2022年上半期の輸入車新規登録台数(JAIA調べ)を見てみると、乗用車で前年比85.2%の11万5753台と、苦境が続いています。円安による価格改定だけでなく、半導体不足により新車そのものもなかなか手に入らない輸入車ですが、それでも輸入車を選ぶ理由はどこにあるのでしょうか。

円安、コロナ禍、半導体不足…何重苦にもなっている輸入車の現状

 今、輸入車は“受難の時代”を迎えているといえるでしょう。

 2020年初旬から世界中を混乱に陥れた“コロナ禍”。この厄災は経済活動を抑制しただけでなく、自動車を生産するためのサプライチェーンにも深刻な影響を及ぼしました。

 さらに、その後は“半導体不足”という、やっかいな厄災も重なります。このふたつの厄災により、世界のあちらこちらでクルマの生産が滞りました。また、コロナ禍の混乱により、世界各地でインフレが進行。原材料費、エネルギー費も軒並みアップしています。

 加えて、2022年2月にはロシアによるウクライナ侵攻。これにより世界的な原油価格の高騰、それにともなう電力価格などエネルギー高騰、そして自動車の生産には必要不可欠なワイヤーハーネス供給不足による生産台数の減少と、いま、大きな危機に直面しています。

 そして円安。2021年1月1日には1ドル103.2円だったのに対し、2022年1月7日には115.1円、さらに同年7月6日には135.2円となっています。

 こうした逆風をあからさまに受けたのが、日本における輸入車の販売です。生産が滞っているから、なかなかクルマが輸入されない。また、原材料費やエネルギーの高騰による価格改定も続発しました。

 その結果、どのようになったのでしょうか。

 コロナ禍が日本で問題となったのは2020年初頭から。つまり、年度の最後の数か月に影響を受けた2019年度の輸入車の販売は、前年比94.9%(日本自動車輸入組合発表「2019年度輸入車新車登録台数(速報)」より)と微減で済みました。

 しかし、コロナ禍が直撃する2020年度は、前年比87.5%。そして、つい最近に発表された2021年度の成績は98%。販売台数は25万343台。落ち込みは止まりましたが、コロナ禍以前となる2018年度の30万7682台とは大きな差が生まれてしまっているのです。

「日本で輸入車なんか必要ない」!?

「値段が高い」、「なかなか輸入されない」という輸入車。さらに輸入車の立場を厳しくしているのが、日本車の急成長です。

輸入車は遠く海外から日本に運ばれてやってくる。その輸送費もいま高騰している。写真は愛知県・豊橋市にあるフォルクスワーゲン・グループ・ジャパン豊橋インポートセンター

 かつて昭和の時代の日本のクルマは、輸入車と比べれば劣っている部分がたくさんありました。しかし、平成を経て、令和となったいま、その差はかつてとは比べものにならないほど小さくなっています。

 なんといってもトヨタは、フォルクスワーゲンと世界一の販売台数を競う存在になりました。高速走行性能を求められるドイツでも、トヨタをはじめとする日本車は数多く販売されています。また、“壊れない”という信頼性・耐久性では、日本車は他国製を確実に上回っています。

 正直、日常生活の買い物や送り迎えに使うのであれば、軽自動車で用が足ります。しかも、最近の軽自動車は、シートヒーターなどの快適装備が満載されており、自動ブレーキをはじめとする先進運転支援システムも用意されています。

 日常のささいなニーズに応えるきめ細かい装備が数多く揃っているのです。しかも、安い。質がよくて、価格も安い。まるで、ファッション・ブランドのユニクロのようです。日本のクルマの特徴が、そのまま日本のファッション・ブランドにあてはまってしまうというのは、日本人が「質がよくて安い=コスパに優れている」を求める傾向が強いことを意味するのではないでしょうか。

 そんな、コスパを求める日本において、輸入車は確かに難しい立場の商品となります。なぜなら、輸入車は日本人とは違う思想、価値観の下に生まれているからです。

「じゃあ、日本で輸入車なんか必要ない」と思う人もいるかもしれません。実際に、「一生、輸入車とは関係ないよ」という人も多いはずです。なぜなら、日本における輸入車の販売シェアは1割程度。つまりは、残り9割は日本車を買っているのです。

 しかし、数が少ないからといって、いらないわけではありません。逆に1割の人は、輸入車を選んでいるのです。その理由は、やはり「輸入車に魅力がある」からでしょう。

 日本車と違う価値観から作られる輸入車は、当然、日本車とは違います。日本車ならばコストを優先するところを、あえてコスト高になっても、よい部品を使うこともあります。

 たとえば速度無制限の場所もある高速道路、アウトバーンを走る前提のドイツ車は、当然のように高速走行時の安定性に優れます。それは日本の時速100㎞での走行でも明確な差となります。その高速走行での安定性が欲しいというのであれば、やはりドイツ車は選択肢の上位になってきます。

 また、デザインの遊び心を大事にしたいという人は、イタリアやフランスの小型車がおすすめです。先だって試乗したフィアットの新型EV「500e」は、ドアの内側のハンドル部内部に、可愛らしい古いフィアット「500」が描かれていました。これをムダといえばムダなのですが、それが遊び心というもの。フランスやイタリアのクルマのデザインのセンスは、やはり光るものがあります。

 また、メルセデス・ベンツやアウディ、BMW、さらにはロールス・ロイス、ベントレーといったプレミアムカーも輸入車が得意とする分野です。

 日本と違って欧州社会では、まだまだ貴族という身分制度が色濃く残っています。そもそもプレミアムカーは貴人のための乗り物。そうした身分制度が廃れてしまった日本よりも、欧州の方が貴人向けのクルマが得意になるのも当たり前の話ではないでしょうか。

 質と安さのバランスを重視する日本において、異なる価値観から生まれた輸入車が主流派になることは難しいでしょう。しかし、数は少なくとも、“日本車と違う”という価値を選ぶ人がなくなることもないはず。多様な価値観を尊重するのが、今どきの正義です。日本車と異なる価値観から生まれた輸入車こそ、多様な価値観の体現といえるでしょう。