戦略的なスタートプライスを掲げたアウディの電気自動車「Q4 e-tron」。電気自動車専用プラットフォームの採用で実現した広い室内や十分な航続距離など、高い実用性を実現しています。

戦略的なスタートプライスを掲げた輸入EV

 日本市場向けアウディの最新EV(電気自動車)「Q4 e-tron」に試乗することができた。

 今、アウディは完全電動化へ向けて加速中だ。ドイツ本社が打ち出している電動化戦略「Vorsprung 2030」の主な内容は、2026年以降に登場するすべてのモデルをEVにし、エンジン車の製造は2033年までに終了する、というものだ。

 日本においてもその戦略に基づき、これまでSUVの「e-tron」「e-tron Sportback」「e-tron S」、4シータースポーツモデルの「e-tron GT クワトロ」と「RS e-tron GT」を導入してきた。

 そして新たに発売されたのが、第3のEVとなる「Q4 e-tron」と「Q4 Sportback e-tron」である。2台の違いは、前者がオーソドックスなSUVスタイル、後者が少し背の低いクーペスタイルとなっている点だ。

 これまでのe-tronモデルは、いずれも1000万円オーバーの価格帯にあった。しかし、今回試乗した「Q4 e-tron」は、スタートプライスが620万円からと手の届きやすい価格設定とした点に注目。これだけを見ても、アウディにとって肝いりの戦略モデルであることがうかがえる。

 エクステリアでは、最新のアウディ“Qファミリー”(SUVモデル)に共通するオクタゴン(8角形)のシングルフレームグリルが特徴だ。

「Q4 e-tron」のフロントグリル内部に目をやると、立体的にデザインされているもののエンジン冷却のために空気を取り入れる開口部がないことから、EVであることがうかがえる。前後の筋肉質なフェンダーは、いかにもアウディらしいものだ。

 プラットフォームは、フォルクスワーゲングループによるEV専用設計の“MEB”を採用する。前後のオーバーハングを切りつめ、バッテリーなどを効率的に配置することによって、室内長はワンサイズ上の「Q5」をしのぎ、リアシートのヒザ回りなども想像以上にゆったりしている。

 また、インテリアにはカップホルダーやドリンクホルダーなど計24.8リッターもの収納スペースがあり、ラゲッジスペースも同様に、520リッター(Sportbackは535リッター)を確保する。

 インテリアは、最新のアウディデザインによるもので、メーターには10.25インチの“アウディバーチャルコックピット”を、中央には11.6インチの“MMIタッチディスプレイ”を配置する。

 また、センタークラスターをドライバーに向けて傾けたドライバーオリエンテッドなデザインもアウディらしいいもの。ステアリングホイールは上下ともにフラットな形状で、シフトセレクターは「e-tron GTクワトロ」などと同様、指先で操作するミニマルなデザインとなる。

 パワートレインは、システム電圧400Vのテクノロジーを使用した総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを前後アクスル間の床下に搭載。リアアクスルに1基の電気モーターを搭載し、リアタイヤを駆動する後輪駆動となる。

 駆動用の電気モーターは最高出力150kW、最大トルク310Nmを発生。1充電当たりの走行可能距離は576km(WLTCモード)と、コンパクトSUVながら実用性は相当高い。

低重心でコーナリングでの走りも安定

 シフトセレクターでDレンジを選び、「Q4 e-tron」で走り出す。EVゆえの静粛性の高さ、レスポンスのよさ、加速のスムーズさはいうまでもない。アクセルペダルを少し強めに踏み込んでも乱暴に加速するようなことはなく、しっかりと調律されている。

コーナリング性能はとても高い。理想的な前後重量配分と後輪駆動レイアウトによりドライビングが楽しい

 走行中の回生ブレーキの強さは、ステアリング裏側に備わるパドルシフトで4段階に調整可能。また、アウディ初という“Bモード”を備えており、DからBへとシフトすれば最大レベルの回生ブレーキを得られる。

 最終的に完全停止はしないので、最後はあくまでドライバーがブレーキペダルを踏む必要はあるが、走行中はいわゆるワンペダルに近いドライブ感覚を味わえる。

 一見すると背の高いSUVだけれど、ステアリングをゆっくり切り込むとノーズがスッと向きを変え、重心が低いだけにロールも少なく姿勢も安定しているなどコーナリング性能はとても高い。前後重量配分はほぼ均等な48:52で、かつ後輪駆動ということも相まってドライビングがとても楽しいクルマに仕上がっている。

 気になる充電に関しては、200V普通充電の標準は3kW、オプションとして最大8kWまで対応する。急速充電はCHAdeMO規格の94kWに対応している(2022年8月末現在)。

 インポーターであるアウディジャパンは、ポルシェジャパンとともに独自の150kW急速充電器ネットワーク「プレミアム チャージング アライアンス」を展開しているが、先日新たに、フォルクスワーゲン ジャパンの加入も発表された。これにより、3ブランドを合わせた約210拠点にある222基の90〜150kWの急速充電器が段階的に使用可能になるという。これだけの急速充電ネットワークがあれば、EVの利便性も高まることだろう。

「Q4 e-tron」のセールスの出だしは好調なようで、すでに初期受注分は完売したという。そろそろEVを検討してみようと思っているのなら、ぜひ一度試乗してみることをおすすめする。

●Audi Q4 40 e-tron S line
 アウディ Q4 40 e-tron Sライン
・車両価格(消費税込):710万円
・全長:4590mm
・全幅:1865mm
・全高:1615mm
・ホイールベース:2765mm
・車両重量:2100kg
・駆動方式:後輪駆動
・電気モーター:交流同期電動機
・定格出力:70kW
・最高出力:150kW
・最大トルク:310Nm
・駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
・総電力量:82kWh
・交流電力量消費率(WLTC):145Wh/km
・1充電走行距離(WLTC):594km
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ディスク、(後)ドラム
・タイヤ:(前)235/50R20、(後)255/45R20