「毎日、試合はあるのにね」そんな風に私が溜息をついていたのは土曜日、本来ならW杯直前のテストマッチで盛り上がっているはずの代表戦週間でありながら、今年はカタールの猛暑を避けるため、異例の11月に本大会が開催。その隙を利用して始まったネーションズリーグが、あまりに淡々と進んでいることに気がついた時のことでした。いえ、ランキング順にグループ割りして、実力の拮抗したチーム同士の対戦ばかりの大会ですから、きっといずこも白熱した試合が展開されているんだとは思うんですけどね。

元凶はスペイン代表の試合以外、こちらではTV中継がないせいで、結局、他国のカードは夜のサッカー番組でサマリーを見るしか手立てがなし。よって、気になるマドリッドのクラブの選手たちが出ていても、国際メジャートーナメントに縁のないGKオブラクがゴールを守るスロベニアがスウェーデンに0-2で負けたとか、先週末にはレアル・マドリーがDecimocuarta(デシモクアルタ/CL優勝14回目のこと)を達成した、まさにスタッド・ドフランスでベンゼマが技ありの先制点。なのにグリーズマンがシーズン後半戦のゴール日照りから抜け出せていないせいもあってか、フランスがデンマークに1-2と逆転負けしたとか、モドリッチが後半途中からしか出なかったクロアチアはアラバのいないオーストリアに0-3と完敗なんてことも。

GKクルトワが恥骨炎で参加を見合わせたベルギーに至っては、エデン・アザールがキャプテンとして先発しながら、オランダに1-4で負けるなど、そここで波乱が起きていても、どこか遠い世界の出来事のようにしか感じられないのは仕方なかった?ちなみにこのネーションズリーグ、最強ランクのリーグAのグループ首位チームだけがファイナルフォーに進んで、トロフィーを争うことができるんですけどね。6月に4試合した後、9月に残り2試合開催というのはいいにしても、その肝心の準決勝と決勝は来年の6月。しかも会場すら、決まっていないとなれば、W杯もありますし、冬の間にすっかり忘れられてしまわないかと心配ですが、ま、それはそれ。今はスペインの初戦がどうだったか、お伝えしていくことにすると。

今週月曜からラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設で合宿に入ったルイス・エンリケ監督のチームは水曜にはセビージャ(スペイン南部)に移動。翌木曜のネーションズリーグ初戦でポルトガルとベニト・ビジャマリン(ベティスのホーム)で対決したんですが、最初に戸惑ったのは、うーん、昨年もユーロ2020のグループリーグ3試合が同市内にあるカルトゥーハであったりして、現地のファンも代表慣れしてしまったんでしょうかね。6万人収容のスタジアムに4万人程しか入らず、結構、空席が目立ったことだったんですが、スタメンの方でもポルトガルがクリスチアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)をベンチに置くというサプライズが。

これはフェルナンド・サントス監督によると、「技術的、戦術的なオプション」ということで、ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)なども「Ya estamos acostumbrados a jugar sin Cristiano/ジャー・エスタモス・アコストゥンブラードス・ア・フガール・シン・クリスティアーノ(すでにボクらはクリスチアーノ抜きでプレーするのに慣れている)」と言っていたように、ポルトガルも徐々に世代交代が進んでいるってことなんでしょうけどね。ジョアン・フェリックスもアトレティコのシーズン終盤戦には間に合わずとも、さっさとハムストリングの負傷を治して代表招集されていれば、活躍の機会をもらえていたのにと、ちょっと残念ではあったかと。

穏やかなペースで進んだ前半、先にシュートを撃ったのはポルトガルのレオン(ミラン)だったものの、ゴールを挙げたのはスペインで24分、ガビ(バルサ)が自陣からドリブルで上がると、サラビア(スポルティングCP)にパス。心の広い彼がエリア内でモラタに送り、そのシュートが決まって先制点になります。いやあ、これでモラタは代表通算26得点、歴代7位になったなどと聞くと、2年間のレンタル生活を過ごしたユベントスが移籍金3500万ユーロ(約50億円)の買取オプションを行使せず。プレシーズンにはアトレティコに帰還するため、最初はすぐに次の移籍先を探す予定と言っていたのが、残留を切望されているという話に変わったのもわからなくはない?

