「春の中距離王決定戦」大阪杯。中距離のチャンピオンだったイクイノックスが引退し、ジャパンCや有馬記念で好走した馬たちも、前日のドバイターフとドバイシーマクラシックにこぞって参戦。これら2レースに比べると、少し手薄なメンバー構成となった感は否めない。

それでも5頭のGⅠウイナーが顔を揃え、出走16頭中、半数の8頭がGⅠで連対実績のある馬。確固たる軸馬が不在の大混戦とはいえ、言い換えれば、馬券検討のし甲斐があるレースで、とりわけ穴党にとっては心躍るレースとなった。

その中で、単勝10倍を切ったのは5頭。1番人気でも単勝オッズは4.4倍と高く、その1番人気に推されたのはタスティエーラだった。

1年前の弥生賞ディープインパクト記念で重賞初制覇を成し遂げたタスティエーラは、皐月賞でも2着に好走。さらに、続くダービーを制して世代の頂点に立った。

その後、休み明けの菊花賞でも2着と好走し、三冠レースはすべて連対。6着に敗れた有馬記念は直線で両側から挟まれる不利があり、敗因は明確。実績最上位の1頭で、2つ目のビッグタイトル獲得が期待されていた。

これに続いたのがベラジオオペラ。タスティエーラと同じく1年前の皐月賞トライアル、スプリングSで重賞初制覇を成し遂げたベラジオオペラは、ハイペースを先行した皐月賞で10着と大敗。それでもダービーではきっちりと巻き返し、タスティエーラとタイム差なしの4着に好走した。

その後、今回と同じ舞台でおこなわれたチャレンジCを勝利し、前走の京都記念も2着。キャリア7戦とはいえ、展開不向きの皐月賞以外はすべて好走しており、初のビッグタイトルなるか注目を集めていた。

わずかの差で3番人気となったのがローシャムパーク。3代母にエアグルーヴがいる良血のローシャムパークは、重賞初挑戦となったデビュー5戦目のセントライト記念で3着。菊花賞の優先出走権を得るも出走せず、その後、条件戦を3戦で通過しオープンに昇級した。

さらに、その余勢を駆って出走した函館記念で重賞初制覇を成し遂げると、続くオールカマーも連勝。満を持してのGⅠ初挑戦となった香港Cは8着に敗れたものの、現地に入厩してからカイバを10日間食べなかったなど、メンタルに影響があった模様。帰国初戦、かつ今季初戦となる今回、GⅠ初制覇が懸かっていた。

以下、京都記念でベラジオオペラに競り勝ったプラダリア。2023年の皐月賞馬ソールオリエンスの順で人気は続いた。

レース概況

ゲートが開くと、エピファニーが両脇から挟まれる格好となり後方からの競馬。ただ、それ以外の15頭はスタートを決めた。

先行争いを演じたのは、スタニングローズとベラジオオペラの2頭。これにリカンカブールが加わるも、枠の差でスタニングローズが単独先頭に立った。

その後ろは、ベラジオオペラを挟んで、3番手にタスティエーラとリカンカブールが位置。ジオグリフが5番手に続いて、ハーパーとプラダリアの4枠2頭が併走していた。

さらに、1コーナーを13番手で回ったローシャムパークが、向正面に入ったところで早くもスパートを開始。ベラジオオペラの外につけると、これを見たソールオリエンスも11番手から4番手にポジションを上げた。

800m通過は48秒4、1000m通過も1分0秒2と遅く、前から最後方のハヤヤッコまでは12、3馬身ほどの差。16頭立てでも、そこまで縦長の隊列にはならなかった。

その後、3、4コーナーの勝負所に差し掛かるも、序盤に動きがあったせいか、ハヤヤッコが2頭を交わした以外は隊列に大きな変化はなく、ベラジオオペラとローシャムパークがスタニングローズに並びかける中、レースは直線勝負を迎えた。

直線に入ると、すぐにベラジオオペラとローシャムパークが抜け出し、後続との差は1馬身。逃げたスタニングローズと、絶好位につけていたはずのタスティエーラは失速し、替わってルージュエヴァイユが内から差を詰めて前2頭に接近。4番手からジオグリフとステラヴェローチェが末脚を伸ばすも、残り100m地点で上位は3頭の争いとなった。

その中からわずかに抜け出したのはベラジオオペラ。ローシャムパークに対して、終始、体半分リードを取ると、最後はクビ差まで迫られるも前に出ることを決して許さず1着でゴールイン。わずかに届かなかったローシャムパークが2着となり、ハナ差3着にルージュエヴァイユが続いた。

良馬場の勝ちタイムは1分58秒2。早目先頭から押し切ったベラジオオペラが、開業6年目の上村洋行調教師とともにGⅠ初制覇。また、騎乗した横山和生騎手はGⅠ3勝目で、いずれも阪神競馬場での勝利となった。

各馬短評

1着 ベラジオオペラ

スタート後すぐに押して先行し、楽々と番手を確保。直線も早目に抜け出し、ローシャムパーク、ルージュエヴァイユとの競り合いを制した。

ポイントとなったのは中間点付近の攻防。一気にポジションを上げて自身の前に出ようとしたローシャムパークに対して引かず、単独2番手に上がることを許さなかった横山和生騎手のファインプレーは見逃せない。

