ベルギーで開催されている「ブリュッセルモーターショー2023」において、マツダはロータリーエンジンを発電機とする「MX-30」のプラグインハイブリッドモデル「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」を世界で初めて公開しました。気になるそのメカニズムをチェックしました。
新しい“8C”型ロータリーエンジンは超コンパクト
マツダはベルギーで開催されている「ブリュッセルモーターショー2023」において、ロータリーエンジンを発電機として使用する「MX-30」のプラグインハイブリッドモデル「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」を初公開しました。
「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」は、日産自動車の“e-POWER”搭載モデルのようなエンジンを発電機に使い、100%モーターのみで駆動するシリーズ式ハイブリッドシステムに、外部からの充電機能を備えたプラグインハイブリッドモデルです。
その最大の注目は、発電専用ながら11年ぶりに復活を遂げたロータリーエンジンでしょう。
マツダは1967年に発表した「コスモスポーツ」において、世界で初めて2ローター・ロータリーエンジンを量産化。2012年の「RX-8」生産終了までの間、約200万台のロータリーエンジンを世に送り出したといいます。
そんなロータリーエンジンが、時代のニーズに合わせて発電機として復活しました。「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」に搭載されるのは、“8C”型と名づけられた排気量830ccのシングルローター仕様。“eスカイアクティブ R-EV”用に新開発されたもので、最高出力は75psを発生します。
“eスカイアクティブ R-EV”のシステムは、必要なパワーをコンパクトなサイズで生み出せるロータリーエンジンの美点を活かし、エンジン本体と高出力モーターとジェネレーターを同軸上に配置。システム全体を幅840mm未満に収められたことで、「MX-30」のボンネットフード下に搭載できたといいます。

また“8C”型ロータリーエンジンは、1ローター化やアルミ製のローターハウジングなどにより、「RX-8」に搭載されていた“RENESIS(レネシス)”こと“13B-MSP”型エンジンと比べて15kg以上の軽量化を実現。
さらに、直噴化や高圧縮化、さらに、EGR(排ガス再循環システム)採用による低回転域ならびに低負荷走行時の効率アップにより、エンジン単体での排ガスのクリーン化や燃費アップを達成したとされています。
●航続距離は600kmオーバー、最高速度は140km/h
「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」の“8C”型ロータリーエンジンが発電した電力は、容量17.8kWhのバッテリーに貯められた後、モーターを回してフロントタイヤを駆動します。
「MX-30」のEV(電気自動車)仕様である「MX-30 EVモデル」のバッテリー容量は35.5kWhですから、「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」のそれはおよそ半分。フル充電状態時はバッテリー+モーターのみで85km(WLTPモード)の走行が可能とされています。
その上で、「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」には“8C”型ロータリーエンジンが発電した電力がプラスされます。燃料タンク容量は50リットルと大きめで、ドイツマツダの発表では、航続可能距離は合計で600km以上(WLTPモード)になるとされています。
さらに興味深いのは、このモデルのモーター最高出力です。英国マツダによると、「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」のそれは170psとされており、145psを発生する日本仕様の「MX-30 EVモデル」より強力。走りの力強さにおいても期待できそうです。ちなみに最高速度は、140km/hに制限されるといいます。
そんな「MX-30 eスカイアクティブ R-EV」には、特別仕様車「エディションR」が設定されています。
こちらは、黒基調のボディカラーと内装色を組み合わせで、ルーフサイドにマツダ初の乗用車「R360クーペ」のルーフ色を復刻した“マローンルージュメタリック”を挿し色として採用。また、フロアマットやシートのヘッドレストには、ロータリーエンジンのローター形状を模したバッジやエンボス加工を施すなど、おしゃれな仕立てとなっています。
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11年ぶりに復活するロータリーエンジンが、発電専用となってどのような走りを見せてくれるのか。日本仕様をドライブするのが今から楽しみです。