日本は国内だけで大手自動車メーカーが8社もあるという特殊な市場なこともあり、日本市場から撤退した輸入ブランドも少なくありません。ブランド自体がなくなってしまったものもありますが、海外では現在でも健在の自動車ブランドとはどんなものがあるのでしょうか。

ヒョンデのように日本で復活する可能性は?

 日本には国産メーカーはもちろん、欧州や北米メーカーのモデルが数多く輸入・販売されており、街中でもそれらの車両をたくさん見かけます。

 その一方で、かつては日本での認知度を高め一定の販売台数を稼いだものの、日本市場から撤退した輸入車メーカーも少なくありません。

 日本はこの狭い国土にトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・三菱・スバル・ダイハツ・スズキと、世界的な大手自動車メーカーが8社も存在するという、ほかに例を見ない市場になっています。当然、そんな激戦区で海外のブランドが戦うには、並大抵のことではすまされません。
 
 いま思い返せば、他の輸入ブランドと比べるとクルマそのものの魅力に乏しいところや販売網の少なさなどもあったのかもしれません。なかには1世紀以上日本で展開していたのも関わらず、8カ月というわずかな期間で日本から撤退した驚きのブランドもあります。

 今回は、かつて日本で正規輸入されていて、現在も世界のほかの地域では販売されているブランドを取り上げてみます。

●オペル(ドイツ)

 オペル(OPEL)はドイツの自動車メーカーで、現在はステランティスのブランドとなっています。

 日本への参入は1927年に米国のゼネラルモータース(GM)が日本に設立した会社で輸入・販売をはじめ、1950年代には国内資本が総代理店となって取扱いを始めました。

 その後、1993年にはヤナセが取扱いをスタート。最盛期の1996年には新規登録台数が3万8339台と、BMWの3万6196台を超えるほど人気ブランドだったオペル。華やかさは少ないのですがドイツモデルらしい質実剛健さがウリで、「ヴィータ」や「アストラ」「オメガ」などのモデルがありました。

 2000年には日本GMに移管され販売を続けていましたが、競合する輸入車ブランドとの差別化を図れず、販売網の展開も遅れたことで販売台数は激減。さらに当時、親会社であったGMの経営不振もあり、2006年に日本市場から撤退しました。

 それから14年後の2020年2月、当時のグループPSAジャパン(2020年1月にプジョー・シトロエン・ジャポンから名称変更)が、2021年夏に日本でオペルブランドを販売開始すると発表しました。

 しかしながら、2022年3月にグループPSAジャパンとFCAジャパンが合併して発足したステランティスジャパンでは、オペルの国内導入計画が凍結され、2022年11月現在、新たな動きはありません。

 オペルは現在、コンパクトSUV「モッカ」やBセグメントハッチバック「コルサ」、CセグメントSUV「グランドランド」、Cセグメントハッチバック「アストラ」などを欧州を中心に販売しています。これらはプジョーやシトロエンなど、元グループPSAのモデルと同じプラットフォームを用いたモデルとなります。

米国で大ヒット中のフォード「ブロンコ」は日本で正規輸入されていない

●フォード(アメリカ)

 国産メーカーのマツダへの資本参加をはじめ、長きにわたり日本にも数多くディーラーを展開していた米国のメーカーがフォード(Ford)です。

北米で大ヒットしているSUV、フォード「ブロンコ」

 日本での歴史は古く、1925年には日本フォードを設立し、横浜でアジア初となるフォードの製造工場を開設するなど、戦前から日本での知名度が高かった輸入車の老舗ブランドです。

 1979年にはマツダと資本提携し「オートラマ」という名前のディーラーを全国で展開。フォードの代名詞といえるスポーツカー「マスタング」だけでなく、「フェスティバ」「レーザー」「テルスター」など、マツダ工場で生産されたフォードモデルを販売していました。1996年には2万3273台を販売しています。

 バブル崩壊以降は経営が悪化したマツダをフォードが増資で傘下に収め、1999年には後にフォード本体のCEOとなるマーク・フィールズ氏が弱冠39歳でマツダの社長になるなど、日本においてのフォードの影響力は多大でした。

 その後はマツダOEM車の販売を止め、「エクスプローラー」や「エスケープ」「マスタング」などの米国フォード車、「フォーカス」「フィエスタ」「モンデオ」などの欧州フォード車を販売。

 ところが、2016年1月に突如として日本市場から撤退を発表。同年9月には日本のウェブサイトも閉鎖するなど急転直下の事態になりました。

 これは米国本社経営陣からの鶴のひと声で決まったそうですが、それにしてももったいないとしか言いようがありません。たしかにピーク時に比べると5分の1まで売り上げが低迷しており、撤退前の2015年の日本での販売台数は4968台でした。

 グローバルでの販売台数(632万台・2014年)を見ても、日本市場はその0.1%に満たないことも要因だったようです。

 現在は全世界で394万2000台(2021年)の販売台数を誇っています。北米市場では、復活した新型「ブロンコ」が好調で、SUVの「エクスプローラー」や「エスケープ」、スポーツカーの「マスタング」など、日本で馴染みのある新型モデルも人気です。

 欧州フォードでも、かつて日本で人気だったBセグメントコンパクトモデル「フィエスタ」やCセグメントハッチバック「フォーカス」、コンパクトSUV「エコスポーツ」などのニューモデルが存在しています。

●ダッジ(アメリカ)

 アメリカの自動車メーカーのひとつである、クライスラーのブランドとして展開していたのがダッジ(DODGE)です。

2007年の東京モーターショーの様子。クライスラーブースでダッジブランドをお披露目した

 発祥は米国で1914年にダッジ兄弟が興したダッジ・ブラザーズ自動車メーカーが前身。1928年にクライスラーのブランドになりましたが、現在はフィアット・クライスラー・オートモービルズの社内カンパニーとして展開しています。

 日本には1997年に8リッターV型10気筒というモンスターマシンの「ダッジ・バイパー」を輸入販売。日本ではクライスラー「バイパー」という名称が与えられ、価格も1000万円超というプライスで話題を呼びました。

 その後ダッジモデルの「ネオン」や「マグナム」が、クライスラー「ネオン」・「300Cツーリング」という名称で販売されましたが、2007年にダッジブランドとして正規に日本でブランド展開を開始。

 しかし、2009年にクライスラーが本国で日本の民事再生法に相当する米連邦破産法11条の適用を申請したことで、その後のモデル投入などは凍結された結果、2011年には日本市場から撤退することになりました。

 現在はステランティスのブランドとして存在しており、「チャージャー」や「チャレンジャー」などのアメリカンスポーツカー、SUVの「デュランゴ」などが北米では人気となっています。

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 かつて日本に正規輸入され、現在は消えてしまったブランドとしては、サターン(SATURN)やサーブ(saab)、ローバー(ROVER)などもありますが、これらは現在、もはやブランドとして存在しておらず、すでに世界のどこの市場でも新車が手に入らない状況です。

 珍しい例としては、2001年に進出して2009年には日本市場から撤退したヒュンダイ(Hyundai)です。

 世界有数の自動車メーカーへと成長したHyundaiは、2022年2月に12年ぶりに日本復活を果たしました。日本でのブランドの読み方は「ヒョンデ」となり、電気自動車「アイオニック5(IONIQ5)」、燃料電池自動車「ネクソ(NEXO)」の2車種がオンライン販売されています。