トヨタ新型「クラウン」が世界初公開されて3週間が経ちました。16代目となる新型クラウンは、過去のフルモデルチェンジにはなかった大胆な戦略で登場、発表会に参加した人の度肝を抜きました。なぜ新型クラウンは4種類ものボディで登場したのでしょうか。そこに見えたトヨタのホンネとは。

クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステートと個性的な4種類

 SUVっぽい感じになることには間違なさそうでしたが、どうやら1種類ではなさそうなこともうすうす感じられていたとはいえ、まさか一気に4種類も、とは思いもよりませんでした。

 2022年7月15日、トヨタ新型「クラウン」が世界初公開されました。

 それが「クロスオーバー」、「スポーツ」、「セダン」、「エステート」で、決別すると思われていたセダンもあり、今後の1年半で、すべて市販される予定であることも伝えられました。

 詳しい内容はまだ明らかにされていない部分も多々ありますが、見た目はもちろん、中身もかなり差別化されているように見受けられます。

 やればできる的なレベルの話ではなく、かなり本格的に作り分けられているようです。

 問題は、なぜそのようにしようとトヨタが考えのたか。新型クラウンについてトヨタは、クラウンとして初めてグローバルに展開し、40か国に導入する考えがあることを公言しました。
 
 実際にはまったく逆で、クラウンとして初めて日本から海外に本格的に進出するというよりも、グローバルで勝算のある商品を、クラウンの名のもとに開発し、それを日本でも販売する……ただしそのクルマはクラウンを名乗るに相応しい車格や品質を身に着けていなければならない、という話の流れだと思いますが、であればSUVにするにしても、いくつかバリエーションがあったほうがよいと考えるのは不思議ではないでしょう。

 気になるのは、やはりセダンの存在です。

 開発責任者であるミッドサイズ・ビークルカンパニーのプレジデントである中島氏は、途中で豊田章男社長から「セダンも考えてみないか」と持ち掛けられ、耳を疑ったということがあったそうです。それならば、この多様性の時代、ハッチバックやワゴンも必要だと考え、4つの異なるモデルを提案したという経緯がある旨を発表会の場で明らかにしました。

 すべての基本となるクロスオーバーは、セダンとSUVの融合を図ったもので、乗り降りしやすく、視点も高く、運転しやすいパッケージとしながら、新しいハイブリッドシステムとともに走りも進化させています。

 スポーツは新しいカタチのスポーツSUVで、エモーショナルで創造的な雰囲気を持ち、俊敏でスポーティな走りが楽しめるキャラクターが与えられています。

 エステートはワゴンとSUVのクロスオーバーで、機能的なSUVとして、大人の雰囲気で余裕のある走りとアクティブライフを楽しめるモデルとされています。後席はフルフラットデッキにもなります。

 上記の3種類は似ている部分もありますが、スペック的にも大なり小なり差別化が図られています。そこにどのような意図があるのか、実車に触れることのできる機会を楽しみにしたいと思います。

セダンは燃料電池車「MIRAI」との関連性も!?

 かたやセダンは正統派セダンとして、新たなフォーマル表現とともに、上質さ、快適さを追求し、ショーファーニーズにも十分に応えられるモデル、と位置づけられています。

 このセダンだけ他と違って、全長が唯一5000mmを超え、ホイールベースが3000mmとクロスオーバーとエステートより150mmも長いことが気になります。パッケージング的にも、ホイールベース2920mmのFCV「MIRAI」との関連性がありそうな印象を受けます。

トヨタ新型「クラウン(セダン)」

 なので、4種類ある中でも3+1種類という見方ができるわけですが、いずれにしてもクラウンとしての共通性を持ちながらも、ボディタイプだけでなく性格の違いもあるわけで、4つもの異なるモデルをクラウンとして並行して開発するのが簡単でないことは想像に難くありません。

 それを可能にしたのが「カンパニー制」と「TNGA」であると前出の中島氏は述べています。

 カンパニーとしてクラウンを一番に考えることができ、プレジデントとして自らの責任と判断で実行できたことが非常に大きかった。

 また、従来の開発プロセスを見直し、無駄をなくしてリソーセスを確保するために、たとえば製品企画と開発の各工程をひとつのチームにし、従来以上に緊密なコミュニケーションで乗り切ったとのことです。

 2つ目のTNGAは、構想から10年が経ち、TNGAも成熟、進化して、その拡がりがクラウンのシリーズ化を実現させることができたと中島氏はつづけました。

 今回も、たとえばクロスオーバーでは、エンジンと電気モーターを直結させ、後輪にも大型モーターを搭載し、350馬力、550Nmという動力性能と、緻密な4輪駆動制御で車両姿勢のコントロールもおこなう、新しいハイブリッドシステムを導入するなど、さらに進化した旨を述べています。

 なぜ4つもという疑問に対して、整理すると、新しいクラウンがグローバルに進出する上で、多様性のある商品ラインアップを図とうと考えたことと、それを実現できる技術と体制があったから、といえそうです。

 その根底には、なんとしてもクラウンを続けるというトヨタの熱い思いがあったことはいうまでもありません。さらには、その登場をよりインパクトのあるものにしようという思いもあったに違いないでしょう。乗れる機会が楽しみです。