ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の森下源基元社長(82歳)が4月30日に肺炎のため死去したことが昨日報じられた。読売クラブ時代に副社長を、1994年から98年まではヴェルディ川崎の社長を務め、Jリーグ誕生前にはブラジルのサントスから三浦知良と三浦泰年の兄弟を獲得し、クラブの黄金時代を築いた。

Jリーグの川淵三郎相談役も「プロ化が決まると、三浦知良選手らスター選手を獲得するなど尽力された。国立競技場での開幕戦についても様々な難題があったが、いつも真摯に対応していただいた。華やかなヴェルディの存在がJリーグの注目度を上げ、サッカー人気に火をつけたと言っていい。強くて魅力あるクラブを育てていただいたことに改めて感謝申し上げたい。謹んで哀悼の意を表します」と故人を偲んだ。

森下さんとは、まだカズがブラジルでプレーしている頃、お父さんの納屋さんがブラジルから帰国した際に、ダイジェストの社長と4人でお茶や食事を何回か共にした。納屋さんが帰国するときはいつもお土産を持参したためで、大手町のホテルで会うことが多かった。大新聞社の出身ながら、腰が低く、「物静かな紳士」という印象が強かった。Jリーグは今年で30周年を迎えるため、開幕当時の森下さんは52歳という現役バリバリだったわけだ。そんな森下さんにとって、東京VがJ1リーグに復帰することが一番の手向けになるのではないだろうか。謹んでご冥福をお祈りいたします。

さて、3日のJリーグは久しぶりに判定が話題にのぼることはなかった。J1では横浜FCが初勝利を、柏が2勝目をあげ、残留争いも混沌としてきたようだ。J2も最下位の徳島から16位の千葉までは4勝点差に縮まった。J3もYSCC横浜が2連勝で最下位を脱出するなど、試合結果を予想するのはかなり困難な状況になっている。

そして4月末には今年2回目となるレフェリーブリーフィングがオンラインで開催された。話題になったのは町田対秋田戦のロングシュートである。実際にはゴール内に落下したものの、主審も副審もゴールとは認めなかった。このシーンについて東城穣デベロプメントマネジャーは「副審はゴールライン上で見たいが、(シュートを追って)スプリントすると動体視力が衰える」と説明。その上で「間に合わない時はGKやDFがどれだけゴール内に入っているか。ボールがワンバウンドした位置」などから判断すべきだったとし、「誤審」という表現は避けた。

J2のためVARはないが、この試合を記者席で取材していたフリーランスの後藤健生さんと森雅史さんは、一目でゴールだと確信したという。意表を突いたロングシュートだったため、主審も副審も、第4の審判員からも町田ゴールは遠く、さらに2次元(平面)での視野のためゴールと判定できなかったのだろう。それならいっそ、第5の審判員(もしくはマッチコミッショナーでもいい)が、スタンドから両チームのゴール前でのプレーと、手元にパソコンを置いてDAZNのリプレーを確認しながら協力してジャッジしてはいかがだろうか。そうすれば、少なくともゴールに関する「誤審」は減るような気がする。

さらに、このシーンで町田GKポープ・ウィリアムがゴールだと主審に進言したらどうなるかという質問に対し「選手が自己申告しても、レフェリー4人が確認できなければ(ゴールとは)認められない」というのがJFAの見解だそうだ。ドイツやイタリアなど海外では、過去に選手の申告で判定が覆った例がある。しかし日本では、一度、主審が下した判定を覆すことはないというのが大原則となっている。

とはいえ、第9節の川崎F対浦和戦では、後半25分にFW興梠慎三がペナルティーエリア内で後ろから足を蹴られて転倒したものの、VARで確認した結果、ノーファウルという判定になった。第10節のFC東京対新潟戦では、後半アディショナルタイムに入ったところで右SB中村帆高がボールをトラップした瞬間に自らうずくまった。そこでボールを奪った小見洋太がショートカウンターを仕掛けようとしたところ、主審は小見の反則として笛を吹いた。中村は右アキレス腱を断裂したが、いわゆる“自爆"であり(アキレス腱の断裂にはよくある)、中村の負傷に小見は関与していない。この2つのプレーについては、次回のレフェリーブリーフィングで報告があればお届けしよう。


【文・六川亨】