上陸が待たれていたプジョー新型「308」のPHEVモデルが待望の日本上陸を果たしました。その魅力をフランス本国でひと足早く体験してきたのは自動車ライターの嶋田智之さん。「308シリーズの真打ち登場」と高く評価する、その理由をレポートします。

価格差以外にPHEVを選ばない理由はない

 ようやく真打ち登場といっていいだろう。プジョー新型「308」のPHEV(プラグインハイブリッド)モデル「308 GTハイブリッド」が待望の日本上陸を果たしたのだ。

 ここへ来て、写真で見るよりはるかに彫刻的でデザインコンシャスな新型308の姿を、ちらほらと街で見掛けるようになってきた。先に上陸した1.2リッターのガソリンターボも1.5リッターのディーゼルターボもかなりの出来栄えだし、あちこちから聞こえてくる「フォルクスワーゲン『ゴルフ』を超えたんじゃないか!?」という声にも僕は賛同する。けれど、実は2022年の春にフランス本国で試乗してきたPHEVモデルこそが新型308のベストだと考えていて、それがいよいよ日本に導入されるのだから気にならないはずがない。

 1.2リッターガソリンと1.5リッターディーゼルターボについては、これまで皆さんもいろんな記事で御覧になったことだろう。その評判は全世界的に上々というのも、きっと御存知のことだろう。確かに新型308のPHEVモデルは、ハッチバックでいうなら最も安価なグレードと比較して200万円ほど、最も高価なグレードと比べても100万円ほど高い(ワゴンの場合はそれぞれ約215万円高と約100万円高)。けれど、その完成度を知ってしまった今となっては、そうした価格差以外にPHEVを選ばない理由はないとすら思える。それくらい新型308のPHEVは、ちょっと驚きの出来栄えなのだ。

 新型308PHEVのパワートレインは、最高出力180ps、最大トルク250Nmを発生する“ピュアテック”1.6リッターガソリンターボに、110psと250Nmを発生するモーターと12.4kWhのバッテリーを組み合わせたもの。システム合計では225psと360Nmを得ていて、それはもちろん新型308のシリーズ中で最も力強いものだ。

 満充電に必要な時間は、3kWの充電器でおよそ5時間、6kWでおよそ2.5時間となる。WLTCモードでは最長64kmのEV走行が可能とされてるから、1日をEV走行のみで過ごすという日も多そうだ。

 このパワートレインのメリットは、走らせてみれば誰もがすぐに気づくはず。発進時の力のゆとり、なめらかな加速、落ち着きのある振る舞い、そして静けさ。バッテリーの残量があるときにはなるべくモーターだけで走らせようとするので、モーターのみで発進してしばらくはEV(電気自動車)のように機能するわけだが、そこで得られるメリットはピュアエンジン車がどう頑張っても手に入れることのできないものだ。

 もちろん充電量が不足していたりアクセルペダルを深く踏み込んだりすればエンジンが起動するわけだが、それでも内燃機関に火が入った瞬間に妙な振動やがさつな音を伝えてくるわけではない。EV走行からハイブリッド走行への移行はとてもスムーズ。減速時の回生ブレーキと機械式ペダルとの協調制御もうまくいっていて自然な感覚だ。かなり洗練されている。

 その上、走行モードで「スポーツ」を選んで元気よく走りたいときには、1.6リッターのターボエンジンと電気モーターとの相乗効果で、かなり爽快でたくましい加速を楽しませてくれる。1.6リッターのピュアテックエンジンはそのままでも低速トルクが豊かな部類だけど、モーターが瞬間的にそれを増強するためスタートダッシュは鋭いし、そのまま6000rpmあたりまで自然にパワーをふくらませながら気持ちよく伸びていく。

 サウンドだって悪くない。無理にスポーティな仕立てにしてる気配はまったくなく、それでもしっかり快さと楽しさを感じさせてくれるし、得られるスピードにも十分に満足がゆく。ガソリンターボ仕様と比べて300kg以上も重いはずなのに、それを補うどころかはるかに上回るパフォーマンスを見せてくれるのだ。

乗り味のよさはプジョー歴代モデルの上をいく

 300kg以上も重量が増えたら、普通なら“曲がる”ことに関してデメリットが生じがちなものだが、308PHEVではほとんどそれを感じることがない。

価格差以外に買わない理由が見つからないほど完成度が高いプジョー「308」のPHEVモデル「308 GTハイブリッド」

 重たいバッテリーをリアシートの下あたりに配置して重心の高さと重量の前後バランスを調整しているため、むしろ内燃エンジンを積んだ一般的な前輪駆動車よりもフットワークがいいように感じられるほどだ。

 低い位置にある軸を中心にロールしていく感覚を伴いながら、308PHEVはスイッと気持ちよく曲がる。それは前輪駆動なのに後輪が車体をコーナリングラインに載せていくような感覚のある、ロールを深めるに従って巧みにトーインを強めるプジョーならではのサスペンションセッティングあってこそのものだが、とにかく操作に対する反応はいいし、ステアリングやシートから伝わってくる、常に四肢が路面をつかんでいるかのような“猫足”感覚も濃厚だ。

 こちらも頑張ってスポーツ仕立てにしつらえた印象はないのだけど、軽やかというより速やかでたおやかなそのテイストは間違いなくスポーティといえるものだし、はっきりいって気持ちがいい。だから、うねうねとカーブが続くような道を走るのが、とても楽しい。ドライビングすることそのものが楽しいのだ。

 それに、重さは乗り心地にも好影響を与えている。新型308は剛性の高さを感じられる車体によく動く足を組み合わせ、ガソリンターボ車もディーゼルターボ車も乗り心地は良好といえる部類にあるが、タイヤやホイールなどからの振動をわずかに感じる瞬間がないわけでもない。対して308PHEVはそれを重さが抑えてくれて、“プジョーらしい”と形容される独特のしっとり感を色濃くしている印象だ。それがとっても気持ちいい。なにやら絶妙なサジ加減で、ここでも洗練という言葉が頭の中をチラつく。乗り味のよさは、これまで体験したどのプジョーよりも上をいっていると断言していいだろう。

* * *

 イマドキこのクラスでは、安っぽさを感じさせるクルマはだいぶ少なくなった。けれど、はっきりとした上質な感覚に浸らせてくれるクルマというのも、そう多いわけじゃない。その点、308PHEVはこのパワートレインを採用することで、高級感といい換えても絶対にバチの当たらない乗り味を得ている。それと同時に、プジョーらしい伝統的なテイストを膨らませることにも成功してるのだ。

 真打ち登場と僕がお伝えしたくなったのは、308PHEVがこうした魅力の持ち主だからである。

●Peugeot 308 GT Hybrid
プジョー 308 GTハイブリッド
・車両価格(消費税込):515万5000円
・全長:4420mm
・全幅:1850mm
・全高:1475mm
・ホイールベース:2680mm
・車両重量:1660kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ+モーター
・排気量:1598cc
・変速機:8速AT
・エンジン最高出力:180ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:250Nm/1750rpm
・モーター最高出力:110ps/2500rpm
・モーター最大トルク:320Nm/500〜2500rpm
・駆動方式:4WD
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)トーションビーム式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)225/40R18、(後)225/40R18