ここ10年以上、世界中で地球温暖化による海面上昇が深刻だといわれ続けています。そこでフロリダ州マイアミに拠点を置くアークアップ社は、ボートで海面に住むという変わったライフスタイルを提案。ただし、そのボートが強烈でした。

あくまでも船なのに固定資産税を支払う必要がある?

 地球温暖化対策に適応した“住めるボート”として、アメリカ・フロリダ州マイアミを拠点に水上生活の提案をおこなっているのが「アークアップ社」だ。海面上昇が深刻化しているマイアミにおいて、ユニークかつ現実的(?)な提案として話題になった。

●土地に縛られることなく自由に住まう

 2019年に完成したボート「アークアップ」1号は、リビングルームやジムスペース、パティオが設けられているほか、4ベッドルームと4.5バスルームを備えた総面積2600スクエアフィート(241.5平米)、全長75フィート(22.86m)のボートだ。様々なニュースメディアに取り上げられただけでなく、NETFLIXの番組『世界で極める! 魅惑のバケーションレンタル(シーズン1:ボートの旅)』にも登場している。

 屋上に敷き詰められたソーラーパネルで太陽光発電をおこない、雨水を4000ガロンのタンクに集める浄水システムを完備。サステナブルな住めるボート“現代のノアの箱舟”として名を馳せている。あくまでもボートなので、太陽光発電で貯めた電力を用いて電動モーターを駆動させれば、最高速度5ノット(9.26km/h)で移動もできる。

 地球温暖化で海面が上昇しても順応できるし、オーナーの気分によって係留場所を変更すれば景色が変えられる、という画期的な住まいだ。アンカーも備えており、油圧式の支柱で固定することができる。

「アークアップ」は船なのか、それとも家なのか?

 当初、「550万ドル」で販売されていたようだが、2021年11月、新たなオーナーの手に330万ドル(邦貨換算約4億1400万円)で渡った。地元税務当局は510万ドルの“不動産評価”をし、新オーナーに固定資産税12万ドル(邦貨換算約1500万円)の支払い要求が出された。つまり、地元税務当局は、この“住めるボート”は「家」である、という判断を下したのだ。

格納式テラスを全開にした様子。外枠は強化ガラスとなっている(C)Arkup

●税務当局が下した判断は「家」

 アメリカの税率は州や郡によって異なる。フロリダの税金をパッと調べてみたところボートに関しては、売買時に課税されるとともに毎年、使用税として最高1万8000ドル(邦貨換算約220万円)が徴収される。ところがアークアップ1号はボートではなく家なので、12万ドルと高額になっている。

 アークアップ1号のオーナーは「マクナイト・インターナショナル」という海鮮加工会社の創業者。大富豪だ。2017年、ドミニカでハリケーン災害が起こった際はプライベートジェット5機をチャーターし、支援物資を送るような人物である。支払いには何ら問題ないのだろうが、不動産として評価されることが納得できない模様だ。

 アークアップ1号は、アメリカ湾岸警備隊に「娯楽用船舶」として登録されている。船舶の構成要件となっている動力源、アンカー、ナビゲーションシステム、アンカーライト、VHF無線、そしてライフジャケットも完備している。しかも2022年2月、査定に訪れた税務調査官たちを乗せて、ビスケーン湾を2時間の“クルーズ”に連れ出したという。

「アークアップは、水上移動を主目的とするボートではない」というのが地元税務当局側の主張だ。一方、アークアップ1号のオーナー側は、「これが不動産であれば、マイアミに数多く係留されたボートに住む人たちに対しても不動産として課税するのか?」と反論し、裁判に持ち込まれることになった。

 マクベス風にいうならば、「ボートなのか家なのか、それが問題だ」。個人的には下水をどう処理しているのか、そっちの方が気になる。

 なお、アークアップ1号は現在、マイアミのスター・アイランドに係留されている。Google Mapの航空写真では確認できないがスター・アイランド唯一の橋、ブリッジロードをストリートビューで見渡すと、その姿を確認できる。