8代目となったVW「ゴルフ」に試乗しました。まだまだ需要のあるディーゼルエンジン搭載の「ゴルフTDI R-ライン」です。

ディーゼルエンジンをさらにクリーンに突きつめた

 1.0リッター、1.5リッター、2.0リッターと排気量違いのガソリンモデルが揃ったVW「ゴルフ」に、2.0リッターディーゼルエンジンを搭載した「TDI」モデルが追加。2022年1月7日から日本での販売が開始されるという。箱根でおこなわれたゴルフTDI試乗会に参加し、ひと足早くその出来栄えを試してみた。

●ふたつのアドブルー噴射システムを採用

 新型ゴルフTDIが搭載するパワートレインは、先代の「EA288」から進化した排気量1968ccの「EA288 evo」型直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボディーゼルエンジンだ。16.0の圧縮比から、最高出力150ps(110kW)/3000−4200rpm、最大トルク360Nm/1600−2750rpmを発生。先代に比べると出力は変わらないものの、150rpmほど低いところから20Nm増加したトルクを稼ぎ出している。

 Evoとなった新型TDIの開発目標は、燃焼効率に優れるディーゼルエンジンをさらにクリーンにし、内燃機関モデルの環境性能を底上げすること。例のディーゼルゲートの一因を作ったのがVWなのだけれども、一気に電動化に進んでしまうのではなく、ディーゼルが持つ魅力をあきらめずにさらに突き詰めたのが今回のエンジンというわけだ。

 そこで新たに採用したテクノロジーが、「ツインドージング(デュアルアドブルー噴射)」システムだ。具体的には、これまで1系統だった尿素SCR(選択触媒還元)システムを、エンジン近くに設置した第1SCRと、アンダーボディの第2SCRへと直列2系統化。

 冷間始動時直後や低負荷時には、第1SCRが効率良くNOx(窒素酸化物)を分解し、排気温度が220−350℃の間でその90%を除去。逆に高負荷時には、排気温度が100℃低い位置にある第2SCRが主に作動してアドブルーを噴射し、除去をおこなう。ふたつのSCRが状況によって使い分けられるので、アドブルーの消費量は従来と同等ながら、NOxの排出量は先代より最大80%削減。結果、厳しいEURO 6d排ガス規制をクリアしている。

 さらに、低圧EGR(排気再循環)用ラジエーターの効率を25%向上してNOxの発生を低減しただけでなく、1燃焼あたり9回の噴射をおこなう最大2200barの高圧インジェクターを採用したり、サイレンサーや消音材を改良したりすることで、これまではディーゼルエンジンのネガ面として挙げられていた出力・トルクの向上、レスポンスの向上、燃費の改善、排気の有害物質低減、騒音の低減などあらゆる面で対策をおこなった、との説明だ。ちなみにWLTCモード燃費は20km/Lとされている。

「ゴルフTDI R-ライン」の峠での実力はいかに

 試乗会場に到着した際には、すでに何台かがアイドリング中だったのだが、実はガソリンモデルかと思った個体が、試乗車だったのだ。たとえば、狭い道路を歩いている時、ちょっと古いドイツや北欧のディーゼルモデルが後方から横を追い抜いて行った時など、トラックだと思っていたら実は乗用車だった、という経験をお持ちの方がいるはず。

 しかし新型TDIはそんなことはなくかなり静か。ボディにはTDIとかDieselのロゴが一切なく、標準モデルとほとんど同じ意匠なので気が付く方も少なかろう。ただしボンネットを開けると、「ガラガラ」と音がしているので、間違いなくディーゼルだな、と確認できる。

8代目にフルモデルチェンジしたゴルフだが、どこから見てもゴルフと分かる上に時代に即したデザインはさすがだ

●静かで滑らか、そして力強い

 試乗したのはTDIモデルの中ではトップグレードとなる「R-ライン」で、エクステリアカラーは最近流行りの「ムーンストーングレー」。タイヤはオプションの18インチを履いている。

 早速箱根の山道へ向けてスタート。ノーマルモデルのように48Vマイルドハイブリッドの助けがなくでも、1200−1300rpmあたりからズドーンとトルクが出てくるので、上り坂でもすぐにスピードが乗ってくる。

 しかも強くフラットなトルクが長く続くので、ギア1段あたりの守備範囲が広い、という感覚が味わえる。ガソリンモデルのように尖った感じはないけれども、平均して高い速度を保ったままワインディングを駆け抜けていける、というイメージだ。R-ライン仕様だったので専用シートのホールドがよく、スポーティな走りも得意なキャラクターに仕上がっているのだ。

 さすがに下り坂のコーナーなどでは鼻先の重さが伝わってきたり、パドルでシフトダウンしようと思っても高回転まで回らない(4500rpmあたりからレッドゾーン)のでそれをうけつけなかったり、というような面もあるけれども、まあそこは仕方のないところかも。

 逆に高速道路は大得意科目で、静かでどっしりと落ち着いた巡航ができ、キャラクターに合っている。ワンボタンのトラベルアシストの精度が高いので、どこまでも乗っていけそうだ。

 また、ガソリン価格高騰の中、軽油を使用するという経済性も見逃せない。ワインディング中心の走りでも13.3km/Lと表示されているので、期待はできる。

 TDI R-ラインの車両価格(消費税込)は408万8000円となかなかのものだが、TDI自体は344万4000円のアクティベーシックから4グレード展開している。

 コンソール周りの質感や、デジタルコックピットの使い勝手については、ノーマルモデルと変わらないので、新型ゴルフ全体のネガなポイントだ。さて、原稿を書いている時点で、韓国から飛び火したというアドブルー不足のニュースが飛び込んできた。ディーゼルエンジン車にとっては必要不可欠なものなので、ちょっと心配なところ。一時的なものであれば良いのだが。

●VOLKSWAGEN Golf TDI R-Line
フォルクスワーゲン ゴルフTDI R-ライン
・車両価格(消費税込):408万8000円
・全長:4295mm
・全幅:1790mm
・全高:1475mm
・ホイールベース:2620mm
・車両重量:1460kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
・排気量:1968cc
・エンジン配置:フロント横置き
・駆動方式:前輪駆動
・変速機:7速DSG
・最高出力:150ps/3000-4200rpm
・最大トルク:360Nm/1600-2750rpm
・0-100km/h:8.8秒
・最高速度:223km/h
・公称燃費(WLTC):20.0km/L
・燃料タンク容量:51L
・ラゲッジ容量:380−1237L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット式、(後)4リンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)225/45R17、(後)225/45R17