SUV全盛のいま、ステーションワゴンを選ぶ意味は果たしてどこにあるのでしょう? ワゴン人気の高いドイツで磨かれたメルセデス・ベンツの定番モデル「Cクラス ステーションワゴン」をテキストに、ワゴンを選ぶ価値について考えます。

「いまさらワゴン」ではなく「あえてワゴン」

 日本でメルセデス・ベンツ「Cクラス」を購入する人の約3割が、セダンではなくステーションワゴンを選んでいるという。この数字が大きいのか小さいのか、それは受け取る人によって異なるだろうが、ワゴンがトレンドとはいいがたい昨今の市場動向を鑑みると、案外「多いな」と筆者は感じた。

 メルセデス・ベンツの本拠があるドイツでは、メルセデス・ベンツはもちろんのこと、フォルクスワーゲンやBMW、アウディなどの各ブランドにおいて、ワゴンが一定の人気を獲得している。その理由は、ドイツ人の習慣や彼の地の環境によるものが大きい。

 まずドイツの人は、長期休暇になるとバカンスへと出かける。それは1週間、ときには2週間を超えることも珍しくなく、愛車にたくさんの荷物を積み込んで目的地へと向かう。

 そして、バカンススポットへの移動には、高速道路の使用が欠かせない。ドイツの高速道路といえば、速度無制限の区間があることで知られるアウトバーンだ。多くのクルマが130km/h、なかには160km/h以上で巡行しているクルマも珍しくはない。そんな環境からか、SUVやミニバンのように背の高いクルマではなく、背の低いワゴンの安定感ある走りを好む人が多い。

 つまり、たくさん荷物を積める上、超高速域でも走りが安定しているというのが、ドイツでワゴン人気が根強い理由だ。そして、こうした市場動向は、メルセデスAMGやアウディのRSモデルなど、ワゴンに超高性能な仕様がラインナップされる要因にもなっている。SUV全盛の現代にあって、「いまさらワゴン」ではなく「あえてワゴン」というのがドイツのクルマ事情なのだ。

SUVに比べると背が低いこともあり、フットワークは軽快。セダンと遜色ないコーナリングを披露する

 一方、日本では、高速道路の巡航速度はドイツに比べてずっと低く、クルマのラゲッジスペースに収まらないほどの荷物を積み込んでバカンスへ出かける習慣もない。それでもセダンより実用的で、SUVより走行性能に優れるワゴンは、一定の人気をキープしつづけている。昨今、キャンプやスキーといったアウトドアレジャーが人気だが、そうした趣味の世界とマッチングがいいところも、日本でワゴンの魅力を見直される要因になっているようだ。

ワゴンらしく荷室の仕立てが素晴らしい

 新型Cクラスのステーションワゴンは、「さすがはメルセデス!」とうならされる出来栄えだった。

 運転席に座ると、視線の先には12.3インチのフルディスプレイメーターが、コックピットの中央には11.9インチの縦型タッチパネルディスプレイがそれぞれ鎮座する。先に上陸したセダンと同様、それらに多くの操作系を組み込むことで物理スイッチの数を減らしたコックピットは、クルマのものとは思えないほどの先進感に満ちている。

シンプルなレイアウトのコックピット。中央には11.9インチの縦型タッチパネルディスプレイがインストールされる

 物理スイッチを減らしすぎると操作性の悪化を招くケースもあるが、Cクラスはサンルーフの開閉さえも音声でおこなえるほど積極的に音声入力を活用することで、そうした弊害を最小限に抑えている。それはメルセデスの旗艦モデルである「Sクラス」に通じるコンセプトであり、オーナーの満足度を高める要素にもなっている。

 もちろん、ワゴンの真骨頂というべきラゲッジスペースの仕立ても素晴らしい。

 リアシート使用時でも490リッターが確保された荷室容量は、セダンのそれより35リッターほど大きい。さらに後席の背もたれを倒すと、フラットな1510リッターという広大なラゲッジスペースが現れる。ちなみに後席の背もたれは、両脇のスイッチを引くとワンタッチで倒せるなど使い勝手にも優れている。

リアシートの背もたれを倒すと、フラットな1510リッターのラゲッジスペースが現れる

 その上、荷室の利便性を高める、ユーザー思いの機能がいくつも盛り込まれている。たとえばトノカバーには、リアゲートを開くと連動して跳ね上がる仕掛けが盛り込まれていて荷物を出し入れしやすくなっていたり、リアピラーにランプが備わっていて暗い場所での荷物の出し入れをサポートしてくれたりと、さすがワゴンを“使いたおす国”で生まれたモデルだと感心させられる。

●力強さを一度味わうとガソリンエンジンには戻れない

 Cクラス ステーションワゴンのパワートレインは、1.5リッターガソリンターボの「C180」と、その高出力版の「C200」、そして2リッターディーゼルターボの「C220d」が用意される。いずれもマイルドハイブリッド仕様で、現時点では全グレードとも後輪駆動となる(4WDは派生モデルのクロスオーバーSUV「C220d 4マチック オールテレイン」に設定)。

 これらのうち、筆者がCクラス ステーションワゴンを購入するなら、迷うことなくディーゼルターボ仕様のC220dを選ぶ。エンジンは440Nmという大トルクをわずか1800回転から発生する強心臓で、発進時や追い越し時にアクセルペダルを深く踏み込まなくてもグイグイ前へと出ていく強力な加速は、一度味わうとガソリンエンジンには戻れなくなるほど。昨今はディーゼル車離れが進んでいるように思われがちだが、日本でCクラスを購入する人の約半分がディーゼル仕様を選んでいるのも納得の完成度である。

発進時や追い越し時にアクセルペダルを深く踏み込まなくてもグイグイ前へと出ていく。その強力な加速は、一度味わうとガソリンエンジンには戻れなくなるほどだ

 また、省燃費かつリーズナブルな燃料コストもC220dの魅力を後押しする。WLTCモード燃費(18.2km/L)に燃料タンク容量(66リットル)を掛けた理論上の航続距離が、1200kmを超えるという“アシの長さ”は魅力的。ロングドライブがつきもののアウトドアレジャーにおいても重宝することだろう。

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 ちなみに、アウトドアレジャーのアシとして使う場合、Cクラス ステーションワゴンの使い勝手は同セグメントのSUVである「GLC」を凌駕する。VDA計測による荷室容量こそ、Cクラス ステーションワゴンの490リッターに対し、GLCは500リッターをマークするが、荷室の奥行きに関しては、前者の方がGLCを約120mmも上回るからだ。

 そのため、テントのポールをはじめとする長めのレジャーギアを積み込むようなシーンでは、Cクラス ステーションワゴンの方がなにかと使い勝手がいい。流行りのSUVではなく、あえてワゴンを購入している人の多くは、こうしたメリットを評価しているのだろう。

●Mercedes-Benz C220d Stationwagon AVANTGARDE
メルセデス・ベンツ C220d ステーションワゴン アヴァンギャルド
・車両価格(消費税込):705万円
・全長:4785mm
・全幅:1820mm
・全高:1455mm
・ホイールベース:2865mm
・車両重量:1850kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼル+ターボ
・排気量:1992cc
・駆動方式:FR
・変速機:9速AT
・エンジン最高出力:200ps/3600rpm
・エンジン最大トルク:440Nm/1800〜2800rpm
・モーター最高出力:20ps
・モーター最大トルク:208Nm
・燃料消費率(WLTC):18.2km/L
・ラゲッジ容量:490〜1510L
・サスペンション:(前)4リンク式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/45R18、(後)245/40R18