BMWは、新世代水素燃料電池車(FCV)、新型「iXハイドロジェン」用の水素燃料電池の生産を開始したと発表しました。EV一辺倒にも思える欧州メーカーですが、いまなぜFCVなのでしょうか。

トヨタとBMWの技術協力で生まれた水素燃料電池車

 独BMWは2022年8月31日、次世代水素燃料電池車(FCV)である「iX5 Hydrogen(iX5ハイドロジェン)」用の水素燃料電池の自社生産を開始したと発表しました。

 iX5ハイドロジェンは、2021年8月に開催されたIAAモビリティ2021で世界初公開されたFCVです。

 もともと「iハイドロジェン・ネクスト」という名前で2019年に発表され、同ブランドのSAV「X5」をベースにしています。

 2013年からはじまったトヨタ自動車とBMWグループとの製品開発協力により、燃料電池はトヨタから供給され、燃料電池スタックとパワートレインはBMW独自に開発したものとなります。

 iX5ハイドロジェンの燃料電池システムは、水素と酸素の化学反応によって最大170馬力の電気エネルギーを発生。燃料電池の下にレイアウトされる電気コンバーターが、燃料電池の電圧を電位モーターの電圧レベルに調整し、駆動させます。これに第5世代のBMW eドライブシステムと呼ばれる電気モーターと高性能バッテリーを組み合わせることで、最高出力275kW(374馬力)を発生。これはBMWモデルに搭載されているなかでも、もっともパワフルな直列6気筒ガソリンエンジンに匹敵するパワーだといいます。

 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製で700バールの水素タンクふたつが搭載されており、最大で6kgの水素を搭載可能となります。水素の充填にかかる時間は3分から4分で、あらゆる天候下で数100kmの航続距離を確保するといいます。もちろん走行中にドライブトレインから発生するものは、水蒸気のみです。

 2022年3月には北極圏のスウェーデン・アリエプローグにあるBMW冬季試験センターで寒冷地試験をおこない、極端な氷点下のなかでもその性能が確認されています。

 ミュンヘンの水素コンピテンスセンターにおいて、燃料電池システムはおもにふたつの工程で製造されます。まず、個々の燃料電池を組み立て、燃料電池スタックを製作。続いて、他のすべてのコンポーネントを取り付けて、完全な燃料電池システムが完成します。

 燃料電池スタックの製造工程は完全自動化されています。専用のスタック(積層)機器を使用して約5トンの力で圧縮し、ハウジングへと収められる。スタックハウジングはBMWグループ・ランツフート工場の軽金属鋳造工場において製造されます。

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 水素燃料電池技術はBMWのドライブトレイン戦略において、内燃機関モデル(ICE)、プラグインハイブリッドシステム車(PHEV)、バッテリー駆動車(BEV)を補完する第4のパワートレインとして、長期的な可能性を秘めているといいます。

 FCVはEVに代わる魅力的な選択肢となる可能性があり、とくに充電インフラのないユーザーや頻繁に長距離をドライブするユーザーにとって、その可能性は高いと考えられています。

 BMW AGの取締役会会長、オリバー・ツィプセ氏は「水素は万能なエネルギー源として、気候ニュートラルへの道筋で重要な役割を担っています。また、パーソナルモビリティの観点からも、水素は重要な役割を果たすことになるでしょう。FCVは技術的にBEVと並んで理想的な位置にあり、電気モビリティを完成させると考えています」とコメントしています。

 iX5ハイドロジェンは2022年内に試験的に少量生産され、世界各国でその走行テストがおこなわれる予定です。