マツダのエントリーモデルであるコンパクトハッチバック「マツダ2」が大幅改良を受けました。新しいデザインやグレード体系の見直しで魅力を高めた新型のポイントをご紹介します。
エントリーモデルとしてブランドの門戸を広げる
マツダはエントリーモデルであるコンパクトハッチバック「マツダ2」の大幅改良を実施しました。新型は2023年3月下旬の発売を予定しており、価格(消費税込)は152万9000円から254万1000円です。
今回の商品改良において特に注目すべきは、デザインの変更、グレード体系の整理、カスタムを楽しめる新グレードの追加という3点です。
まずデザインは、大胆に刷新されたフロントマスクが印象的です。これまでのマツダ2は、フラッグシップモデルである「マツダ6」や最新SUVの「CX-60」に通じるマツダのファミリーフェイスを採用。それにより、ライバルを凌駕する上質さやスポーティな雰囲気を獲得することに成功しました。
しかし、こうした“マツダブランドの訴求”を重視してきた結果なのか、実はここ5年ほどの間にマツダ2オーナーの年齢層はメーカーの想定よりも高くなっていたそうです。特に若年層の人たちを中心に、マツダ2に対して「クルマ好きが乗るクルマ」、「私たちのクルマではない」と考える人が増えていたそうです。
マツダ2は国内向けのマツダ車のうち19%ほどを占めるマツダにとって重要な車種。そこで新しいマツダ2は、エントリーモデルとしてマツダブランドの裾野を広げることを目的に、デザインを中心とした変更をおこなってきました。なかでも大胆なのが、見るからに新鮮なフロントマスクです。
フロントグリルは天地を短くし、マツダ車のアイデンティティともいうべきシグネチャーウイングの配色をブラックに変更。さらに、スポーティグレードの「スポルト」系以外はグリルの大部分をパネルで覆い、新鮮さと親しみやすさのある顔つきに変更しています。
●MT派注目のスポルト系はディーゼル仕様の方が上質
グレード体系の整理においては、ユーザーが好みに応じて選びやすくなるよう、それぞれの個性を明確化しています。
それにより、レンタカーや社用車向けのベーシックグレード以外を、スポーティさを強く打ち出した「15スポルト」と「XDスポルト+(プラス)」、質感を追求した「15サンリットシトラス」、そして、“自分らしく、自由な発想で、遊び心を持って”をイメージした新グレード「15 BD(ビーディ)」と「XD BD」に3つに集約しました。

15スポルトとXDスポルト+は、従来モデルに設定されていた特別仕様車「ブラックトーンエディション」のスポーティさをより強調したグレードです。MT仕様が設定されるほか、グロスブラックのメッシュグリル、16インチアルミホイール、黒を基調に赤いラインやアクセントの入ったシートなど、専用装備をおごっています。
ちなみに、1.5リッターのガソリンエンジンを積む15スポルトのシート生地とドアトリムは一般的なクロスであるのに対して、1.5リッターディーゼルターボを搭載するXDスポルト+は、シート生地が“ラックススエード”と呼ばれる肌触りのいい生地とレザーのコンビネーションに、ドアトリムも上質な“グランリュクス”になるなど、より格上の仕立てとなっています。
従来モデルから継承された15サンリットシトラスは、質感を追求したグレード。ステアリング、シフトノブ、パーキングブレーキレバーは本革仕上げとなり、電動パワーシート、ステアリングヒーターなどの上質装備でドライバーを迎えてくれます。
オーナーが個性を打ち出せる白いキャンバスのようなBD系
新しいマツダ2に追加された新グレードBD系は、リーズナブルな価格設定も魅力的な新しいエントリーグレードです。

とはいえ、ツートーンのフルホイールキャップが備わるほか、ボディカラーに合わせた設定される3種類のインパネデコレーションパネルを装備。さらにシート生地も背面におしゃれなメランジ素材を採用するなど、エントリーモデルならではの質素な雰囲気は皆無です。
さらにBD系の魅力はそれだけではありません。BD系はボディカラーと異なる色も選べるルーフフィルムをオプションで用意するほか、ドアミラーカバーのカラーバリエーションも用意。ボディカラーなども合わせると全部で198通りのカラーコーデから好みの1台を選択できます。
スケートボード界において、ステッカーなどでドレスアップしていない素の状態のボードを“ブランクデッキ(BLANK DECK)”と呼びます。その頭文字から名づけられたBD系はまさに、オーナーが個性を打ち出せる白いキャンバスのような存在といえるでしょう。

●デザイナーが厳選したふたつのコンプリート仕様
とはいえ、ボディやルーフ、ホイールキャップ、インパネなどのカラーを自由に組み合わせられるとなると、どれを選んでいいか迷ってしまう人も多いはず。そこでBD系グレードには、マツダのデザイナー陣が提案するカラーコーデのコンプリート仕様がふたつ用意されています。
「ROOKIE DRIVE(ルーキードライブ)」となづけられたひとつ目のコーディネーションは、走りを楽しみたい、しかも、おしゃれに楽しみたいという人向けの組み合わせだといいます。新しいマツダ2のテーマカラーであるエアストリームブルーにオレンジのアクセントを加え、気軽に走りを楽しめるイメージを訴求しています(ボディカラーはスノーフレークホワイトも選択可能)。
ちなみにオレンジの部分に使われるカラーは、現行のND型「ロードスター」の30周年記念特別仕様車にボディカラーとして採用されたレーシングオレンジそのものだといいます。
そしてもうひとつのカラーコーデが、軽やかで心地いいシティポップのようにクルマを楽しむことはできないかとコーディネートされた「CLAP POP(クラップポップ)」。ルーフ、ドアミラーカバー、ホイールキャップ、グリルパネルをホワイトに統一し、ボディカラーとツートーン仕上げにすることで軽やかで楽しい雰囲気に仕立てています。
その上で、ボンネットフードとリアゲートに控えめなストライプを追加することで、よりスペシャルな雰囲気を表現。ちなみにボディカラーは、ディープクリスタルブルーとプラチナムクオーツを設定しています。
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近年のマツダ車といえば、エントリーモデルからフラッグシップまで、首尾一貫したデザインと雰囲気で“らしさ”をアピールしてきました。
しかし、デザインを刷新し、カスタムを楽しめる新グレードを追加した新しいマツダ2には、これまでのマツダ車にない別の魅力を感じられるのも事実です。これが好評を博せば、同じくエントリーモデルであるSUVの「CX-3」など、他のモデルにも同様のコンセプトが投入されるかもしれませんね。