先ごろ5代目へと進化したレクサスの新型「RX」とトヨタ「クラウン・クロスオーバー」は、メカニズム的に見ると“隠れ兄弟車”といっても差し支えない間柄にあります。そこで気になるのが2台の走り味の違い。果たして両車のドライブフィールは差別化されているのでしょうか?

従来のトヨタ式ハイブリッドの不自然さを完全に払拭

 先ごろフルモデルチェンジで5代目へと進化したレクサス新型「RX」は、トヨタ「クラウン・クロスオーバー」との関係性が強いモデルだ。

 2台はともに、“GA-K”と呼ばれるプラットフォームを採用する。これは、トヨタの「カムリ」なども採用するプラットフォームだが、RXとクラウン・クロスオーバーはクロスオーバー車に最適化したものを採用。リアに大きな駆動用モーターを備えた“eAxle”の搭載を前提としたシャシーは、基本的に共通した設計となる。

 そのほか、新たに開発された2.4リッターターボエンジンに6速ATを組み合わせたドライバビリティ&出力重視の“デュアルブーストハイブリッドシステム”や、前輪駆動ベースながらリアに大型モーターを搭載して積極的にリアタイヤへと駆動トルクを送る4WDなど、メカニズム面での共通部分が多い。

 このように、レクサスのRXとクラウン・クロスオーバーは、“隠れ兄弟車”といって差し支えない間柄だが、その走り味に違いはあるのだろうか? ここからは、同じパワートレインを採用するRX500h“Fスポーツパフォーマンス”とクラウン・クロスオーバー RS“アドバンスド”をテキストに、2台の走り味を比較してみたい。

レクサスの「RX」とトヨタ「クラウン・クロスオーバー」は、メカニズム的には“隠れ兄弟車”と呼べる間柄。そんな2台の走り味に違いはあるのか?

 率直にいって、この2台の走り味は甲乙つけたい魅力がある。ともに共通するのは、背の高さ(=重心の高さ)を感じさせないダイナミックかつドライバーが運転を楽しめる操縦性、そしてみなぎるパワーである。

 いずれも、V6エンジンを核とする従来型ハイブリッドモデルに比べて加速のダイレクト感が増しているのが大きな美点だ。“THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)”のネガといわれてきたアクセル操作に対する反応の緩さや、加速とエンジン回転上昇の不一致から生じる加速感の不自然さは皆無。キビキビとした爽快なパワートレインへと進化を遂げている。

 ちなみに、RX500hとクラウン・クロスオーバーRSの間には、エンジンやモーターの最高出力に違いがある。RX500hはエンジン275ps、フロントモーター87ps、リアモーター103psなのに対し、クラウン・クロスオーバーRSはエンジン272ps、フロントモーター82.9ps、リアモーター80.2psとなる。それらは制御の違いによって生じた差であり、ドライブしていて明確に差を感じるほどではなかった。

 その理由は、いずれもあふれんばかりのパワーを目いっぱい引き出して走るシーンは公道にはほぼない上に、RXの方が180kg重い重量差がパワーの差を相殺しているためと思われる。

RX500hは俊敏性を印象づけるべくキビキビさを演出

 ハンドリングに関しては、RX500h“Fスポーツパフォーマンス”、クラウン・クロスオーバー RS“アドバンスド”ともに、アクセルを踏み込んでグイグイ曲がっていけるエモーショナルな特性を持つ。

レクサスの「RX」とトヨタ「クラウン・クロスオーバー」は、メカニズム的には“隠れ兄弟車”と呼べる間柄。そんな2台の走り味に違いはあるのか?

 それは後輪駆動車に近い感覚ともいえる。いずれも前輪駆動ベースのプラットフォームを採用するが、リアモーターに最大80%までという大トルクを積極的に配分することで後輪駆動車のようなドライブフィールを生み出しているのである。

 違いは、クラウン・クロスオーバーRSが全体のバランスを重視してあくまでナチュラルな操縦性を目指しているのに対し、RX500hは俊敏性を印象づけるべく、キビキビさをあえて演出しているように感じられた。

 ただこうした走り味の違いは、あくまでフレーバーの違いであり、どちらもドライビングを楽しめる存在であることは間違いない。

* * *

 それにしても面白いのは、25年前にラグジュアリーSUVという新たなジャンルにチャレンジしたレクサスのRXが今や世の中のスタンダードとなり、一方、保守的だった「クラウン」がクロスオーバーとして大胆に変身し、チャレンジングな存在になったことだ。

 追う者と追われる者として考えると、すっかり立場が入れ替わってしまったようで興味深い。

●LEXUS RX500h“F SPORT Performance”
 レクサス RX500h“Fスポーツパフォーマンス”
・車両価格(消費税込):900万円
・全長:4890mm
・全幅:1920mm
・全高:1700mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2100kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ+モーター
・排気量:2393cc
・駆動方式:4WD
・変速機:6速AT
・エンジン最高出力:275ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:460Nm/2000〜3000rpm
・フロントモーター最高出力:87ps
・フロントモーター最大トルク:292Nm
・リアモーター最高出力:103ps
・リアモーター最大トルク:169Nm
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)235/50R21、(後)235/50R21

●TOYOTA CROWN CROSSOVER RS“Advanced”
 トヨタ クラウン・クロスオーバー RS“アドバンスド”
・車両価格(消費税込):640万円
・全長:4930mm
・全幅:1840mm
・全高:1540mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:1920kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ+モーター
・排気量:2393cc
・駆動方式:4WD
・変速機:6速AT
・エンジン最高出力:272ps/6000rpm
・エンジン最大トルク:460Nm/2000〜3000rpm
・フロントモーター最高出力:82.9ps
・フロントモーター最大トルク:292Nm
・リアモーター最高出力:80.2ps
・リアモーター最大トルク:169Nm
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ベンチレーテッドディスク
・タイヤ:(前)225/45R21、(後)225/45R21