2022年秋、レクサスの最量販モデル「RX」が5代目へと進化します。先ごろ公開されたプロトタイプや概要を元に、現代のSUV人気の立役者ともいうべきRXの進化のポイントを深掘りします。

SUVカテゴリーを再定義した初代モデル

 レクサスでもっとも売れているモデル「RX」が、2022年秋にフルモデルチェンジ。5代目へと進化を果たす予定だ。先ごろそのプロトタイプが公開された。

 さかのぼること四半世紀前の1997年。初代RXの誕生は高級SUVマーケットに大きな影響を与えた。当時のSUVといえば、悪路走行を前提に強靭なラダーフレームシャシや本格的な4WDシステムを組み合わせた無骨なモデルが一般的。“クロカン4駆”や“クロスカントリー4WD”と呼ばれたそれは、走行時の快適性や舗装路での操縦性など二の次だった。

 またクロカン4駆は、ルックスやインテリアも洗練されておらず、ラグジュアリーという言葉のかけらもなかった。しかし、当時はそれが当たり前だったため、誰も疑問など感じていなかったのだ。

 そんなマーケットに風穴を開けたのが、初代RXだ。SUVでありながらセダン系プラットフォームを採用するなど快適性を重視し、そこに高級セダンのように高級感あるインテリアをドッキング。悪路走破性はほぼ考えられていなかったが、乗り心地はよく快適で、日常的に使うクルマとしては好都合だった。クロカン4駆とはまったく異なる発想で、SUVというカテゴリーを再定義したのである。

 当時、レクサスブランドが展開されていなかった日本では、トヨタ「ハリアー」として販売され大ヒット。SUVの本場アメリカでも爆発的な人気を獲得する。ドロくささを排除した都会的でラグジュアリーなSUVという独自のコンセプトが、高く評価されたのだ。その証拠に、触発されたライバルたちも同様のモデルを開発・市販化。いまではSUVの定番スタイルとなっている。

 その後、3度のフルモデルチェンジを経たRXは、累計販売台数約350万台というレクサスの最量販モデルへと成長した。SUVの歴史を変えた初代RXは、まさに偉大な存在なのである。

新型が醸し出すエレガントな雰囲気は、尻下がりに見えるリア回りの造形に起因している

 そんなラグジュアリーSUVの先駆者であるRXが、2022年秋にフルモデルチェンジを予定。5代目へと進化する。それに先立ち、新型のデザインやメカニズムの概要が公開されたのだが、そのポテンシャルは想像以上。新型のメインテーマは“RXの再定義”といっても過言ではないほど、意欲的な進化をとげている。

 新型RXのシルエットは、基本的にキープコンセプトで、現行モデルの特徴だったリアピラー回りの意匠も継承している。しかし、フロントグリルの仕立てやボディサイドの抑揚の入れ方など、ディテールは現行モデルから一変した。

 フロントグリルは、レクサスの最新SUV「NX」や「LX」ともまったく異なるデザインで、グリルのフチの部分がグラデーションを描いているのが新しい。またボディサイドは、プレスラインを減らして面の美しさを強調しつつ、フロントドアの下からリアフェンダーへとボリュームが増していくダイナミックな造形を取り入れている。ちなみに新型RXが醸し出すエレガントな雰囲気は、尻下がりに見えるリア回りの造形に起因している。

 なおボディサイズは、現行モデルに比べて全長は同じながら、全幅は25mm広がり、全高は10mm下がっている。このワイド&ロー化と、60mmのホイールベース延長とがあいまって、美しいプロポーションに仕上がった。

従来型トヨタ式ハイブリッドからの脱却

 新型RXのメカニズムは、プラットフォームもパワートレインも刷新されている。とくに後者は、プラグインハイブリッドの「RX450h+」が用意されるほか、「RX500h」、「RX350h」というふたつのハイブリッド、さらに、モーターを組み合わせないエンジンのみの「RX350」が設定される。ポイントは、ハイリッド中心のラインナップになったことと、6気筒エンジンの設定がなくなりすべてのパワーユニットが4気筒エンジンベースとなったことである。

 なかでも興味深いのは、動力性能面で頂点に立つ「RX500h Fスポーツ パフォーマンス」のパワートレインだ。

新型は走る楽しさを追求したパフォーマンスグレード・RX500h Fスポーツ パフォーマンスを設定する

 エンジン自体には2.4リッターターボを採用し、トランスミッションには昨今のトヨタ式ハイブリッドでは見られなかったATをドッキングさせる。しかもこの6速ATは、一般的なトルクコンバーター式ではなくクラッチを組み合わせたタイプで、エンジンとモーターの間に挟んだクラッチが、走行時の状況に合わせてエンジンとモーターの使いわけやそれぞれの駆動力の統合をおこなう。

 ではなぜ、新型RXは従来のトヨタ式ハイブリッドとはまったく異なるシステムを設定したのか? それは、走行性能や走行フィールの改善に尽きる。

 以前に比べると大幅に改善されたものの、トヨタ式ハイブリッドはエンジン車よりも走りのダイレクト感に欠ける。それは、燃費追求を第一義とする効率重視の構造上、仕方のないことなのだが、新型RXに搭載される新しいハイブリッドシステムは、そうした流れを断ち切ったのである。

 新しいハイブリッドシステムは、効率を追求しつつもクラッチによる直結状態を活用した、ドライバーのアクセル操作に対して遅れなく鋭く反応することで、意のままに操れるというドライバビリティを提供してくれるに違いない。このダイレクトな走行フィールは、トヨタ式ハイブリッドカーの概念を変えるものである。

新ハイブリッドシステムは、リアに高出力モーターを搭載。DIRECT4との組み合わせにより、リア寄りの駆動力配分を実現する

●キツいダメ出しを受けた開発陣の逆襲

 RX500h Fスポーツ パフォーマンスでもうひとつ注目したいのは、電気自動車の「RZ」と同様に、電動化技術を活用した4輪駆動力システム“DIRECT4”と、リアに高出力のモーターを使った4WDであること。トヨタ式ハイブリッドの4WDは、リアタイヤの駆動力すべてをモーターがまかなうが、従来のそれは後輪用モーターの出力が控えめで、すべりやすい路面でのスタビリティを保つための、あくまで補助的な存在に過ぎなかった。

 一方、新ハイブリッドシステムのリアモーターは、コーナー脱出時に前後の駆動力配分をフロント20:リア80といった具合に、リアタイヤ寄りの駆動力配分にする。これにより、アクセルペダルを踏んでグイグイと曲がっていくような、後輪駆動車のようなハンドリングを提供しようというのだ。

 現行モデルまでのRXが走りの面で追求していたのは、あくまで快適性が中心。ドライバビリティや、ドライバーが楽しいと感じるような操縦感覚などは二の次だった。しかし開発の初期段階において、新型RXの試作車両をドライブしたレクサスのマスタードライバー・豊田章男社長は、テストコースを1周するなり「走りがつまらない」とキツいダメ出し。そこから開発陣は徹底的に新型の走りを磨いてきたという。

 そんな新型RXは、どのような走りの楽しさを身に着けているのか? 実車をドライブする日がいまから待ち遠しい。