ただ、28分に再び、ガビのパスからカルロス・ソレル(バレンシア)が撃ったシュートはGKジオゴ・コスタ(ポルト)に弾かれてしまい、後半もモラタが外してしまったため、スペインには追加点が入らず。その時にはもう、ポルトガルはロナウドとグエデス(バレンシア)がピッチに入り、スペインもソレルとフェラン・トーレス(バルサ)がコケ(アトレティコ)とダニ・オルモ(ライプツィヒ)に代わっていたんですが、モラタも後半25分にはこちらも、アトレティコのCF補強候補として最近挙がってきたRdT(ラウール・デ・トマス/エスパニョール)と交代することに。ちなみに一番、スタンドから喝采を浴びていたのは、8月まで、mayor de edad/マジョール・デ・エダッド(成人)にもならないガビで、ええ、先輩たちがパッとしない中、孤軍奮闘していましたからね。

昨年夏、クーマン前監督に抜擢され、トップチームでプレーするようになってから、10月にはもう、前回のネーションズリーグ・ファイナルフォーのメンバーに招集。先見の明のあることを示したルイス・エンリケ監督も彼のことは、「ガッツがあって、パワーもあるのはすでに見せているが、持っているサッカーの全てを披露した日には…no todos los que le tienen cerca saben lo que tiene/ノー・トードス・ロス・ケ・レ・ティエネン・セルカ・サベン・ロ・ケ・ティエネ(側にいる者全員が、彼が何を秘めているのか知っている訳ではない)」と意味深なことを言っていましたが、まったくそう。

揃ってバルサというのは何ですが、17才のガビと、この日は「思う存分、チームを助けられるだけの必要なリズムがまだない」(ルイス・エンリケ監督)という理由でベンチに留まった19才のアンス・ファティ、そしてシーズン終盤の負傷で今回は招集されていない、同じく19才のペドリが一緒にプレーするようになれば、またスペイン代表に黄金時代が戻って来たりするんじゃないかと、ちょっと私も夢見てしまわないこともなし。ただ、35分、そのガビがマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)に代わったのが影響したんでしょうかね。その1分後にはカンセロ(マンチェスター・シティ)のラストパスをオルタ(スポルティング・ブラガ)が撃ち込んで、同点にされてしまったから、さあ大変!

それでもスペインは勝利を諦めず、自分の担当サイドから、パスを通されてしまった責任を感じたか、41分にはサラビアのchilena(チレナ/オーバーヘッドシュート)をジオゴ・コスタが弾いて上がったボールをジョルディ・アルバ(バルサ)がヘッドで狙っていったんですけどね。ゴールはガラ空きだったにも関わらず、枠の外へ。結局、1-1の同点で終わり、これでポルトガルとは親善試合を含め、3連続ドローとなったんですが、まあ、選手たちもクラブでのシーズンが終わったばかりとあって、疲れていたのかもしれません。

実際、土曜にはイングランドがハンガリーに1-0で負けたり、ドイツがイタリアと1-1と引分けるなど、いわゆる強豪チームが軒並み、ネーションズリーグの初戦で躓いているのを見ると、まだいい方じゃないかと思いますが、スペインがボールを60%とボールを握りながらも、あまり見栄えのしない展開だったせいでしょうか。CL決勝出場のためにムリしたケガが癒えていなかったチアゴ・アルカンタラ(リバプール)がポルトガル戦をスタンド見学した後、代表離脱した翌金曜はベティスの練習場を借りて、チームはリハビリセッション。

