「いきなり中止って」そんな風に私が驚いていたのは土曜日、そろそろチームがマハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場からバラハス空港に向けて出発する写真が見られるかなと、アトレティコのツィッターを開いた時のことでした。いやあ、この夏のプレシーズンマッチの予定を知った時から、ラストゲームがユベントス戦なのはいいとしても、何故に中東まで行ってやるのかと疑問には思ったんですけどね。どうやらこのところ、イスラエルでは戦闘行為が続き、テル・アビブにも爆弾が降ってくる可能性があるとかで、試合前日のお昼、朝練の後に中止決定とはまた急な話じゃないですか。

ちなみにレアル・マドリーのアメリカ西海岸ツアー最後の相手もこのユベントスだったんですが、ロスアンジェルスではベンゼマのPKとアセンシオのゴールで2-0と勝利。アトレティコも7月末にオスロでマンチェスター・ユナイテッドに1-0で勝っていますし、何より私もカランサ杯(カディス主催の夏の親善大会)で気分の上がるgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を見てきたばかりですからね。できれば、お隣さんに負けない攻撃力をヨーロッパの強豪との対戦で披露してもらって、そのまま勢いに乗ってリーガ開幕に持ち込みたかったところ…はい、夕方には急遽、会場をユベントスの練習場に変えて、日曜午後6時(日本時間翌午前2時)からキックオフすることになりましたっけ。

まあ、それはともかく、今年もアトレティコがカランサ杯に参加すると聞いて、海水浴ができるいい機会とばかりに私も水曜からカディス(スペイン南西部のビーチリゾート)に乗り込んだんですが、やっぱり行って大正解。同じ真夏の暑さでもマドリッドの息のつまる気温37℃と比べると、あちらは27℃程度と穏やかですし、周りを海に囲まれた町なので空気もさわやかですしね。アトーチャ駅から電車で5時間とちょっと遠いのが難ですが、お昼過ぎに着いてもお日様が午後9時頃まで照っているため、かなり遅い時間までビーチにいても大丈夫と、いやまあ、おかげでホテルに戻った時にはその日、午後8時に始まったサント・ドミンゴでのアルコルコンvsレガネス戦がハーフタイムまで進んでいたなんてこともあったんですけどね。

開始2分に決まった柴崎岳選手の、このプレシーズン初ゴールや30分のシセの2点目で、すでにその時は0-2でリードしていたレガネスですが、同じマドリッドの弟分仲間のお隣さんとはいえ、相手のスタジアムだったからか、それともアルコルコンが今季はRFEF1部で戦うせいでしょうかね。恒例のYouTubeでの中継もなかったようなので、どちらにしろ、後半22分にはサム・ガランに1点を返されて、最後は1-2で勝利を掴んだレガネスの姿を追えなくても仕方なかったかと。

そして翌木曜、アトレティコが当日移動している最中にはセントロの細い路地を何となく辿っていくと着くLa Caleta(ラ・カレタ)のビーチではなく、ホテルの人が教えてくれたSanta Maria de Mar(サンタ・マリア・デ・マル)に行ってみることに。これが丁度、エスタディオ・ヌエボ・ミランディージャの脇にある超ロングビーチの手前にある浜で、両端が岩で囲まれて湾のようになっているせいか、妙に居心地が良く、砂もずっとサラサラなんですよ。

午後になると岸辺に藻が増えてくるラ・カレタより、水も綺麗だし、波打ち際に砂利もない最高のビーチで、何で今まで知らなかったんだろうと悔しくなった程だったんですが、欠点はパラソルや寝椅子を貸している業者がいないこと。ええ、前者には以前はレストランか何かだった大きな建物があって、土台部分が吹き抜けのため、日影には事欠かないんですが、こちらは自前のパラソルがない場合、ずっと炎天下にいないといけないのはちょっと辛いかも。3時間ぐらいでかなり私も日焼けしてしまったんですが、一旦、ホテルに帰ってシャワーを浴びた後、今度はRENFE(国鉄)の駅近くにあるバス停から1番のバスに乗って、カランサ杯観戦に出発です。

カディスにしてみれば、これが新シーズンのプレゼン試合とあって、キックオフ1時間前ぐらいから、スタジアム周辺はそこここに黄色のユニフォームを着たファンが跋扈していたんですが、やはり昨季は最終戦で1部残留が決まり、今季もリーガ戦で1流チームが見られるせいでしょうかね。客の入りはスタンドの3分の2ぐらいで、以前、彼らが2部や2部Bにいた頃に比べると、場内の熱気もそれ程ではなかったんですが、この日のアトレティコはマンU戦の後半に入った選手中心のスタメンでスタート。

