昨季王者の浦和レッズがザスパクサツ群馬に苦杯を喫したのを皮切りに、今季上位争いを繰り広げる横浜F・マリノス、川崎フロンターレなどJ1勢が続々と敗れた22日の天皇杯3回戦。そんな中、サンフレッチェ広島は横浜FCに5-0と圧勝。実力差を見せつけた。

「世間的に見たら自分たちは受ける立場。アウェーだし、難しい状況の試合あった。だからこそ、早い時間に先制点を取れば気持ち的に楽になると考えていました」と話す森島司が前半12分に自ら貴重な1点目を叩き出し、終始優位に試合を運ぶことができた。

この先制弾をアシストしたのが、広島ユース育ちで今季からチームに戻ってきた大卒ルーキー・満田誠。外に開いたジュニオール・サントスのタテパスを受け、ペナルティエリアの左隅をえぐって絶妙のマイナスクロスを入れ、森島のゴールを呼び込んだ。

「相手がマンツーマン気味に来ていたので、自分が受けてはたいて外に行けばスペースが空くと思っていた。あのシーンでは抜け出す時に相手が来ていなかったんで、余裕を持ってクロスを入れられた。中に複数入っていたし、マイナスのパスをうまく得点につなげられたと思います」と本人もしてやったりの表情を浮かべた。

彼の活躍はそれだけではない。序盤から持ち前の走力とアグレッシブさで相手守備陣にプレスをかけ、ボールを奪取。素早い守から攻への切り替えで敵陣に迫る形を何度も披露したのだ。彼は他の選手よりもプレスの間合いを詰めていくため、対峙する敵にしてみれば脅威が高まる。その高度な守備意識を、かつてルディー・フェラー監督の下でドイツ代表の指導に当たったミヒャエル・スキッペ監督も高く評価しているに違いない。

1-0で折り返した後半、広島はさらなるゴールラッシュを見せたが、満田は東俊希の2点目をお膳立て。ドウグラス・ヴィエイラの3点目のシーンでも高い位置でボールをカットし、ラストパスを出した東につなげている。

「前線からしっかりプレスをかけて奪い切ることを心がけた」と彼自身も話したが、その仕事を常日頃からサボることなく全うしている。だからこそ、3月から定位置を確保し、主力に上り詰めることができた。

今季プロ入りの流通経済大学同期を見ると、佐々木匠(川崎)と菊地泰智(鳥栖)がコンスタントに試合出場を果たしているが、ここまでJ1・4ゴールという満田のインパクトは頭抜けていると言っていい。

このパフォーマンスなら、7月のEAFF E-1選手権(鹿嶋・豊田)での日本代表入りも十分あり得る。実際、森保一監督も4月の欧州視察後は広島の試合を見に行くことが多い。自身の古巣であり、2022年カタール・ワールドカップ(W杯)最終予選にも参戦している佐々木翔や2019年E-1(釜山)出場の森島らをチェックする目的もあったのだろうが、最近の満田の一挙手一投足には目を奪われているはず。攻守両面で高いパフォーマンスを示せるという点でも「指揮官の好みのアタッカー」なのは間違いなさそうだ。

ただ、森保監督は今月のAFC U-23選手権(ウズベキスタン)に参戦したU-21世代の面々の招集も口にしている。となれば、韓国戦勝利の立役者となった鈴木唯人(清水)や細谷真央(柏)の招集は確実。J1で首位を走る横浜の西村拓真らも有力視されるため、前線の競争は厳しい。

そこで、一歩抜け出そうと思うなら、やはり確実にフィニッシュを決められる選手にならなければいけない。5月の浦和レッズ戦の際には、本人もその課題を口にしていた。

「ただ、今季は周りの選手が沢山サポートしてくれて、自分がプレーしやすいエリアを確保してくれているので、特徴をしっかり出せている。でもゴールに対してのクオリティがまだまだ足りないですし、シュートを打てていてもいいコースに飛んでいないことも多い。そこは改善していきたいですね」

その言葉通り、厳しい局面でも決められるアタッカーに変貌できれば、森保監督にとって頼もしい存在になれるはず。5カ月後のカタールW杯本大会はさすがに厳しいかもしれないが、22歳という年齢を考えれば、2026年の北米三カ国開催のW杯は文句なしに目指せる。本人もそういう野心はあるだろう。

思い返してみれば、今や森保ジャパンのエース級に躍り出た伊東純也(ヘンク)も2018年ロシアW杯半年前の2017年E-1(東京)でデビューし、2019年2月に海外移籍を果たしてブレイクした。A代表デビュー当時の伊東が24歳だったことを考えれば、満田はまだまだ若い。プロ1年目で伸びしろもある。期待は高まる一方なのだ。

同じ大卒アタッカーの系譜を継ぐべく、満田には貪欲に代表入りをつかみにいってほしい。7月のメンバー発表が今から楽しみだ。
【文・元川悦子】