第一次スーパーカーブームを代表するランボルギーニ「カウンタック」のライバルはフェラーリ「BB」。そして「ウルフカウンタック」で得た知見を元にした「LP400S」のライバルは「512BB」です。では、現在のオークションマーケットでは、どちらが高額なのでしょうか。

同じ「BB」でも「365」と「512」の違いとは

 2021年11月19日、RMサザビーズ社はフランスのポールリカール・サーキットを会場として「The Guikas Collection(ギカス・コレクション)」オークションを開催した。

 その中には、VAGUEでもオークションレビューをお届けしたランボルギーニ「カウンタック」に加えて、その宿命のライバルともいうべきフェラーリ「BB」も「365」と「512」が、結果として2台競演するかたちで出品された。前回の「365GT4/BB」に続き、今回は「512BB」を紹介しよう。

 1973年から生産に移された元祖「ベルリネッタ・ボクサー」こと、「365GT4/BB」とともにミドシップ12気筒ストラダーレの製作に進出したフェラーリ。しかし、実は365BB時代は実験的要素も多かったことから、当初から数多くの技術的問題点を抱えていた。そこでマラネッロでは、一定数のシリーズ生産を期した進化モデルの開発が進められていた。

●「512BB」の進化ポイントとは

 1976年に正式発表した「512BB」は、運転席・助手席のすぐ後方に搭載されたボクサー12気筒エンジン、あるいはピニンファリーナのデザインよるダイナミックなボディなど、365GT4/BBの技術的特徴を受け継ぐ一方で、細部は大幅な進化を遂げている。

 そのネーミングは、1960年代末からスポーツカーレースを闘ったフェラーリの「512レースカー」へのオマージュであるとともに、エンジンのスープアップを示唆していた。

 512BBの強力な180度V型12気筒エンジンは、排気量を365BB時代の4.4リッターから5リッター(4943cc)に拡大。4基のトリプルチョーク式ウェーバー社製キャブレターが、拡大されたエンジンに燃料を供給した。

 一方のボディワークでは、フロントにエアダムスカートが設けられたほか、ボディサイドにはNACAスクープを追加。テール側のオーバーハングも延長された。また、テールエンドに置かれる丸形テールランプは365BBの左右3灯ずつ(ひとつはリフレクター)から2灯ずつに変更。マフラーも片側3本出しから2本出しに換えられ、若干ながらエキセントリックな印象が薄められた。

 これらのモディファイは北米への輸出を見越してのものともいわれていたが、実際には512BBがアメリカ合衆国に正規輸出されることはなかった。これはエンツォ・フェラーリ翁が厳しい北米の排出ガス規制に適応させるために、意に沿わない改良を施すことを拒んだから、ともいわれているようだ。

 ただ、スポーツカーの世界最大市場であるアメリカへの導入はなくとも、生産台数は365BB時代の2倍以上に相当する929台に及んだとのことである。

「512BB」は「カウンタックLP400S」より高額落札されるのか?

 今回「Guikas Collection」オークションに出品された512BBは、シャシーナンバー#27773。1979年5月に、パリのフェラーリ正規代理店「シャルル・ポッツィSA」を通じて、フランス在住の初代オーナーに新車として引き渡された。

 翌1980年には2人目のオーナーに販売されたのち、2006年にはフェラーリ専門ディーラー「モデナ・モータースポーツ」社を通じてドイツ国内の所有権に移行。さらに2018年5月にギカス氏が入手したとの記録が残っている。

「365GT4/BB」との違いは、テールライトが片側2灯ずつになった点だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●「カウンタックLP400S」には大きく差を付けられる

 現在この512BBは、新車時以来のオリジナルである黒ボディ/黒革インテリアが維持され、1970年代後半のフェラーリならではの魅力的なスタイリングを身に着けている。またキャビンでは、当時モノのブラウプンクト社製カセットデッキも確認できるだろう。

 近年、フェラーリ・クラシケの認証を受けて、完全なマッチングナンバーのドライブトレインを保持するとともに、よく保存された貴重な個体であることが確認されている。

 さらに、専用ジャッキや三角表示板をフィーチャーしたツールロール。フロントのトランク内にストラップ留めするツールキットとブリーフケース。スペアキーと歴史的なサービススタンプを備えたフェラーリ純正マニュアル。そしてフェラーリ・クラシケのレッドブックも合わせて販売されるとのことであった。

 この極上の512BBに対して、RMサザビーズ欧州本社が設定したエスティメートは25万−30万ユーロ(邦貨換算約3270万−3920万円)。

 そして高額落札が見込まれるこの種のロットとしては珍しく、リザーヴなしの売り切りでおこなわれた競売は、エスティメート下限を若干ながら上回る25万2500ユーロ、日本円に換算すれば約3300万円での落札となった。

 同じオークションに出品され、条件も比較的近いと思われる365GT4/BBがおよそ4600万円で落札、1300万円近い価格差がついたことになるのだが、それでも数年前にクラシック・フェラーリの価格がもっとも高騰した時代に比べれば、わりと穏当な価格の違いとも受けとれる。

 512BBよりも生産台数の少ない分だけ希少価値が高く、しかもピュアな成り立ちをもつ365GT4/BBの優位は、これからも変わることはないだろう。

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 それでは、同じオークションに出品されたランボルギーニ「カウンタック」の第2世代である「カウンタックLP400S」とは、どれくらい落札価格に差が出たのだろうか。

 こちらは1981年型で、43万2500ユーロ、日本円に換算すると約5550万円で落札されている。2倍まではいかないまでも、第一次スーパーカーブーム時代のアイドルは、カウンタックのほうが人気があるということであろう。逆にいうと、第一次スーパーカーブーム時代の2大巨頭のなかで512BBがもっとも入手しやすいということになる。