“共同オーナー型カーシェアリングサービス”を展開するRENDEZ-VOUSが、1975年式ポルシェ“930ターボ”のレストア完成披露会を実施しました。市販ポルシェの中でも特に有名なモデルですが、実は当該車両は日本のポルシェ史において特別なストーリーを持つ1台でした。果たしてどんなモデルなのでしょう?
日本で最初に納車された“930ターボ”の出自とは
所有期間を限定した“共同オーナー型カーシェアリングサービス”を展開するRENDEZ-VOUS(ランデブー)は、2024年2月27日、同サービス利用者に提供する1975年式ポルシェ“930ターボ”のレストア完成披露会を実施しました。
ポルシェの市販モデルの中でも特に有名で、世界的な人気を誇る“930ターボ”ですが、実は今回披露されたモデルは、日本のポルシェ史において特別なストーリーを持つ1台だったのです。果たしてどんなモデルなのでしょう?
そのコードネームから“930ターボ”とも呼ばれる“タイプ930”の「911ターボ」は、ポルシェがモータースポーツ活動で培ったターボチャージャー技術を市販車へと応用した初のモデルとして知られています。
1973年9月のフランクフルトモーターショーで初公開されたプロトタイプは大きな注目を集め、翌年10月のパリサロンでは量産型がお披露目され、1975年春から販売を開始しています。
専用開発されたターボエンジンは、1974年型の「911カレラRS3.0」に搭載されていた3リッターの水平対向6気筒SOHCエンジンをベースに、KKK製のターボチャージャーを装着。トランスミッションは4速MTが組み合わされました。
最高出力は260ps/5500rpm、最大トルクは35.0kgm/4000rpmを発生。0-100km/h加速は5.2秒、最高速度は250km/hと、当時としては驚異的な速さを誇りました。
その強大なパワーを受け止めるべく、ボディやサスペンションが強化されているのはもちろんのこと、ワイドタイヤの装着を可能とすべく前後のトレッドを拡大。“ターボボディ”と呼ばれる、前後フェンダーが大きく張り出したグラマラスなボディが与えられました。
同時に、“930ターボ”は「911」シリーズのフラッグシップモデルでもあったことから、エアコン、パワーウィンドウ、リアワイパーなど、当時としては豪華な装備が与えられており、トップクラスの性能を持つ最速ロードカーとして富裕層たちを魅了しました。
その後“930ターボ”は、エンジンの3.2リッター化や5速MT化の採用など、度重なる改良を受けながら、1989年まで製造が続けられたのです。
今回、お披露目されたのは、クラシカルなオレンジ色をまとった“930ターボ”。RENDEZ-VOUSがオーナーのご子息から同車に関する相談を受けたのをきっかけに、2022年に引き継ぐことを決断して共同オーナー車の1台としてレストアすることになりました。
2022年3月、RENDEZ-VOUS代表の浅岡亮太氏が対面した“930ターボ”は、長期間、倉庫で眠っていた状態。そのとき、すでに保管状態となってから30年という歳月が経過していたため、“930ターボ”は多くのホコリとカビに覆われ、タイヤの空気も完全に抜けていました。
ただし、屋内で保管されていたことが幸いし、外装は大きな劣化がなく、内外装の欠品もなかったことから、元の状態に戻すレストアはそう難しくないと予想されました。
並行してヒストリーを調べてみると、車体番号「9305700051」の当該車両は、1975年式の極初期型の上、当時、ポルシェの輸入代理店であったミツワ自動車が輸入した初期ロットの中でも、最初に納車された“930ターボ”であることが判明。
ちなみに、より“若い”車体番号の「9305700050」も日本に輸入されましたが、こちらはミツワ自動車のデモカー(研究用車)として活躍したそうです。ただし現在、その行方は知れず、現存するかどうかは不明とのことでした。
●ベテランメカニックがそろったポルテックでレストア
今回、当該車両をレストアしたのは、ポルシェ専門の整備工場である静岡県御殿場市のポルテック。
同社は2022年7月に自動車整備事業から撤退したミツワ自動車の事業を継承した会社で、ミツワ自動車で活躍していたベテランメカニックたちが顔をそろえています。つまり、車体番号「9305700051」の“930ターボ”は里帰りを果たしたともいえるのです。
こうしてポルテックの工場に持ち込まれることになった“930ターボ”ですが、ベテランメカニックたちはすぐに厳しい現状に直面します。なんとエンジンが、大がかりなオーバーホールが必要な状態であることが判明したのです。
プロジェクトを牽引した浅岡さんは、「時間とコストの両面から、何度もレストアをあきらめようとした」と、冗談めかしながら苦労を振り返ります。
レストアが困難だったもうひとつの理由が、オリジナルにこだわったことにあります。補修パーツはすべてポルシェ純正品としたため、その入手には多大な苦労があったのだとか。幸い、内外装には欠品パーツがなかったため、“オリジナル度99%”という純度の高い状態に仕上がっています。
ちなみに1%足りない理由は、なんとサンバイザー。もちろん、当該車両についていましたが、劣化がひどく再利用できる状態ではなかったそうです。純正パーツを探したそうですが、残念ながら入手できなかったことから、オリジナルに近いサンバイザーを新たに製作したそうです。
実はレストアの過程において、元オーナーが何度か路上復帰を試みようと“930ターボ”に手を入れていたことが判明したのだとか。しかし、残念ながらその夢は叶うことなく元オーナーは旅立ってしまったといいますが、愛車への強い思い入れを感じさせるエピソードといえるでしょう。
今回、無事に路上復帰を果たしたオレンジの“930ターボ”は、オリジナルペイントのため当時の風合いを強く感じさせるのも魅力のひとつ。そのインテリアも1970年代のままであり、オーディオもカセットデッキのまま、というのも泣かせます。

エアコンも装備されており、R12冷媒を注入すれば可動するそうですが、ほとんど冷えないそう。性能向上のために最新の冷媒ガスに対応させるレトロフィットという手もありますが、“930ターボ”本来のエアコンシステムを痛める原因になることから、エアコンは使わない方が正解と判断したといいます。
走行距離が3万7000kmと極めて少ないことに驚かされる車体番号「9305700051」の“930ターボ”は、今後1年間、4名の共同オーナーたちが“930ターボ”ライフを楽しみ、その後、RENDEZ-VOUSの手を離れるといいます。
浅岡代表は「人気車だけあって、Instagramに画像をアップした直後から国内外を問わず多くの引き合いがあります。ただし、歴史的にも非常に価値のある1台なので、日本で大切にしてくれる次のオーナーへバトンを渡せたらいいなと考えています」と、“930ターボ”への思いを語ってくれました。
現在、次のオーナーになるための優先権を持つのは、今回、車体番号「9305700051」の“930ターボ”を路上復活させたいと願った共同オーナーの4名。まずは彼らの中の誰かが、この価値ある1台を引き継いでくれることに期待したいところです。


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