1980年代から1990年代のV8フェラーリは、比較的入手しやすいプライスで推移していましたが、「F355」のMT仕様はクラシケの仲間入りしたこともあって、徐々に値上がり中です。今回はそんなF355の極上スパイダーを紹介します。

「F355」もすでに「クラシケ」の仲間入りをしていた

 フェラーリのクラッシック部門である「クラシケ」の定義によれば、クラッシック・フェラーリとして認定できるモデルは、新車でのデリバリーから20年以上を経過したものとされている。

 ここで紹介する8気筒モデルの「F355」は、最初にクーペボディのベルリネッタとタルガトップのGTSが1994年に、フルオープン仕様のスパイダーが翌1995年に発表され、最終的に1999年まで生産が継続されているから、すでにクラッシック・フェラーリの仲間入りを果たしたことになる。

 F355はその前身となった「348」シリーズを大幅にマイナーチェンジすることで完成されたモデルであり、最高出力380psの新開発の3.5リッターV型8気筒DOHC5バルブエンジンを搭載するなど、メカニズム的にもパフォーマンス面でも大きく進化しており、フェラーリのユーズドカー市場では高い人気を維持していたモデルだ。

 それがすでにクラッシックの世界に入り、今後はクラシケの認証を得たモデルがオークション・シーンに登場するようになると(ちなみに今回の出品車に関しては、RMサザビーズからその記述はなかった)、そのバリューはさらに高まると読むのが予想としては自然なところだろう。

●極上の「F355スパイダー」

 同オークションには、このF355の後継車として誕生した「360モデナ」も出品されているが、実際の落札価格はF355が14万8500ドル(邦貨換算約1700万円)と、360モデナの9万3500ドル(邦貨換算約1080万円)より高価だった。

 もちろんこれにはさまざまな理由があるが、やはりその根底には今がF355を購入するにはベストなタイミングだろうという意識が落札者に働いたのではないだろうか。そしてF355自体の評価の高さがあることは間違いない。

 ちなみにRMサザビーズの調べによれば、1995年から1999年までに生産されたF355スパイダーの台数は3717台。そのうち2664台はオーソドックスな6速MT仕様で、最終期に追加設定された6速F1マチックよりMT仕様の方が、オークション市場での人気は高い。

 今回紹介する出品車で驚くべきは、新車でのデリバリー以降ワン・オーナーで、走行距離もわずかに4800km未満であったことだろう。ボディカラーは「ブルー・ポッツィ」と呼ばれるシックなダークブルーで、これも最近ではレッドやイエローといった派手なカラー以外にも注目が集まるフェラーリには良く似合うカラーだ。

 コンディションは、タンレザーで仕上げられたインテリアと同様に完璧なもの。20年以上もの時間の流れを感じるのは、センターコンソールにフィットされるオーディオがカセットテープに対応していることくらいだろうか。もちろんこれとて当時の純正装備である。18インチの5本スポークホイールも同様に新車時から装備されていたものだ。

 2012年6月、このF355のオーナーはタイミングベルトの交換を始めとするメンテナンスを、自身が住むカナダのオンタリオ州のディーラーで受けている。この時の整備記録に残された走行距離が4295kmであるから、オーナーがいかに大切にこのF355を扱っていたかが理解できる。

 新車時から現在に至るまでのサービス記録に加えて、ファクトリーツールキットや革のケース付きのオーナーズ・マニュアルも完備。これほど満足度の高いF355スパイダーは、オークションシーンにもなかなか出てはこないだろう。それが14万ドルを超える落札価格として評価されたのだ。