「こうなるとあと4試合もプレーしないといけないのは辛いわよね」そんな風に私が同情していたのは金曜日、レアル・マドリーのCL準決勝敗退のショックが癒えないというのにもう、週末のリーガ戦が迫っているのに気がついた時のことでした。いやあ、前節ではとうとうバルサの優勝が確定し、それでもマドリーファンが落ち着いていられたのは6月10日、イスタンブールでの決勝でDecimoquinta(デシモキンタ/15回目のCL優勝のこと)を達成して、宿命のライバルの鼻を明かしてやれる可能性が残っていたせいもあったんですけどね。

それがマンチェスター・シティに昨季のリベンジを喰らい、水の泡になったとなれば、まだ5月半ばだというのにスポーツ紙のマドリーページがこの夏の補強計画で埋まってしまうのも仕方ありませんが、そのせいでしょうか。木曜には何と、天下のユベントスを延長戦で2-1と破り、総合スコア3-2で勝ち抜け。5月31日、ブダペストでのEL決勝でローマを破れば、十八番の大会で自身の持つ最多記録を更新、Septima(セプティマ/7回目のEL優勝のこと)ゲットも夢でなくなったセビージャをやたら、羨ましく思ってしまったのは。

まあ、それには昨年中、CLグループリーグで最下位敗退のアトレティコに先んじて、3位でELに回ったチーム、シャビ・アロンソ監督率いるレバークーゼンが準決勝まで進み、モウリーニョ監督率いるローマに1stレグに取られた1点を2ndレグでも返せず。総合スコア1-0で涙を呑んでいたため、もしシメオネ監督のチームがELに行っていれば、こちらも3度優勝している得意の大会ですから、スペイン勢決勝という嬉しい出来事になっていたかもしれないせいもあったりするんですけどね。たらればを話していても仕方ないので、2月にはとうに今季が終わっていたアトレティコはほっといて、まずは水曜のシティ戦2ndレグを振り返っていくことにすると。

先週、サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグを1-1で引き分けた後、エティハド・スタジアムに乗り込んだマドリーだったんですが、さすが準決勝ともなると、行きつけの近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)もキックオフ1時間前にお店に入って、ようやく席を確保できるという賑わいよう。お客さんの半分ぐらいがマドリーのユニを着ていたのにも驚かされたんですが、その頃にはいつも試合2時間前にツィッターなどに上がるマドリーのスタメンはもちろん、シティの方も明らかに。そう、後者が1週間前とまったく同じメンバーだったのに対して、前日記者会見でアンチェロッティ監督がリュディガー先発予告を誤解と訂正していた通り、1stレグでハーランドを完全に封じたCBに代えて、ミリトンが入っていたんですが、問題はそこじゃなかったんですよ。

というのも前半、早い時間にハーランドの撃った強烈ヘッドはどちらもGKクルトワがparadon(パラドン/スーパーセーブ)で防いでくれたからですが、ベルナベウでと同様、相手にずっとボールを持たれていたマドリーは23分、デ・ブライネのスルーパスをベルナルド・シウバに決められて先制されてしまったから、さあ大変!34分には珍しく敵陣に近づいて、クロースのシュートがゴール枠を直撃したなんてこともあったんですが、その3分後、ギュンドガンのシュートはクルトワが弾いたものの、浮いたボールが再び、ベルナルド・シウバに渡り、今度はヘッドで2点目を取られてしまうとは、え?このマドリー、ちょっとヤバくない?

