すべてのグレードに可変圧縮ターボエンジンとe-POWERを組み合わせた日産の新型「エクストレイル」を公道で初試乗。力強くてなめらかな走り味と、先進的で上質なインテリアを兼備した新型は、大人も満足できるSUVへとキャラ変していました。

ハイブリッド専用モデルとなった新型エクストレイル

 待望の国内デビューを果たした日産の新型「エクストレイル」を、ようやく公道でドライブすることができた。その初試乗を終えての率直な印象は「エクストレイルらしいけれど、エクストレイルらしくない」というものだった。

 4世代目となった新型エクストレイルのボディサイズは、全幅が1840mmと先代比で20mmアップとなった一方、全長は4660mmと同30mm短くなった。このクラスのSUVとしては常識的なサイズだが、それでも全幅はライバルたちに比べると控えめで、狭い日本の道や駐車場でも気をつかわずにドライブできる。

 今回のフルモデルチェンジにはいくつかのトピックがあるが、なかでも一番“大きなネタ”はハイブリッド専用モデルとなったことだろう。従来モデルにもハイブリッド仕様が用意されていたが、日本市場向けの新型には純粋なエンジン車が用意されていないのだ。

 ハイブリッド機構は、日産自動車が“e-POWER(イーパワー)”と呼ぶシリーズ式。エンジンは発電に徹して駆動力は生み出さず、エンジンで起こした電気を使ってモーターで駆動する。

 e-POWER自体は「ノート」や「セレナ」、「キックス」などで高い評価を得ているが、新型エクストレイルのそれはシステムを刷新。エンジンは1.5リッターターボとなり、モーターの出力もフロントタイヤ用が204psと、これまでのものより1.8倍も強力になった。さらに4WD仕様では、リアタイヤ用に136psのモーターが追加されることから、スペック上の動力性能はかなり高い。

 ちなみに、新型エクストレイルに搭載された新しいe-POWERはヨーロッパでも販売され、最高速度は約200km/hをマークするという。しかもこの数値は、バッテリーの電力をブースター的に使った“一時的な速さ”ではなく、エンジンが発電する電力だけで実現できるものだという。つまり、200km/hで巡行できるだけの能力を新しいe-POWERは獲得しているというわけだ。

 そんな新型エクストレイルでもっとも「エクストレイルらしいな」と感じたのはスタイルだ。ひと言でいうと「四角いエクストレイルが戻ってきた」ことにホッとした気持ちである。

 エクストレイルの初代と2代目は、無骨さを強調した四角いデザインが印象的だったが、先代となる3代目では一転、丸みを帯びたフォルムとなった。しかし新型は、直線基調のルックスとなり、シャープさを取り戻している。この方が「エクストレイルらしい」と感じるのは、筆者だけではないはずだ。また、防水性を備えたシート表皮を設定しているあたりも、タフギア感をアピールしていた初代や2代目に通じるものがある。

 一方、今回の公道試乗では「エクストレイルらしくない」と感じたこともいくつかあった。その代表例が走りである。といっても、ドライバビリティが悪いというわけではない。その逆で、エクストレイルとは思えないほど出来がいいのだ。

タフギア的要素も盛り込んでいるものの、e-POWERのなめらかな走りと上質なインテリアなどで大人のSUVという印象を強めた日産の新型「エクストレイル」

 まずはパワートレイン。e-POWERによる駆動力はすべてモーターが生み出すことから、その加速フィールはまるでEV(電気自動車)のようになめらかで力強い。アクセルペダルを踏む喜びを強く感じさせてくれる。

 急な上り坂が続くワインディングなどを走っても、パワー不足は一切感じられず、逆に元気のよさに驚かされる。今回の試乗車は4WDだったこともあり、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から大きな駆動トルクを発生、4輪で路面を蹴りながら加速している感覚が頼もしい。

 ちなみに、新型エクストレイルのe-POWERに組み合わされるエンジンは、日産が量産車として世界で唯一、実用化に成功した可変圧縮式。状況に合わせて(通常は固定されている)圧縮比を変化させる機構により、省燃費とパワーを両立させる仕組みだ。しかし走行中、ドライバーは圧縮比が変化していることに気づくことはない。それくらいよくできたエンジンといえるだろう。

 一方、そうしたパワートレインの進化に合わせ、新型エクストレイルはシャシも強化されている。前後のトルク配分を巧みにコントロールし、クルマが曲がりやすいようにする先進の4WDシステムと相まって、ワインディングを積極的に楽しめるハンドリングに仕上がっている。きっと誰もが、走る楽しさを味わえるに違いない。

 もちろん、走りがよくなったからといって、快適性が犠牲になっていないのも新型エクストレイルの魅力。乗り心地はよくエンジンの音も静かで、先代でも上々だったコンフォート性能がさらに引き上げられている。ハイレベルの走る、曲がる、止まるを快適にこなす新型エクストレイルの走行性能は、オーナーとなった人を間違いなく満足させることだろう。

若者向けのタフギアから大人も満足できる上質なSUVへ

 新型エクストレイルにおいて、そうした走行性能の進化とともに感心させられたのがインテリアの先進感と上質感だ。

タフギア的要素も盛り込んでいるものの、e-POWERのなめらかな走りと上質なインテリアなどで大人のSUVという印象を強めた日産の新型「エクストレイル」

 フル液晶のメーターパネルや大型のセンターディスプレイは、これまでのエクストレイルにはなかった先進感を演出。また、内装の多くの部分がソフトパットで覆われるほか、スイッチのタッチや操作性が格段に向上するなど、上質感が大きくジャンプアップしている。

 そして実はこのインテリアの進化こそが、新型エクストレイルの立ち位置を物語る重要な要素だと筆者は考える。

 たしかに新型エクストレイルはタフギア的要素を盛り込んでいるものの、かつてのモデルに用意されていた防水ラゲッジや防水フロアは設定されていない。つまりタフギア感は薄めなのだ。

 つまりこのインテリアの“キャラ変”こそが、今回のフルモデルチェンジにおける大きなテーマだ。インテリアの先進感と質感向上を見る限り、新型エクストレイルの立ち位置はタフギアから上質な大人のSUVへとシフトしたのである。

 2000年に登場した初代エクストレイルは、若者が使い倒すギアのような存在だった。しかし新型は、上質感を求める大人をも満足させる1台へと成長している。こうしたエクストレイルのポジショニング変化からも、20年前はまだまだ特別な存在だったSUVがいまや普通のクルマになったことをあらためて痛感させられた。

●NISSAN X-TRAIL G e-4ORCE
日産 エクストレイル G e-4ORCE
・車両価格(消費税込):449万9000円
・全長:4660mm
・全幅:1840mm
・全高:1720mm
・ホイールベース:2705mm
・車両重量:1880kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
・排気量:1497cc
・駆動方式:4WD
・エンジン最高出力:144ps/4400〜5000rpm
・エンジン最大トルク:250Nm/2400〜4000rpm
・フロントモーター最高出力:204ps/4501〜7422rpm
・フロントモーター最大トルク:330Nm/0〜3505rpm
・リアモーター最高出力:136ps/4897〜9504rpm
・リアモーター最大トルク:195Nm/0〜4897rpm
・燃料消費率(WLTC):18.4km/L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/60R18、(後)235/60R18