コスプレはなにもアニメや漫画だけで楽しむものではありません。「グッドウッド・リバイバル」では、れっきとした年代コスプレが存在します。そこで、日本でも同様の取り組みをおこなって楽しんでいるイベントを潜入調査しました。

グッドウッド・リバイバルの日本版を目指してスタートしたイベントとは?

 日本国内では新型コロナウイルス禍に一時的にでも収束の兆しが見え始めた2021年の秋は、クラシックカーのイベントも一気に復活したかに映る。

 今回はそんなイベントのひとつ、2021年11月28日に千葉県のサーキット「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」を舞台としておこなわれたレースイベント「フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」を紹介しよう。

●目指すは英国「グッドウッド・リバイバル」

 話はいきなり日本国外へと飛んでしまうが、読者諸兄は「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」という、イギリスの超人気イベントをご存じだろうか?

 毎年7月に開催される世界最大級の自動車のお祭り「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」の姉妹イベントとして、毎年9月におこなわれている「グッドウッド・リバイバル」は、1920年代から1960年代にレースで活躍した珠玉の2輪車/4輪車が、本気のレースをおこなうイベント。会場はかつてF1GPに使用されたこともある、グッドウッド・サーキットが使用される。

 また、レースに参加するエントラントやスタッフのみならず、観戦のために集うギャラリーに至るまで、サーキットを走るクルマたちの年代に相応しいクラシックなスタイルで「コスプレ」を楽しむほか、サーキット周辺も古き良き英国のサーキットにタイムリープしてしまったかと錯覚を覚えてしまうような設えとなる。

 まるで期間限定のテーマパークのような雰囲気が横溢し、世界一お洒落でカッコいいサーキットイベントとして、あらゆるエンスージアストから敬愛されている。

 そしてこの「グッドウッド・リバイバル」に魅了され、日本版を創りだそうと夢見るエンスージアスト有志のチャレンジとして誕生したのが「サイドウェイ・トロフィー」なのだ。

 2009年、筑波サーキットでおこなわれるクラシック・ミニのレースイベント「ジャパン・ミニ・デイ」の走行枠を借りるかたちでスタート。その後、現在の袖ヶ浦フォレストレースウェイに舞台を移した「フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」として独立を果たし、今では「春」と「冬」毎年2回がおこなわれる恒例の人気イベントとなっている。

 それまで日本国内で盛んにおこなわれていたクラシックカー・レースは、絶対的な速さを追求するあまり、現代的なチューニングや改造をおこなうとともに、「Sタイヤ」と呼ばれるレーシングラジアルタイヤを履くことによって、それぞれクルマ本来の雰囲気が大幅に損なわれてしまったかに映っていた。

 また、レースカーを送り出すチューニングショップのPRも兼ねた、やたらと派手なカラーリングやグラフィックも横行していたことから、あくまで私見ながら見た目の魅力は大幅に低下していたように思われる。

「エバーグリーン・カップ」のロータス・エラン勢

 そのアンチテーゼとして誕生した「サイドウェイ・トロフィー」では、参加資格を原則として1969年までに製造されたモデル(継続生産車含む)とするところまでは従来の旧車レースと同じながら、オリジナルの持ち味や現役当時の雰囲気を壊すような改造を禁止。キャブレターなどのメカニズムも、当時のものと同スペックであることが求められる。

 そしてもっとも重要なこだわりがタイヤ。使用が許されるのは、昔ながらのダンロップ社製バイアスレーシングタイヤ「CR65」のみと規定されている。

 サイドウェイ・トロフィーの公式HPには、以下の文言が記されている。

「SIDEWAY TROPHYは順位とラップタイムだけにとらわれず、エントラントやゲスト、スタッフまでもがGOODWOOD REVIVAL MEETINGをリスペクトし、誰もがこだわりの衣装やスタイルを意識することであの雰囲気を作り出していくことを最大の目的としています」

 もともと日本のクラシックカー・レース界では、ある意味亜流だったはずのサイドウェイ・トロフィーながら、オーガナイザーたちによるこれらの確固たる信念が、現在の地位を築き上げる最大の要因になったかと思われるのだ。