土曜には次のチェコ戦が行われるプラハに移動したスペインでしたが、シノボ・スタジアム(スラビア・プラハのホーム)での試合前記者会見に出たコケなど、「試合の数が多すぎると、プレーの質に影響しないか?」なんて訊かれてしまうことに。まあ、彼が「Me gusta jugar al fútbol. Me gusta mi trabajo. No sabría decirte si puede bajar el nivel/メ・グスタ・フガール・アル・フトボル。メ・グスタ・ミ・トラバッホ。ノー・サブリア・デシールテ・シー・プエデ・バハール・エル・ニベル(ボクはサッカーが好きで、自分の仕事も好きだから。レベルが下がるかどうかは言いようがないよ)」と話していたのは今季、アトレティコでほとんど、いいところを見せられなかった当人だけに、あまり参考にならないんですけどね。

何せ、日曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)からの相手、チェコは初戦でスイスに2-1と勝利。ここはスペインも勝ち点3を獲って、ひとまず首位に立っておかないといけませんからね。今回は来週も木曜にジュネーブでのスイス戦、日曜にマラガでのチェコ戦と試合が多いため、ルイス・エンリケ監督もスタメンのローテーションをするようですが、やはりファンが楽しみにしているのは久々に代表に戻ったアンス・ファティやアセンシオ(マドリー)のゴールではないかと。

ええ、今季はベンゼマ、ビニシウスに次ぐチームで3番目に多い12得点を挙げながら、CL決勝では出番がないという、ちょっとイレギュラーなシーズンを送った後者に関しては、ルイス・エンリケ監督も「El chut de Asensio no lo tienen más de seis jugadores en el mundo/エル・チュト・デ・アセンシオ・ノー・ロ・ティエネン・マス・デ・セイス・フガドーレス・エン・エル・ムンド(世界で6人以上、アセンシオのようなシュートができる選手はいない)」と絶賛していましたしね。

9月になれば、常連のオジャルサバル(レアル・ソシエダ)やジェラール・モレノ(ビジャレアル)らもケガを完治させて戻って来るかもしれないため、アセンシオもW杯参加に向けて、ここが最後の頑張りどころかと。CL決勝トーナメント3連続奇跡のremontada(レモンターダ/逆転突破)劇でゴールを挙げて、少々差を付けられた感のあるロドリゴに先んじて、アンチェロッティ監督に使ってもらうためにも、ライバルがブラジル代表でまだ控え待遇であるだけに、スペイン代表で活躍しておくことは決してムダにはなりませんって。

え、それでバケーション中のマドリッドのチームのニュースはまったくないのかって?そうですね、マドリーなどは退団するベイルやイスコから、お別れのメッセージがあった翌日、木曜にはこの夏、最初の補強として、リュディガー(チェルシー)の入団を公式発表。ただ、契約満了で加入するCBについてはもう5月頃から、確定事項になっていたため、驚きはまったくないんですが、当人が今、ドイツ代表でお勤め中とあって、プレゼンは20日にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で実施されることに。

いやあ、それこそエムバペ(PSG)が入団していれば、試合がなくなって、改装工事突貫態勢に入ったサンティアゴ・ベルナベウを無理にでも開けさせたんでしょうけどね。まだコロナ禍の残っていた昨年夏のカマビンガ(レンヌから移籍)、アラバ(同バイエルン)と同じ扱いなのはちょっと、リュディガーが可哀そう?まだPSGの横槍が入ったりして、決まっていませんが、移籍金8000万ユーロ(約120億円)とも言われるチュアメンディ(モナコ)の方は果たしてどこでプレゼンされるのか、これは少し注目ですね。

そしてお隣さんの方はすでに言ったように、ルイス・スアレスの穴を埋めるべく、補強候補の名前は幾つか出ているんですが、そう簡単には決まりそうになし。昨季もクーニャ(フランクフルトから移籍)が来たのは8月になってから、グリーズマン(バルサからレンタル)なんて、それこそ最終日に決まったため、今年も時間はかかるんじゃないかと思いますが、さて。ちなみにまた、移籍が噂されているコレアは水曜にフィナリシマ(ユーロ王者とコパ・アメリカ王者が対決する新しい大会)でイタリアを0-3で破り、優勝したアルゼンチン代表にデ・パウルと共に参加していたんですが、その翌日には離脱。小さな手術をした後、バケーションに入るようですが、彼もいなくなった場合、果たしてアトレティコはゴールを期待できるFWを2人も獲れるんでしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。