911キラーとしての側面も持ったアストンマーティン「V8ヴァンテージ」。このベイビー・アストンのユーズドカーは、初めてのアストンマーティンとしていま注目されています。

「いつかはアストン!」その夢を「V8ヴァンテージ」で叶えましょう

 2005年の正式リリースから17年を経たアストンマーティン「V8ヴァンテージ」は、現時点では「ヤングタイマー・クラシック」と呼ぶには少々若すぎるものの、そろそろ国内外のマーケットにおけるポジションを「ユーズドカー」から「コレクターズカー」に移行させようとしているかにも映る。

 今回は、クラシックカー/コレクターズカーのオークション業界における世界最大手、RMサザビーズ社が2021年12月1日−8日にオンライン限定でおこなったオークション「OPEN ROADS, DECEMBER」に同時出品された2台のV8ヴァンテージ。「クーペ」と「ロードスター」のオークションレビューをお届けすることしよう。

●「V8ヴァンテージ」とはどんなクルマなのか

 アストンマーティン「V8ヴァンテージ」は、2003年デトロイト・ショーにコンセプトカー「AM V8ヴァンテージ」が参考出品されたのち、2005年のジュネーヴ・ショーにて生産バージョンが正式リリースされた。

 総アルミ製スペースフレームは、その前年に登場した「DB9」で初採用されて以来、21世紀アストンの技術的シンボルのひとつとなってきた「VHアーキテクチャー」を踏襲、ホイールベースを短縮したものである。

 スリーサイズは全長4380mm、全幅1865mm、そして全高は1255mmとコンパクト。また、ボディパネルもすべてアルミニウム合金や複合素材とされた結果、車両重量は1630kg(本国仕様データ)に抑えられていた。

 フロントに搭載されるエンジンは、ジャガーの「AJ-V8」ユニットから発展したV型8気筒4カム32バルブ。デビュー当初の排気量は4.3リッターで、最高出力380psのスペックが与えられた。

 そして、トランスアクスル配置とされるトランスミッションは、デビュー時から用意されていた6速MTに加えて、2006年9月には6速のシングルクラッチ式2ペダルMT「スポーツシフト」も設定。いずれの変速機との組み合わせでも最高速280km/h、0−100km/h加速4.9秒という高性能をマークした。

 さらに2008年になるとエンジンが4.7リッターまで拡大され、パワーは420psに到達した。

いまが底値とも思える「V8ヴァンテージ」だが、手に入れるならMTを選択したほうが無難だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●2007年 アストンマーティン「V8ヴァンテージ」

 このほど「OPEN ROADS,DECEMBER」オークションに出品された1台目のV8ヴァンテージは2007年型のクーペ版。つまり4.3リッター時代の最終期にあたる1台である。

 黒曜石をイメージしたという「オブシディアンブラック(Obsidian Black)」に赤い本革レザーインテリアを組み合わせた仕様で、新車としてファクトリーからラインオフした時のままの純正18インチアロイホイールを履いている。

 一方タイヤやバッテリー、ドライブベルトとプーリー、運転席側のウインドウモーター、そしてフルード類は2019年1月に交換されたとのことで、オーナーズマニュアルにトリクル充電器、2019年までのサービスについての請求書も添付されている。

 2010年以降は現在のオーナーが所有しているが、これまでに走行した積算距離は8000マイル弱、つまり約1万2000kmというローマイレージ車で、その事実を裏づけるように内外装のコンディションも15年の車齢を思えば極上のひと言に尽きる。

 しかもこの個体は信頼性やサービス性の高さから、マーケットでは価格を上昇させる要素となるマニュアルトランスミッション車。これらの好条件も相まって、RMサザビーズ社では7万5000−8万ドル(邦貨換算約860万−910万円)という、かなり強気のエスティメートを提示した。

 しかし2021年12月上旬におこなわれたオンライン競売では、ビッドが進むことなく「No Sale(流札)」。現在では7万5000ドル、つまり約860万円で継続販売となっている。

400万円ほどで手に入れられるアストンマーティンとは

 今回の「OPEN ROADS,DECEMBER」オークションに出品されたもう1台のV8ヴァンテージは、2008年に初登録されたというロードスター。ただしエンジンは、4.7リッターに移行する直前のものである。

ここで紹介した「V8ヴァンテージ ロードスター」のように過走行、スポーツシフトという個体を選べば、かなり安い値段で手に入れることも可能だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 アストンマーティンV8ヴァンテージは、デビュー当初はクーペのみのラインナップだったが、2007年北米ロサンゼルス・ショーではロードスターも追加設定されていた。

 ソフトトップとその電動開閉機構をのぞく基本的なメカニズムは、クーペと変わらないもの。実はV8ヴァンテージの開発段階からクーペと並行して開発が進められていたそうで、単にルーフを切り取ったような不自然さはない。また、降ろしたソフトトップはスタイリッシュなカバーに収納され、オープン時にもクローズ時にも極めて美しいスタイリングを誇る。

●2008年 アストンマーティン「V8ヴァンテージ ロードスター」

 今回の出品車両は、2008年に新車として納車されて以来、現在に至るまでワンオーナー。

 美しいライトブルーメタリックのボディにダークブルーの本革レザーインテリアを組み合わせ、同じくダークブルーのソフトトップで仕上げた魅力的なリバリーの1台である。

 パワーユニットは、4.3リッターV8エンジン。2007年モデルから用意された6速シングルクラッチ式2ペダルMT「スポーツシフト」が組み合わせられている。

 スパルタンな「ロードスター」を名乗りつつもクリアなガラス製リアウインドウをもつ、対候性の高いコンバーチブルトップの電動機構も完調で、純正指定の7スポーク18インチアロイホイールを履く。

 そしてユーズドカーであれば気になるであろう走行距離は、カタログ作成の段階で10万7500マイル弱という数字が液晶式のオドメーターに刻まれていた。つまりキロメートル換算では、約17万3000km。日本の常識からするとちょっとした過走行車レベルなのだが、ほとんどのマイレージが高速道路で積算したものとのこと。

 たしかにカタログ写真を見る限りでは、17万km越えの走行距離を感じさせない内外装のコンディションを誇り、RMサザビーズの用意した「INSPECTION REPORT(査定報告)」でも、各パートのコンディションはまずまずのものであることが報告されている。

 このV8ヴァンテージ・ロードスターは、3万6300ドル、日本円に換算すると約410万円というリーズナブルなプライスで落札となった。

 一般的には同じV8ヴァンテージであっても、クーペよりはロードスターの方が若干ながら高値がつく事例が多く、しかも今回同じ「OPEN ROADS, DECEMBER」オークションに出品された黒いクーペよりも、わずか1年違いとはいえ年式も新しい。

 それでも約420万円という驚くほどに安価な落札価格となったのは、走行距離の大幅な違いに加えて、より信頼性やサービス性、あるいはクラッチ消耗の面でも不安要素のある「スポーツシフト」仕様であるか否かが大きく作用しているかにも感じられる。

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 いずれにしてもV8ヴァンテージは、日本国内のユーズドカー市場でもタマ数は少なくなく、初期の4.3リッター版であれば価格も500万円以下から見つけられるだろう。

 もちろん最終期に設定された「N420」などの限定バージョンや希少なマニュアル車であれば、1000万円近いプライスタグが付けられることもあるようだが、それでも将来にわたって一定の価値を維持することが予想される。

 つまり、本当にこのモデルを手に入れたいならば、今が買い時であるかにも思われるのだ。