コロナ禍や半導体不足の影響で、各自動車メーカーの販売台数が落ち込んだなか、ロールス・ロイスやベントレーは2022年の販売台数が過去最高を記録したといいます。なぜプレミアムブランドの人気が世界中で高まっているのでしょうか。
118年の歴史で初の6000台超えとなったロールス・ロイス
生活必需品やエネルギー価格の値上げが続く中、現在、ビジネス絶好調なジャンルが存在します。
それが、超高級車。ただの高級車ではなく、“超”のつくトップ・オブ・トップのクルマが今、売れているのです。
英国ブランドであるロールス・ロイスは、2022年の新車販売が前年比+8%の6021台となり、過去最高を更新しました。
ビスポーク車と呼ばれるオーダー・メイドの受注額も、ロールス・ロイスの過去118年の歴史において、過去最高を記録。平均するとビスポークの価格は1台あたり約50万ユーロ(約7000万円)というから驚くばかり。
しかも、現時点での発注が、すでに2023年度後半以降の生産分に達しているというのです。
ちなみに、ロールス・ロイスの過去5年の販売を振り返ると、コロナ禍到来と主力モデルである「ゴースト」のフルモデルチェンジが重なった2020年こそ振るいませんでしたが、それ以外の年は、常に過去最高を更新し続けています。まさに絶好調。
ただし、日本での販売は、毎年226〜240台で頭打ち(日本自動車輸入組合調べ)。というか、最高240台しか日本への割り当てがないというのが実情でしょう。それ以上に欲しい人がいても、列に並ぶ必要があるというわけです。
そんなロールス・ロイスの好調さを支えているのは、2018年に導入されたブランド初となるSUV「カリナン」、そして2020年登場の新型「ゴースト」、最後にまっ黒な外観のちょい悪イメージの「ブラックバッジ」シリーズという面々。さらに、2023年に投入されるロールス・ロイス初のEV「スペクター」も大注目の存在となっています。
ベントレーも右肩上がりで過去最高を更新
また、同じく英国の超高級ブランドであるベントレーも、同じようにビジネスは絶好調です。

こちらも毎年のように過去最高を更新しつつ、2022年は前年比+4%の1万5174台を記録。もちろん、これも過去最高となっています。
日本での販売は、ロールス・ロイスよりも多くて、2020年が463台、2021年が601台、2022年が651台(日本自動車輸入組合調べ)と、やはり順調に伸びています。
こちらも人気の牽引役は、SUVの「ベンテイガ」。また、ベントレーでは「ベンテイガ」と「フライングスパー」にハイブリッドを追加しており、この電動車の人気も高いようです。
最後の超高級ブランドとして紹介したいのがメルセデス・マイバッハ。メルセデス・ベンツの上級クラスとして日本にも導入されており、昨年は「メルセデス・マイバッハ GLS 600 4MATIC Edition 100」と「メルセデス・マイバッハ S 680 4MATIC Edition 100」が限定で発売されました。
このメルセデス・マイバッハが、2022年は世界市場で前年比+37%の2万1600台も売れたというのです。
ちなみに、これらの超高級ブランドがどこで売れているのかといえば、中国をのぞく世界各地と言えるようです。メルセデス・マイバッハは2022年の中国でも悪くはなかったようですが、ロールス・ロイスとベントレーは苦戦したようです。しかし、中国以外のアメリカや欧州、アジア太平洋地域の調子の良さで、全体としての成長を実現しています。
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こうした超高級車ブランドが絶好調なのは、大前提としてブランドや製品としての魅力が高いということが言えます。
そして、もうひとつは生産力が徐々に追いついているという点も見逃せません。
とくにロールス・ロイスは、受注に追いついてないという状況です。そのため、2022年にロールス・ロイスは、本拠地グッドウッドで150人を新規雇用しています。
生産能力が伸びれば、作った分だけ販売数が伸びるという状況ですから、2023年も、ロールス・ロイスの好調さは維持されるはず。
また、ベントレーやメルセデス・マイバッハも着々と車種を増強していますから、この先の業績の伸びも強く期待できるのではないでしょうか。
富裕層は、世界中にもともといて、そういう人々のニーズに応える超高級車が充実してきた。だからこそ、超高級車のビジネスは、今、調子が良いのではないでしょうか。