スーパー耐久シリーズ2023“もてぎ大会”の会場で、トヨタとJAFが燃料電池車の“水素欠”に対応できる“給水素トラック”のコンセプトモデルを世界初公開。そのデモンストレーションに姿を現したのは、こちらも実車が世界初公開となるブラックボディ×右ハンドルの新型「クラウン・セダン」でした。

すでに年間で20件も発生している“水素欠”に対応

 2023年9月2日、スーパー耐久シリーズ2023“もてぎ大会”の会場で、トヨタ自動車とJAF(日本自動車連盟)が開発している“給水素トラック”のコンセプトモデルが世界初公開されました。

 そのデモンストレーションに姿を現したのが、2023年秋に発売がスタート予定のトヨタ新型「クラウン・セダン」。それは、実車としては世界初公開となるブラックボディの右ハンドル仕様でした。

 ロードサービスを全国で展開するJAFによると、ユーザーが特に見舞われることの多いトラブルは、「バッテリー上がり」、「パンク」、「キー閉じこみ」、「燃料切れ」で、JAFではこれらを“5大トラブル”に位置づけているといいます。

 なかでも対応の遅れが指摘されていたのが「燃料切れ」。これまでもガソリン車や軽油で走るディーゼル車のガス欠にはもちろん対応できていましたが、昨今、普及が進むEV(電気自動車)の「電欠」やFCEV(燃料電池車)の「水素欠」には未対応だったといいます。

 ちなみにJAFによると、ガス欠のトラブルは年間5万件も発生。電欠も700件、水素欠も20件発生しているといいます。

 そうした次世代型パワートレインに対応すべく、JAFでは2023年8月1日から電欠したEVにその場で充電する「EV充電サービス」の試験運用をスタート。そして今回、FCEVの水素欠への対応策の一環としてトヨタ自動車とJAFが発表したのが、給水素トラックのコンセプトモデルです。

 開発が進められているコンセプトモデルには、ダイレクトに給水素をおこなえる貯蔵モジュール(水素21kg=トヨタ「MIRAI」20台分に相当)に加えて、ガソリンと軽油を10リットルずつ積載。そのほか、パンク修理用のジャッキやエアコンプレッサー、修理キット、バッテリー上がりに対応する12Vバッテリー、そして安全を確保するためのパイロンや三角表示板などが用意されています。

 ちなみに、これまでFCEVが水素欠に陥ると、レッカー移動しか対応手段がなかったとのこと。しかし、未来のクルマであるFCEVがレッカーで運ばれる状態になるのは避けたいとの思いから、トヨタ自動車はJAFと共同で今回のコンセプトモデルを開発したといいます。この給水素トラックを使うと、車種によっては5分ほどで充填可能だといいますから、FCEVオーナーにとっては頼もしい限りです。

 また、給水素トラックが普及することで、ロードサービスのトラブル対応にとどまらず、水素をデリバリーできるようになる可能性も秘めています。水素社会のさらなる発展のためには、欠かせない存在といえるのではないでしょうか。

デモには右ハンドルの新型「クラウン・セダン」が登場

 そんな給水素トラックのデモンストレーションに使われたのが、2023年秋に発売開始予定のトヨタ新型「クラウン・セダン」です。

トヨタとJAFが開発中の給水素トラックのデモンストレーションに姿を現した、ブラックボディ×右ハンドル仕様の新型「クラウン・セダン」

 トヨタ自動車によると、新型クラウン・セダンのボディカラーはすべてモノトーンで、全6色を設定するといいますが、今回お披露目されたモデルのボディカラーは、高級セダンにふさわしいブラックでした。

 ちなみに新型クラウン・セダンの実車は、これまで日本国内ではシルバーの左ハンドル車のみが披露されてきましたが、今回はブラックメタリックに塗られたモデル、しかも、ブラックボディ×右ハンドル車という仕様は世界初公開となりました。

 ブラックのクラウン・セダンは、シルバーのモデルと比べて精悍で迫力があり、インパクトがあります。それでいて、従来の黒塗りのショーファーカーと比べても華があり、強烈な存在感を放っていました。

 新型クラウン・セダンには、HEV(ハイブリッド)とFCEVという2種類のパワートレインが設定されますが、今回、世界初公開となったブラックボディ×右ハンドル仕様の新型クラウン・セダンのそれは、当然FCEV仕様でした。

 世界で初めてコンセプトモデルが公開された給水素トラックのデモンストレーションには、まもなく登場するFCEVの最新モデル、新型クラウン・セダンがまさに打ってつけの存在だったのです。