逆に、ローシャムパークは終始外を回ることになり、最終的にはその差が影響したのではないだろうか。

スワーヴリチャードやジャックドールなど、大阪杯1着馬が安田記念に向かうと、これまであまり良い結果になっておらず、かといって、宝塚記念は微妙に距離が長いかもしれない。ただ、鞍上の横山和生騎手がこの馬の持ち味をしっかりと把握しており、その分をカバーしてくれるだろう。

2着 ローシャムパーク

スタート後スピードに乗れず、1コーナーを13番手で通過。ペースが落ちた3ハロン目から早々にスパートし、3番手まで押し上げることに成功したが、ゴール前では勝ち馬とほぼ同じ脚色になってしまった。

ただ、今回はおそらくこれが精一杯の競馬で、間違いなく強い競馬はしている。オールカマー勝ちの実績からも、こちらは宝塚記念に出走しても距離は問題なくこなしそう。エアグルーヴ(ダイナカール)一族からまたもGⅠウイナーが誕生するのか、期待が高まる。

3着 ルージュエヴァイユ

中団やや後ろに位置するも、終始ラチ沿いを追走。勝負所でも距離ロスを最小限に抑えて一気にポジションを上げると、直線でも末脚を伸ばし、あわやの場面を演出した。

2023年のダノンザキッドと同じく、7枠に入った人気薄のジャスタウェイ産駒が3着に激走。勝ち味に遅い面があるとはいえ重賞未勝利なのが不思議なほどで、母が世界的良血馬であることも踏まえ、なんとか1つでもタイトルを獲得して欲しい。

レース総評

前半1000m通過は1分0秒2で、同後半は58秒0=1分58秒2。最後は12秒2とかかったものの、同じ2000mのGⅠ天皇賞(秋)のように、後半1000mの勝負となった。

ただ、大阪杯は阪神の内回りコースを使用するため、4コーナーである程度の位置にいる必要がある。ルージュエヴァイユのように、よほどインぴったりを回らない限り、後方待機組にとっては厳しいレースとなった。

勝ったベラジオオペラはロードカナロア産駒で、その父がキングカメハメハ。母の父はハービンジャー。

一方、2着ローシャムパークは父がハービンジャーで、母の父はキングカメハメハと少し似ている。

さらには、母母父がサンデーサイレンスである点や、母系にノーザンテーストを持つ点。ノーザンダンサー5×5のクロスを保持している点など、両馬の血統には共通点が複数存在している。

また、ベラジオオペラの4代母は名牝アイドリームドアドリームで、この一族からは二冠馬エアシャカールや、秋華賞馬エアメサイアが誕生。さらに、エアデジャヴー、エアシェイディ、エアアンセムなど、重賞勝ち馬を多数輩出しており、この一族出身としては久々のGⅠウイナー誕生となった。

そのベラジオオペラ。2021年のセレクトセール1歳市場に上場されるも、意外にも主取りに。その後、千葉サラブレッドセールで林田祥来オーナーが税込4,851万円で落札した(落札時の名義は(株)ビープロジェクト)経緯がある。

ちなみに林田オーナーは、2023年の千葉サラブレッドセールでも、ロードカナロア産駒をこの年の最高価格である税込1億1,000万円で落札。同じく上村厩舎に入厩しており、それが先日の毎日杯で3着に好走したベラジオボンドである。

そして、開業6年目の上村調教師にとっては、これが嬉しいGⅠ初制覇となった。上村師の重賞初制覇はベラジオオペラで制した2023年のスプリングSで、初タイトル獲得まではやや時間を要したものの、そこから1年で重賞を5勝。開業以来、右肩上がりで勝ち星を伸ばしており、大阪杯の勝利で調教師ランキングの首位に浮上した。

とりわけ、2024年の3着内率は、3月31日時点で驚異の53%。50%台をキープしているのは、今のところ上村調教師だけである。

また、横山和生騎手によると、ベラジオオペラの長所は操縦性が高く、素直なところだそう。これも厩舎力の高さを証明する部分といえるが、同騎手にとって、初めてコンビを組んだダービーの4着が、非常に悔しい敗戦だったとのこと。今回は、ダービーの1、2着馬とそれ以来久々の対戦となったが、成長力をみせつけ見事に雪辱してみせた。

対して、今回1番人気に推されたダービー馬タスティエーラは、まさかの11着。デビュー以来、初の2桁着順、大敗を喫してしまった。

こちらも終始4番手の絶好位を確保し、流れもスロー。これ以上は望めないほどの展開となったが、坂下でまさかの失速。レース後の松山弘平騎手のコメントどおり、なにも無いことを祈りたい。

そして、ダービー2着の皐月賞馬ソールオリエンスは7着。この馬の弱みは器用さがない点で、追込み一手となっていた近走から戦法を変え、なおかつ今回はブリンカーを初めて装着。ローシャムパークと同じくレース途中からスパートし4番手につけたまでは良かったが、直線では伸びきれず、最後はなだれ込むようなゴールとなった。

ただ、レースに臨む上で、ブリンカーは良い影響をもたらしていたそう。皐月賞の勝ち方があまりにも鮮やかで、当時のイメージがなかなか頭から離れないが、父キタサンブラックは菊花賞でGⅠ初制覇を成し遂げ、5歳時にGⅠを4勝した晩成型。まだ本格化は先の可能性もあり、大箱の東京競馬場、具体的には天皇賞(秋)やジャパンCこそが、この馬の真価を発揮できる舞台なのかもしれない。

写真:KEI

著者:齋藤 翔人