イングランド出身のシンガーソングライターであるジェイ・ケイ。Jamiroquai(ジャミロクワイ)の名でバンド活動をおこなっている彼は、クルマをこよなく愛するカーガイとしても有名です。今回紹介するMVは、彼のサード・アルバム『Travelling Without Moving』に収録されている「Cosmic Girl」。このMVは、ジェイ・ケイらがランボルギーニ「ディアブロSE30」やフェラーリ「F355」、フェラーリ「F40」を閉鎖された道路で乗り回すだけの、クルマ好き丸出しのMVとなっています。

動く床のMVで日本でも有名となったJamiroquai

 アシッド・ジャズ/クロスオーバー・ファンクにおいて20世紀を代表するバンドJamiroquai。1996年にリリースされたサードアルバム『Travelling Without Moving』(邦題では”ジャミロクワイと旅に出よう”というサブタイトルがついている)から最初にシングルカットされた「Virtual Insanity」のMVは衝撃的だった。

 グレーの無機質な空間に佇むジェイ・ケイ。ピアノから始まり、ビートが刻まれると床が動くなかでリズミカルに踊り出す。その様子を1台の定点カメラで捉えるMVは息をのむほどクールで、一瞬でその世界観に引き込まれていく。このMVは1997年のMTV Video Music Awardsで10冠を記録。Jamiroquaiの名を世界に知らしめる作品となった。

 余談だが、このMVは前後左右に動く床の上でジェイ・ケイが踊っているように見えるが、これはトリック。実際は壁が動いている(しかも人力で動かしている)のだ。

 そんな「Virtual Insanity」の次にシングルカットされたのが1996年12月にリリースされた「Cosmic Girl」だ。

●いかにもクルマ好きが作りそうなMV

 タイトルどおり、どこか狂気すら感じる「Virtual Insanity」のMVから一転、「Cosmic Girl」はストーリーなど関係なし! ジェイ・ケイがやりたい放題に遊んでいるMVとなっていて、当時大きな話題となった。

 無類のスーパーカーマニア、なかでもフェラーリに並々ならぬ愛情を注いでいることで有名なジェイ・ケイ。彼は疾走感のあるジャズ・ファンクであるこの曲に合わせ、撮影のために封鎖したスペインの道路で夜明けから暗くなるまでひたすらカーチェイスをしている。

スーパーカーはジェイ・ケイの私物!?

 登場するのはフェラーリ「F40」、フェラーリ「F355」、そしてMVのなかでジェイ・ケイがステアリングを握る紫色のランボルギーニ「ディアブロSE30」という3台。

 F40はフェラーリ創立40周年を記念して1987年に発表された限定モデル。リアミッドシップで搭載される2936ccのV8 DOHCツインターボエンジンは478psを発揮。レーシングカーを彷彿させるボディデザインはピニンファリーナが担当した。

 車体はCFRPやアルミを多用して徹底的な軽量化が施され、車両重量は1100kgにまで絞り込まれた。ちなみに日本車でいうとトヨタ「ヤリスハイブリッド」とほぼ同じ重量。F40がいかに軽いかがわかるだろう。公称の最高速度は324km/hで、当時の世界最速だった。

 F40の発表はフェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリの悲願でもあり、イタリア・マラネロで開催された発表会には当時89歳だったエンツォ自身も出席した。

 1994年に登場したF355は、フェラーリが新しい扉を開けたモデルといっていいだろう。ハイパワーのスーパーカーはどうしても乗り手を選ぶが、F355は乗り手を選ばず誰もがフェラーリのドライビングを楽しめるようにしたモデルだった。それを象徴する出来事が、1997年にF1マチックを追加したことだろう。

 クラッチ操作を必要とせず、ステアリングに設置されたパドルシフトでギアを操作しながら2ペダルでフェラーリをドライブできるので、ストップ&ゴーが多い都市部で暮らすオーナーを中心に歓迎された。

 F355のパワーユニットは最高出力380psを発揮する3496ccのV8 DOHC。車名は3.5リッター5バルブに由来する。

 デビュー時はクーペ(ベルリネッタ)とディタッチャブルトップ(GTS)が用意され、翌年にはオープンモデル(スパイダー)がラインナップに加わった。

スペインの絶景ワインディングを流す3台のスーパーカー(C)Youtube(Jamiroquai)

●ジェイ・ケイのイメージが強い「ディアブロSE30」

 最後に紹介するのはランボルギーニ・ディアブロ。スーパーカーブームのなかでも別格の存在だった「カウンタック」の後継モデルで、1990年に登場。カウンタックを象徴するシザードアを継承した。

 ベースモデルに搭載されるのは最高出力492psを発揮する5707ccV12 DOHCエンジンで、後輪を駆動させるリアミッドシップレイアウト。最高速度はF40より1km/hだけ速い325km/hと発表された。

 ランボルギーニは1993年以降、ディアブロに4WDモデルや6リッターエンジン搭載モデルなどの派生モデルを登場させたが、「Cosmic Girl」で使用されたディアブロSE30もそのひとつだ。

 これはランボルギーニの創立30周年を記念した150台限定のスペシャルモデルで、専用のエアロパーツをまとって空力性能を高め、軽量化もおこなわれている。

 MVで登場しているパープルのSE30を、ジェイ・ケイが実際に所有していたのは有名な話。MVには運転シーンも登場するが、なんとこのディアブロは右ハンドル。少数だけ製造されたイギリス仕様になる。

 2017年には、ジェイ・ケイが所有していた紫色のディアブロSE30が売りに出されたことが話題になった。しかし、「Cosmic Girl」のMVが公開された後にはジェイ・ケイがこのディアブロを大破させたなんていう話もあったので(あくまで噂だが)、売りに出されたディアブロが「Cosmic Girl」で使われたものなのか、あるいは別なのか、再生させたものなのか、そもそも大破の噂がガセだったのかは定かではない。

「Virtual Insanity」、「Cosmic Girl」などが収録された『Travelling Without Moving』は、Jamiroquaiの傑作といっても過言ではないだろう。ちなみに、ジャケットではフェラーリのエンブレムにJamiroquaiのシンボルマークであるメディシンマンを象っていて、このアートワークのために数億円の使用料をフェラーリに支払ったといわれている。

 2021年5月には、腕時計ブランドであるリシャール・ミルが、マクラーレン・オートモーティブとの5年目のパートナーシップを記念した106本の限定モデル“RM 40-01 オートマティック トゥールビヨン マクラーレン スピードテール”を発売した。マクラーレンはこの時計のPVを公開しているが、それは「Cosmic Girl」のMVをトリビュートした作品になっている。

「F40」に「ディアブロ」、「F355」が公道バトルする【動画】はこちら

●Jamiroquai – Cosmic Girl (Video)

●The new Richard Mille RM 40-01 McLaren Speedtail Automatic Tourbillon