といっても昨季の準決勝1stレグでも立ち上がり、前半11分までに2点を奪われながら、その後、ベンゼマの2本とビニシウスのゴールで3点を取って、最後は4-3の負けで終わった彼らでしたからね。おまけにベルナベウでの2ndレグでは後半45分から、奇跡のremontada(レモンターダ/逆転劇)が始まったとあって、2-0でハーフタイムに入った時はまだ、バルのファンたちもこれならremontable(レモンタブレ/逆転可能)という希望を捨てていなかったんですが、後半序盤はボールを取り戻して、攻めていたマドリーながら、一向にゴールが入る気配はなし。

15分からはモドリッチをリュディガーに、クロースをアセンシオにと選手を代え、チームのリフレッシュを図っても効果が見られないまま、とうとう30分、デ・ブライネの蹴ったFKをミリトンがクリアしようとしてオウンゴールにしてしまうという悲劇まで起きてしまうようではねえ。これでは最後までハーランドにゴールを許さなかったクルトワが、「Este año no nos cae a nuestro lado como sí el año pasado/エステ・アーニョ・ノー・ノス・カエ・ア・ヌエストロ・ラドー・コモ・シ・エル・アーニョ・パサードー(今年は去年のようにウチにいい目が出ない)」と嘆いていたのも仕方なかった?

まあ、それを言っちゃえば、CL準々決勝の抽選で、決勝までの2ラウンドの2ndレグをベルナベウで戦えない組み合わせになってしまった辺りから、始まっていた不運の連鎖ですけどね。さすがに3点目を奪われ、その直後のベンチの動きがロドリゴ、カマビンガ、カルバハルから、セバージョス、チュアメニ、ルーカス・バスケスへの3人一斉交代だったことも合わせて、ええ、昨季はこの逆で、後から入ったロドリゴがゴールを決めてくれたんですよ。すると鬼っ子がいなくなって、ようやくグアルディオラ監督もトラウマから解放されたか、この2試合通じて初めての交代を実施。

ギュンドガンをマフレスに、デ・ブライネ、ハーランドをフォーデン、フリアン・アルバレスに代えたところ、ロスタイムにはフォーデンのスルーパスから、フリアン・アルバレスに4点目を決められているんですから、もう目も当てられないとはまさにこのこと?うーん、昨季はエティハドで4-3だったのが、今季は4-0の大敗ですからね。アンチェロッティ監督は「Esta plantilla ha ganado al City en una semifinal el año pasado/エスタ・プランティージャ・ア・ガナードー・アル・シティ・エン・ウナ・セミフィナル・エル・アーニョ・パサードー(このチームは昨年、シティに準決勝で勝った)。今年は彼らの方が良かっただけだ」と言っていたものの、やっぱりベンゼマ、モドリッチ、クロースら、30代の選手たちが年々、劣化していくのに目を背けてはいけないかと。

加えて、シティのウォーカーなども「凄い選手が沢山いるマドリーだが、一番いいのはビニシウス。でも彼が無効化された時、Bプランはあるのかい?」と揶揄していたように、この試合ではグアルディオラ監督が練りに練ったマドリー攻略法への対抗策がまったく見られなかったのも気になるところではありますけどね。前節のエルチェ戦では早くもバケーション気分でプレーして、降格済みチームに負けたお隣さんじゃあるまいし、そのせいで、「Tardamos mucho en hacer faltas, el segundo balón era de ellos, hemos fallado balones fáciles/タルダモス・ムーチョ・エン・アセール・ファルタス、エル・セグンド・バロン・エラ・デ・エジョス、エモス・ファジャードー・バロネス・ファシレス(ウチはファールするのに時間がかかって、ボール争いにも相手が勝ってたし、簡単なパスでもミスしていた)」(クルトワ)となったとは思えませんが、いやあ。

結局は「Hemos jugado con el dolor de un año que hemos tenido en la barriga/エモス・フガードー・コン・エル・ドロール・デ・ウン・アーニョ・ケ・エモス・テニードー・エン・ラ・バリガ(お腹にあった去年の痛みを抱えてプレーした)」(グアルディオラ監督)シティの執念が勝ったということなんでしょうが、彼らの決勝の相手は前日、サン・シーロでの2連戦でミランを総合スコア3-0で破ったインテル。ここは素直にCL初制覇に向けてシティの健闘を祈るばかりですが、そうそう、金曜からバルデベナス(バラハス空港の近く)での練習に戻ったマドリーには、実はクルトワがヘタフェ戦で上腕三頭筋を痛めながら、エティハドでプレーしていたというビックリなニュースも。

