試合でエルチェに3-1で負けてしまうことに。うーん、やはり彼らもラージョ同様、前節に残留が確定した後は気が緩んだか、せっかく前半33分にはヤンクトのクロスから、エネス・ウナルが自身今季16得点目となるゴールを挙げて先制しながら、3分後にはオラサに同点にされると、後半、キケ・ペレスに2発を浴びてしまったんですが、大丈夫。先に残留を決めていたエルチェだって、その後は負けていましたし、人の心理なんて所詮、そんなもんですって。

これで15位でのシーズン終了が決まったヘタフェでしたが、まさか、その次の時間帯にはボルダラス監督(現バレンシア)の下、一時代を築いたOBのベテランFWたちが吉凶分けることになるとは。ええ、残留を争っていたマジョルカではアンヘルがオサスナ戦で先制点を挙げたかと思えば、キックオフ前は16位にいたグラナダのホルヘ・モリーナがエスパニョール戦でPKを外してしまったから、さあ大変!全ては同時進行の後半での出来事で、そうこうするうち、カディスがロサノのゴールで降格済みのアラベスをリード、マジョルカもグラニエルが追加点を入れて0-2で勝利と、最後は0-0で終わったグラナダが第3の2部行きチームになるとは一体、誰に予想できたでしょう。

といっても私の関心があったのは夜10時から始まったレアル・ソシエダvsアトレティコ戦の方で、もうイマノル監督のチームはベティスを追い越して、5位に上がれる可能性はなかったんですけどね。それでも前半はセルロートのシュートをGKオブラクが弾いた後、ラフィーニャが蹴ったボールがポストに当たって逸れたり、その彼が再び1対1で外したりと、チャンスはソシエダの方があったんですが、どうやらハーフタイムには前日の記者会見で、「el objetivo del club es entrar en Champions, pero el nuestro es salir campeón/エル・オブヘティーボ・デル・クルブ・エス・エントラール・エン・チャンピオンズ、ペロ・エル・ヌエストロ・エス・サリール・カンペオン(クラブの目標はCL出場権獲得だったが、我々の目標は優勝だった)」と言っていたシメオネ監督の方から、今季最後の喝が入ったよう。

同時に「4-4-2と5-3-2を併用してきて、eso también produjo en mí una situación de marearme un poco/エソ・タンビエン・プロドゥーホ・エン・ミ・ウナ・シトゥアシオン・デ・マレアルメ・ウン・ポコ(それもちょっと、自分自身に眩暈を起こさせることになった)」(シメオネ監督)というフォーメーションにも訂正が入ったのが良かったんでしょうか。再開1分にエリア前からのシュートをGKレミロに止められていたデ・パウルが6分には同じような位置から、今度はgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めてしまったから、ビックリしたの何のって。

いやあ、実はこの時、多分、午後10時という遅いキックオフだったせいで、オンダ・マドリッドが実況中継を前半だけで終了。仕方なく、ラジオ・マルカ(スポーツ専門局)を聞いていたんですが、経費削減で近年、アウェイにスタッフを送らず、TV中継を見ながら実況している前者とは違い、後者はアナがスタジアムにいるんですね。よって、バル(スペインの喫茶店兼バー)のTVにゴールシーンが映る前から、「Gol, gol, gol, gol!」の絶叫が始まり、もしや勝ち点差1で3位の座を狙っているセビージャがアスレティック戦で先制したのかと、私も泡を喰らってしまったんですが、TVの映像は20秒程、遅いんですよ。まさか、それがアトレティコのゴールだったとは、ホント、心臓に悪い。

幸い直後にサンチェス・ピスファンで決まったレキクのゴールはオフサイドで認められなかったんですが、いや、だから普段、私はマドリッド勢のナレーションしかしないオンダ・マドリッドのヘビーリスナーなんですけどね。グリーズマンの1対1のシュートがGKを直撃した後の23分、今度はラファ・ミールがゴールを挙げ、本当にセビージャがリードするやいなや、レアル・アレナではカラスコのクロスをエリア内でコケが繋ぎ、コレアがシュート。アトレティコに2点目が入ったとなれば、もう3位の座は安泰と思っていい?

いやまあ、ロスタイムにはフェリペのハンドでエリア前ギリギリのFKを献上。ヤヌザイの蹴ったボールはオブラクが弾いたものの、グリディにヘッドを決められて、1点差に迫られたなんてことはあったんですけどね。何とか1-2で逃げ切ったアトレティコは、1-0で勝利した4位との勝ち点差1をキープ。シメオネ監督就任2年目以来、ずっと3位以上という記録を守ったんですが、どこかファンに物足りなさが残るのはやはり昨季、リーガの頂点を極めてしまったせいだったかと。

ええ、コケなども「Cuando tienes las expectativas tan altas... ha sido un año compicado/クアンドー・ティエネス・ラス・エスペクティーバス・タン・アルタス…ア・シードー・ウン・アーニョ・コンプリカードー(期待値があんなに高いと…難しい年だったよ)」と告白していましたが、全てのチームがお隣りさんのようにはなれませんからね。イマノル監督にしてみれば、6位のソシエダでも「Ha sido un temporadón/ア・シードー・ウン・テンポラドン(今季は凄いシーズンだった)」そうですし、CL準決勝まで進みながら、最終節でバルサに0-2と勝って、ようやく7位でコンフェレンスリーグ(UEFA第3の大会)の出場権を勝ち取ったビジャレアルのエメリ監督も自身が14年連続でヨーロッパの大会に行けることで良しとしているようでしたし…いつかはアトレティコも毎年、タイトルを争えるぐらい強くなってくれたら、嬉しいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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