参戦者だけでなく観客もコスプレしてサーキットを楽しむ

「フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」では、お手本としている「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」と同じく、4輪クラシックカーによるレースだけではなく、2輪のクラシック・モーターサイクルのレースもおこなわれる。

サイドカーによる「フレディ・ディクソン・トロフィー」

●ドライバーから観衆までみんなで作る“日本一お洒落なサーキットイベント”

 まず2輪車では、小排気量クラスの「ヴィンテージTT(Vintage Tourist Trophy)」をはじめ、純レーシングマシンと大排気量車による「サラブレッド/ゴールデン・エラ/プロダクション(3クラス並走)」と、主に排気量やマシンのタイプ別にクラス分けされる。

 加えて、オートバイとサイドカー双方のレースで活躍した伝説のレーサーの名を冠する3輪サイドカーのカテゴリー「フレディ・ディクソン・トロフィー(Freddie Dixon Trophy)」も設定されていた。

 一方4輪車のプログラムは、ツーリングカーによる「ティントップ・カップ(TinTop Cup)」、スポーツカーによる「エバーグリーン・カップ(Evergreen Cup)」という各10周のスプリントレースに加えて「セブリング40mトロフィー(Sebring 40m Trophy)」と題されたツーリングカー/スポーツカーによる40分耐久レースがおこなわれる。

 またランチタイムには、2輪と4輪の双方でパレードランの時間が設けられ、それぞれ「カフェ・レーサーズ・トリビュート」、「RACメモリアルラン」と銘打たれていた。

 これらのレースについては、筆者自身がまったくの門外漢である2輪はさておき、4輪カテゴリーはなかなか見ごたえのあるものであった。

 現代的なラジアルタイヤではなく、昔ながらのバイアスタイヤは車両コントロールがかなり難しいようで、コース上では時おりスピンやコースアウトも発生する。それでも、分別のある大人のドライバーたちはテクニック、マナーともに上々の様子。大きなアクシデントやトラブルにつながることなく、安全かつスムーズにプログラムが進行したのだ。

 さて、ここまではレースやエントラントについての話題を中心にレポートさせていただいたが、ここからは袖ヶ浦フォレストレースウェイに集うゲスト(見物客)にとっての「観る楽しみ」を話題としたい。

ズラリと並んでいただいたグリッドレディたち

 英国グッドウッド・リバイバルを目指すこのイベントでは、エントラントやスタッフがクラシカルなコスプレをおこなうというのは、前述のとおりである。

 なかでもサイドウェイ・トロフィーにおける最高の名物となっているのが、決勝レースのスタート前にグリッドでマシンを誘導する「グリッドレディ」たちである。ボランティアとしてこのイベントに参画するグリッドレディ軍団は、おそらくはアンティークの古着と思しき1950−60年代風のコスチュームとメイクでバッチリと決めて、スタート前のセレモニーや表彰式ではレースの「華」となる。

 また開会式などのセレモニーでは、イギリス人と日本人コンビによる本場仕込みのバグパイプ生演奏も入り、英国的に厳かな印象をさらに高めている。

 そして、レース観戦のためにやってきたゲストのなかにも、クラシックな服装に身を包んだ人がかなりの割合で存在する。つまり、会場に集うすべての人間が往年のスタイルを意識し、みんなで協力して憧れのグッドウッドの雰囲気を醸し出そうとしているのだ。

 さらに、クラシックカーを所有するゲストが自身の愛車とともに観戦に行く際には、愛車をパドック内に設けられたクラシックカー専用スペースに置くことも可能となる。

 まだまだ「グッドウッド・リバイバル・ミーティング」のように、イベント会場180度見渡す限りがクラシックというわけにはいかないながらも、サイドウェイ・トロフィーが日本一お洒落なサーキットイベントであることは間違いないだろう。

 次回の「フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」は、来年春におこなわれる予定とのこと。興味を持った人は、この素敵なイベントに遊びに行くために古着屋回りをしたり、ネットを物色したりする、あるいは、おじいちゃんやおばあちゃんが若かったころに愛用していた服や小物を借り出すなど準備の段階から楽しみつつ、ぜひとも足を運んでいただきたいところである。