昨年、PK戦で負けたカランサ杯ではユーロ2020やコパ・アメリカのせいでプレシーズン合流が遅かったメンバーが多かったため、かなり重用されたカンテラーノ(アトレティコBの選手)も先週頃から、マヌ・サンチェスがオサスナに3年目のレンタル、昨季は2部のミランデスで一緒に修行していたリケルメとカメージョもそれぞれジローナ、ラージョへとランクアップレンタルが完了。更にカラスコ、クーニャが休養、フェリペもまだケガが治らず帯同していなかったせいか、またしてもビッツェルとヴァスが、足首の負傷から回復したエルモーソとCBトリオを組んでいたんですが、それにも関わらず、先手を取ったのはシメオネ監督のチームでした。

ええ、開始7分に惜しくもグリーズマンのシュートがゴールポストに弾かれた後の13分、今度は彼がモラタにスルーパスを送ったところ、エリア内から先制ゴールを決めてくれたとなれば、ユベントス戦を利用して、相手のフロントと交渉することは何もない?それにはもちろん、ラ・リーガのサラリーキャップがどうたらこうたらと言われていながら、今週中にはしれっとビッツェル(ドルトムントから自由移籍)もナウエル(ウディネーゼから移籍)も選手登録が完了していたせいもありますけどね。モラタを始め、グリーズマン、ジョアン・フェリックス、コレア、クーニャ、どのFWも年間20得点級のゴール力はなくても、1人15本ずつくらい挙げてくれたら、リーガ優勝を争うことはできるかも。

そして42分にはルーカス・ペレスがポスト直撃、続いてロサノがGKオブラクに止められるというダブルチャンスをカディスが逃した後の前半ロスタイム、またしてもグリーズマンがやってくれます。いえ、彼のFKをジョアンがヘッドしたボールはサウールの腕に当たってゴールに入ったのが、電光掲示板に映るTVE(スペイン国営放送)の生中継のリプレーでもはっきりわかったんですけどね。カディスの選手たちもスタンドも猛抗議をしたものの、この試合にはVAR(ビデオ審判)がないことを理由に得点を認められるって、そんなラッキーなこと、あっていい?

後半開始直後もまだ、カディスの選手たちは不運な2失点目に気を取られていたのか、1分もしないうちにヴァスがエリア外からgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)を決めて、3点差にしたアトレティコでしたが、何よりの朗報は6分にやって来ます。ゴール前へのクロスにサウールが届かなかった後、ナウエンの代わりに入っていたカンテラーノのサムエル・ディアスがエリア内右奥から上げたボールをグリーズマンがヘッド。見事にネットに突き刺さり、年明けのコパ・デル・レイ32強対決マハダオンダ戦以来のゴールとなってくれたとなれば、長かったスランプに別れを告げるには最高のタイミングだったかと。

これでもう4点差とあって、15分には恒例の大量交代、7人がチェンジしたシメオネ監督だったんでですが、サビッチ、ヒメネス、レイニウドが入ったおかげで、3試合目にしてようやく、ビッツェルが本職のボランチとしてプレーできることに。まあ、それも15分程で、最後は彼もカンテラーノのカルロス・マルティンに代わり、フル出場したのはグリーズマンだけでしたが、大丈夫。42分にはマビルのラストパスをゴール前からアルバロ・ヒメネスに決められ、カディスに名誉の1点を与えてしまったとはいえ、GKは後半からゲルビッチに。絶対守護神のオブラクはこのプレシーズン3試合、クリーンシートを維持しています(最終結果1-4)。

そして試合が終わるやいなや、68回目となるカランサ杯で史上最多のUndecimo/ウンデシモ(11回目の優勝のこと)を達成。巨大なトロフィーと共に帰京したアトレティコを尻目に、まだ私がカディスをウロウロしていた金曜の午前中には、ラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設でラージョと、1部に戻って来たバジャドリーの練習試合があったんですが、こちらはカメージョがデビューしたものの、肝心のファルカオが筋肉痛で出られず、スコアレスドローで終わることに。うーん、昨年夏に入団した時にはすでに背番号9が使用されていたため、3番でプレーした彼でしたが、今季はエヌテカが11番に変更することを快諾。晴れて、エースナンバーを着けられるようになったそうですしね。