いえ、もうリーガは優勝が決まっていますし、マドリーに日曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)からのバレンシア戦に必勝で挑む義務はないため、別にGKがルニンになっても構わないでしょうけどね。ただ、微妙なのはその相手が未だに残留確定しておらず、降格圏脱出を目指す弟分ヘタフェのライバルの1つであることですが、まずは何を置いてもボルダラス監督のチーム自体が土曜のエルチェ戦で勝たないことには始まらず。ちなみにヘタフェは先週のベルナベウでの兄弟分ダービーで1-0と負けた後、その試合でカマビンガの負傷で、急遽、ピッチを出る選手をアセンシオから変更した件について、alineracion indebida(アリネラシオン・インデビダ/選手出場規則違反)として、競技委員会に提訴。

この訴えが認められれば、ヘタフェの0-3勝ちとなって、14位のバレンシアと並ぶところまで勝ち点も増えるんですが、こういう審理は結論がいつ出るのか、わかりませんからね。とにかく今は、ボルダラス監督も「勝つこと以外、考えていない」と言っていた、マタは累積警告で出られないものの、エースのエネス・ウナルが満員のコリセウム・アルフォンソ・ペレスに戻ってくるエルチェ戦で白星をゲットすることに集中して、早いところ、ファンを安心させてあげられるといいのですが。

そしてもう1つの弟分、ラージョも日曜にこちらはヘタフェより更に下の19位。前節はホームのRCDEスタジアムでのカタルーニャダービーで宿敵に優勝を決められた上、実は試合後、ピッチに乱入して、バルサのお祝いを中断させたウルトラ(過激なファン)たちの目的は応援するチームの不甲斐ない選手たちに抗議することだったという、身も蓋もないオチになっていたエスパニョールをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。先週は苦手なアウェイでベティスに負けてしまったイラオラ監督のチームではありますが、セビージャやオサスナの躍進で11位になってしまったとはいえ、7位のジローナとは勝ち点差2とまだまだ、来季のコンフェレンスリーグ出場権を勝ち取れる可能性は残っていますからね。

4試合連続でファンと「Vida de pirate/ビダ・デ・ピラータ(海賊人生)」を歌って終われるといいんですが、日曜はそのすぐ後、午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、兄貴分のアトレティコもシビタス・メトロポリターノでオサスナ戦をプレーすることに。いやあ、この1週間で彼らもバケーション気分が抜けてくれていたらいいんですが、何せこの試合を毎年恒例のel Dia del Nino(エル・ディア・デル・ニーニョ/子供の日)に設定。前日土曜の練習もスタジアムでファンに公開して行い、すでにアボナードー(年間指定席保持者)は無料、それ以外には10ユーロ(約1500円)で売り出した見学チケットもすでに1万枚、捌けているのだとか。

もちろん土日を通してメトロポリターノ周辺ではキッズ向けのアクティビティも用意されているんですが、今度はお祭り気分に浸りかねない選手たちとは別にして、懸念の種となっているのはやはり負傷者の増加でしょうか。そう、すでにレイニウド(ヒザの靭帯断裂)、オブラク(頸椎間板ヘルニア)、サビッチ(足指骨折)らが今季絶望となっているのに加えて、メンフィス・デパイ、マルコス・ジョレンテもまだリハビリ途中、更にエルチェ戦ではレマルも筋肉系のケガをして今回、出られませんからね。とりあえず、前線はモラタとグリーズマンでいいとしても、コケ、デ・パウルとご一緒する中盤の選手がとうとう、バリオスかサウールしかいなくなってしまったというのは淋しいかと。

せっかく一時はお隣さんを追い越しながら、前節の敗戦で、また勝ち点差2つけられて、3位に戻ってしまったこともありますしね。いいプレーをして、ゴールをガンガン決めるアトレティコの姿が今季再び、見られるのかどうか、私もあまり確信はないんですが、リーガも残り4試合ぽっきり。せめてあと勝ち点1となったCL出場権確定をファンの前で達成すると同時にラージョの援護射撃をして、マドリッドのサッカーファンの楽しみを増やしてあげられるといいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。