「鎌田(大地=フランクフルト)と堂安(律=PSV)は所属チームで自分の存在をつねに見せ続け、いいプレーをしていた。タイトルを獲ったという自信は間違いなく彼らの力に上乗せされていく。貪欲に向上心を見せてくれるように期待しています」

6月の日本代表4連戦に向け、5月20日に行われたメンバー発表会見。森保一監督は2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選途中に外した2人を呼び戻すに至った理由を改めてこう語った。

とりわけ、昨年1月〜3月の重要な終盤4試合で選外にした鎌田大地を復帰させたのは、大きな出来事と言っていい。[4-3-3]への布陣変更でトップ下のポジションがなくなったことは彼にとって不運ではあったが、2021年の6試合では本来のよさを出しきれていなかったのも事実。今季からオリヴァー・グラスナー監督体制に移行したフランクフルトで、序盤は鎌田自身、出たり出なかったりの状況が続いたことも、代表での不振につながったのかもしれない。

しかしながら、代表から離れてクラブに集中したことが奏功したのも確かだろう。2022年になってからフランクフルトはドイツ・ブンデスリーガとUEFAヨーロッパリーグ(EL)の重要マッチが続いたが、そこで日本との二往復を強いられていたら、EL制覇という偉業達成の原動力にはなれなかったかもしれない。3月9日のレアル・ベティスとのEL決勝トーナメント2回戦で値千金の決勝弾を叩き出し、4月のバルセロナとの準々決勝2連戦にフル稼働できたのも、心身ともにフランクフルトの方に集中したことが大きい。

過去にも、大迫勇也(ヴィッセル神戸)が2015年6月〜2016年11月まで代表を外れている間に、当時所属のケルンでの戦いにフォーカスし、屈強で大柄なDF陣と渡り合う術を身に着けたことがあった。代表復帰した時の彼は自信満々でプレーし、前線のターゲットマンとして圧倒的存在感を示した。そこから彼が絶対的1トップに君臨し、現在まで至っているのだから、鎌田も同じような足跡を辿らないとも限らない。そんな期待が高まる一方なのだ。

森保監督も鎌田の目覚ましい成長を実感した様子だった。

「もともと持っていた攻撃能力を今はインテンシティの高い中でも発揮できている。上下動しながら技術を出すことをフランクフルトのグラスナー監督も要求していますが、本人はそれに適応し、レベルも格段に上がった。その結果、今季開幕当初よりも出場時間が増えて、絶対に外せないパフォーマンスを見せている。狭い局面だったり、相手とコンタクトした状況でもボールを失わず、彼の持ってる能力をハイレベルの中で出せるというのは大きい。ELのようにプレッシャーのかかる中でのプレーを日本代表でも出してほしいと思っています」

実際に現地視察した後、こう語ったように、指揮官の中での鎌田の位置づけがグーンとアップしたのは間違いない。となれば、どこでどのように起用するかが気になるところ。仮に最終予選からの[4-3-3]を継続するのであれば、インサイドハーフが主戦場となる。そこにはボランチタイプの田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタ・クララ)がいて、強固な関係性の中に割って入るのは容易ではなさそうだ。

「状況や練習を見て最終的には決めたいと思っていますが、彼はインサイドハーフでもプレーできる選手だと思っています」と森保監督は彼の持つ非凡な攻撃センスを中盤に加えたいという意向を持っているようだ。

ただ、「形は1つではなく、チームのコンセプトの中でシステムを変えながらよさを発揮してもらうことにもトライしたい」とも話していたから、[4-2-3-1]に戻したり、フランクフルトのような3バック導入もあるのかもしれない。

[4-2-3-1]ならトップ下での再チャレンジが有力視されるし、3バックならフランクフルトと同じシャドウのポジションで勝負できる。その方が鎌田にとってはやりやすいはず。いずれにしても、EL王者の彼をうまく組み込むことが、代表のパワーアップの重要ポイントになるのは間違いなさそうだ。

半年を切ったカタール本大会の初戦の相手がドイツというのを視野に入れても、フランクフルトで傑出した実績を残した彼を使わない手はない。これまで守備や強度の部分に難があると言われてきた鎌田はその弱点を克服し、世界最高峰プレーヤーの仲間入りを果たした。EL決勝で冷静にPKを決めるほどの度胸も身に着けたのだから、不安なく世界との戦いに送り出せるはず。むしろ、彼がキーマンとなって日本を力強くけん引していってくれる可能性は大いにある。それだけの自覚を持って、鎌田には久しぶりの代表に合流してもらいたい。

W杯で成功を収めようと思うなら、2002年日韓大会の稲本潤一(南葛SC)、2010年南アフリカ大会の本田圭佑のように、ここ一番で大仕事をしてくれるW杯男の出現が必要不可欠だ。鎌田がその系譜を継ぐ存在になるか否か。まずは6月シリーズをしっかりと見てみたい。
【文・元川悦子】


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