どこぞのクラブなど、金曜に5万人をカンプ・ノウに集めたメガプレゼンでレバンドフスキに9番のユニを掲げさせるため、まだ退団するかどうかもわからないデパイから取り上げたなんて話も伝わってきましたが、ラージョはまだ補強も道半ば。ちょっと前から噂の出ていたジエゴ・コスタ(昨年までアトレティコ・ミネイロ)の入団も近々発表されて、13日(土)の開幕バルサ戦では、2013年にアトレティコのコパ・デル・レイ優勝の原動力となったファルカオとのゴールデンコンビ再結成が見られるかもしれないのにはきっと、胸を躍らせているファンも少なくないに違いありません。

そしてマドリッドに戻った金曜には夜になっても一向に暑さの引かないブタルケで新シーズンプレゼン試合、ビジャ・デ・レガネス杯を観戦した私だったんですが、うーん、相手のビジャレアルBは今季初めて2部に上がったカンテラだったんですけどね。前半には柴崎選手のシュートがゴールバーに当たったり、フアンン・ムニョスの一撃がポストを直撃したりしたんですが、若いチームを前にもしや油断した?43分にエリア内シュートで先制されると、ロスタイムにも追加点を奪われ、後半にカスミのゴールで1点を返すことができただけだったんですよ。


結局、1-2で負けて、Pepino de Oro/ペピーノ・デ・オロ(金のキュウリ)はビジャレアルBの手に渡り、レガネスはPepino de Plata/ペピーノ・デ・プラタ(銀のキュウリ)をゲットして終わったんですが、まあ大事なのは来週土曜の開幕アラベス戦ですからね。8月中ということで、バケーションに出ているファンも多く、とても満員御礼は期待できそうもありませんが、ビジャレアルB戦ではフル出場。最後まで全力で走っていた柴崎選手はもう相当、体が仕上がっているようなのは頼もしいですよね。

え、それで日曜に帰国、水曜からまたバルデベバス(バラハス空港の近く)で練習を始めたマドリーはどうしているんだって?いやあ、彼らの場合はもう水曜のUEFAスーパーカップまで、毎日、セッションが続くだけですからね。幸いながら、アメリカでの3試合でケガ人が出ることもなく、ほぼスタメンも決まっているため、大したことは伝わってこないんですが、相手のフランフルトはもう今週月曜にドイツカップ初戦をプレーして、2部のマグデブルクに鎌田大地選手の2発を含めて、0-4と大勝。

ただ、金曜のブンデスリーグ開幕戦ではバイエルンに1-6とボコボコにやられていたため、アンチェロッティ監督は「向こうは先にシーズンを始めているから、tenemos algunas desventajas/テネモス・アルグナス・デスベンタハス(ウチにはディスアドバンテージがある)」と言っていたものの、その辺はあまり心配しなくていい?あと気になるのは昨季のELでもカンプ・ノウでのバルサ戦やサンチェス・ピスファン(セビージャのホーム)での決勝レンジャース戦に大挙して押し寄せたフランクフルトファンがこのスーパーカップにも応援に行く気満々のようで、UEFAから各クラブへ割り当てられたチケット8000枚はすでに完売。

一般販売分の1万7000枚も買い占めそうな勢いなんですが、対してマドリーファンはクラブ割り当て分が1800枚しか売れていないこと。まあ、こればっかりは2014年から、昨季を含めてCLに5回も優勝し、そのたびにUEFAスーパーカップに出ているとあって、なかなかファンも散財ばかりしていられないということでしょうが、偶然にもフランクフルトのチームカラーも白ですからね。となれば、スタンドの大部分が敵のサポーターでも選手たちにはそんなに違和感はないかもしれない?

そうそう、マドリーにはロサンジェルスから戻るやいなや、弟分のヘタフェに河岸を変えた選手もいて、それは5年契約で完全移籍したボルハ・マジョラル。木曜には入団プレゼンも無事済んで、最後のプレシーズンマッチ、日曜のアルバセテ(2部)戦でデビューもできるよう。昨季後半もローマからの又貸しで1部残留を果たす手助けをしているだけに、すぐチームに馴染んでくれるのは間違いないかと。初めてのお子さんが生まれるという当人も、「Siempre he estado cedido y esta estabilidad me va a ayudar mucho/シエンプレ・エ・エスタードー・セディードー・イ・エスタ・エスタビリダッド・メ・バ・ア・アジュダル・ムーチョ(いつもレンタル生活だったから、この安定感はボクの大きな助けになるだろう)」とヘタフェへの帰還を喜んでいましたが、まだまだアンヘル・トーレス会長は暗躍中。この先、ラタサやブランコといったマドリーのカンテラーノ(RMカスティージャの選手)後輩がレンタルで加わる可能性もあるようです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。