2022年に誕生50周年を迎えたホンダ「シビック」。そんな記念すべき年に11代目となる現行モデルのハイブリッド仕様が追加されました。“e:HEV”というシステム名称こそ従来と同じですが、エンジンやモーターなどを新開発。最新のシビックe:HEVは、走っていてワクワクする演出も盛り込まれた力作です。

効率を高める直噴エンジンと高出力モーターを新採用

 昨2021年9月に発売を開始した11代目となるホンダの現行「シビック」に、本命ともいうべきハイブリッド仕様が追加された。今年2022年は、シビックにとって誕生50周年というアニバーサリーイヤー。高性能モデル「シビックタイプR」の正式発表も間近に控えるなど、記念すべき年だけにホンダもシビックに対して力が入っている。

 そんなシビックのラインナップに新たに加わったハイブリッド仕様を受け取り、早速、試乗へと出かける。峠道へ差しかかったのでアクセルペダルを踏み込んでみると「おや?」と思った。「ハイブリッドのはずなのに間違えてガソリン車を借りてしまったのか?」。シビックハイブリッドのドライブフィールは、そう感じるほど予想外のものだった。アクセルペダルを踏み込むと、パワートレインの反応がハイブリッドらしくないのである。

 もちろん、発進直後にスーッとすべるように加速していくモーター駆動車ならではの感覚はしっかりあるため、試乗車が紛れもなくハイブリッド車であることは明らか。でも、アクセルペダルを踏み込んでいる際、つまり“ドライバーが運転を楽しんでいるとき”の感覚は、まるでエンジン車のようなのだ。

 シビックハイブリッドに搭載されるのは“e:HEV(イー・エイチ・イー・ブイ)”と呼ばれるホンダ独自のハイブリッド機構で、基本的なシステムは「アコード」や「ステップワゴン」などに積まれる従来のものと同じである。低中速域はエンジンが発電装置に徹し、そこで起こした電気を使ってモーターを回して駆動力を生み出す一方、スピードが上がる(従来のタイプは約70km/h超)とエンジンの力をダイレクトにタイヤへと伝える。複雑だが効率のよさを第一に求めたシステムだ。

 ただし、新しいシビックハイブリッドから、システムの構成ユニットが大きく進化した。エンジンは2リッター4気筒という形式こそアコードやステップワゴンのそれと同じだが、効率を高めるべくシビックには直噴式が新開発された。

 また、モーターを内蔵するトランスミッションはアコード用を熟成したもので、従来のシビックハイブリッドに相当する「インサイト」用に対し、モーター出力を53psも高めている。加えて、パワーコントールユニットは出力密度が同12%アップ、さらにリアシート下に置かれるバッテリーはエネルギー密度が同46%アップと、大幅なアップデートが図られている。つまりホンダのe:HEVは、次世代のものへとバージョンアップしたのである。

ドライバーを高揚させるエンジンの“演出”

 話を元に戻そう。シビックハイブリッドのアクセルペダルを踏み込んだ際、エンジン車かと錯覚した理由はどこにあるのか? それはエンジンの“演出”に理由がある。

進化したメカニズムとこだわりの演出で走行性能とドライビングプレジャーを突き詰めたホンダ新型シビックe:HEV

 従来、ホンダのe:HEVは、エンジンの存在を可能な限り消そうとしていた。そのため加速フィールは、どこまでもシームレスに伸びていく電気自動車のようであり、エンジン車でいうCVTのような感覚だった。

 ところが、新しいシビックハイブリッドはまったく違う。アクセルペダルを踏み込んだ際にはドライバーへエンジン音を聞かせるとともに、シフトアップ制御を採用することで、まるでシフトアップしているかのような演出を盛り込んでいる。これにより、加速感とエンジン音とをシンクロさせ、ドライバーが心地よくドライブできるようにしているのだ。

 この“シフトアップ感”は、エンジン音、そしてタコメーター風に動く“パワーメーター”によるもの。もちろん、本当にシフトアップしているわけではいが、演出としては非常に面白い。一方、ギミックは相当凝っていて、パワーメーターの針が振り切れるのと同時に、瞬間的に燃料をカットしてエンジン回転数を落とし、MT車でシフトアップする際の感覚を疑似的に生み出しているのだ。さらに走行モードを「スポーツ」にすると、そこに電子音も加わって、ひときわエンジン音が強調される。

 ちなみに、この疑似的なシフトアップは本当のシフトアップとは異なり、加速Gに変化はなく、ドライバーや同乗者に“シフトショック”が伝わることはない。あくまでもドライバーを楽しませるための演出なのだ。

 もちろん効率を考えると、一瞬、エンジン回転数を落とすのはムダである。しかし「走る歓びを提供したい」、「運転の楽しさを感じてほしい」という気持ちが強い開発陣は、あえてこうした制御を取り入れたという。効率を重視し、エンジンの存在感をなくした従来の味つけから、ドライバビリティを高めるべく、エンジン車のようなフィールへと反転させた点が、新しいe:HEV最大のポイントといえる。

●“ハイブリッドカーとしては”なんてエクスキューズは不要

 楽しいといえば、新しいシビックハイブリッドのハンドリングは、爽快でホンダらしさを感じさせるものだった。

 操舵力は軽いものの、ステアフィールは軽快かつリニアリティが高く、変なクセなどなくドライバーが思ったとおりに曲がっていく。また、コーナリング中は安定感が高く、ステアリングの舵角を切り足すとクルマがしっかり応えてくれて、ググッと曲がり込んでいく。このときの感覚は、まるでよくできたスポーツカーのよう。走りの楽しさに関しては“ハイブリッドカーとしては”なんてエクスキューズは一切不要だ。正直、ハイブリッドカーでこれほどまでにドライビングを楽しめるとは予想外だった。

 そして新しいシビックハイブリッドには、もうひとつ予想外のことがあった。それは乗り心地だ。先行発売されたエンジン仕様比べて、明らかに乗り心地がいいのである。

 それは、とくにリアシートに座ってみるとよくわかる。エンジン車ではドンと突き上げられるような路面からの衝撃も、ハイブリッド仕様はしっかり吸収し、それらを乗員まで伝えてこないケースが多々あったのだ。これは、エンジン車に対してリアのショックアブソーバーの減衰力を落とすといったサスペンションの変更に加え、ハイブリッド仕様のために専用開発されたタイヤ(ミシュラン「パイロットスポーツ4」)の特性などが効いている。

* * *

 これまでハイブリッド車というと、燃費性能だけを追求したモデルと思われがちだった。しかし、新しいシビックハイブリッドは、燃費はもちろんのこと、全開加速性能や音と加速フィールの一体感、乗り心地、ハンドリング性能や高速安定性に至るまで、走りに関する性能とフィーリングが突き詰められている。ハイブリッド化によるネガがないどころか、エンジン車に対して全方位的に走りの性能が高められているのである。

 新しいシビックハイブリッドの走りは、文句なしに一級品だ。愛車でドライビングを楽しみたいドライバーに、まさにうってつけのハイブリッド車といえるだろう。

●Honda Civic e:HEV
ホンダ シビック e:HEV
・車両価格(消費税込):394万200円
・全長:4550mm
・全幅:1800mm
・全高:1415mm
・ホイールベース:2735mm
・車両重量:1460kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHC
・排気量:1993cc
・駆動方式:FWD
・エンジン最高出力:141ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:182Nm/4500rpm
・モーター最高出力:184ps/5000〜6000rpm
・モーター最大トルク:315Nm/0〜2000rpm
・燃料消費率(WLTC):24.2km/L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)235/40R18、(後)235/40R18