アメリカで先行公開されていたトヨタ「GRカローラ」の日本仕様が先ごろ公開されました。「GRヤリス」とは異なる心臓部に、さらに過激なエボリューションモデル「モリゾウエディション」の設定など、発売前から話題盛りだくさんの注目モデルの魅力をご紹介します。

実はモータースポーツと縁が深いカローラ

「GRヤリス」のパワートレインを「カローラスポーツ」にドッキングさせたモデル……。「GRカローラ」をひと言で説明するならば、そんな表現が正しいだろう。

「カローラ」はいうまでもなくトヨタ自動車を代表する大衆車であり、1966年のデビュー以来、多くの人々に愛されてきたモデルだ。日本のみならず世界150以上の国と地域で販売される世界戦略車で、1997年には累計販売台数でフォルクスワーゲンの「ビートル」を凌駕。2021年には累計販売台数5000万台を突破した。ちなみにトヨタ自動車の豊田章男社長が初めて手に入れたクルマもカローラだったそうだ。

 そんなカローラにGRが手がける超高性能モデルが登場すると聞いたとき、とてもワクワクしたことを覚えている。なぜなら1973年に、トヨタが世界ラリー選手権で初優勝を飾ったときのマシンであったなど、実はカローラは世界のモータースポーツシーンで活躍してきたクルマでもあるからだ。そんなカローラのGRモデルともなれば、楽しくないはずがない。

 2022年秋の発売に先立ち、先ごろ基本スペックとともに公開された日本仕様のGRカローラ。5ドアハッチバックのカローラスポーツをベースに仕立てられたそれは、“ちょっとスポーティなカローラ”といったレベルではない。とことん鍛え上げられたアスリートといってもいい仕上がりだ。

 エクステリアは、片側3cmずつ張り出したフェンダーにより野性味があふれ、ルーフパネルは軽量化のためにカーボン製を採用。見た目からポテンシャルの高さをアピールする。

片側3cmずつ張り出したフェンダーにより、野性味がアップしたエクステリア。ルーフパネルは軽量化のためカーボン製を採用する

 さらに製造においては、エンジンは手組み、車体は“GRファクトリー”と呼ばれるスポーツモデル専用の少量生産ラインにて、匠たちが手作業に近い方式でおこなう。エンジン内部やサスペンションのパーツなどは公差と呼ばれる製造上の誤差を計測し、バランスのいいものどうしを組み合わせて搭載するという、性能を上げるための特別な手法が取り入れられている。

「野性味が足りない」のゲキにパワーアップを決断

 GRカローラのエンジンは、GRヤリスにも搭載される“GR専用”の1.6リッター3気筒ターボ。そこに、6速MTのトランスミッションと、スポーツモデル専用に開発されたドライバビリティ重視の4WDシステム“GR-FOUR”を組み合わせる。

モリゾウからのダメ出しを受け、パワー向上へと舵を切った開発陣。GRヤリスのエンジンに対し、ターボチャージャーの過給圧アップなどをおこなった

 ただし、パワートレインにおいてはGRヤリスと異なる部分がある。エンジンのスペックが異なるのだ。GRヤリスは最高出力が272psであるのに対し、GRカローラは304psと32psの出力アップを果たしている。

 開発陣によると「当初はGRヤリスと同じ272psのエンジンを搭載する予定だった」という。しかし、開発初期段階の試作車に試乗したGRのマスタードライバー・モリゾウ(豊田社長がドライバーとして活動する際の別名)は、「野性味が足りない」とキツいダメ出し。そもそも開発陣も、GRヤリスと同じエンジンを積むことにモヤモヤした気持ちを抱いていたことから、エンジンをパワーアップさせる方向へと舵を切ったのだという。開発中にエンジン出力を当初のプランから変更するなんて、かつてのトヨタでは考えられなかったことである。

 紆余曲折を経て完成したG16E型エンジンは、GRヤリス用に対してターボチャージャーの過給圧を高めるなどによりパワーアップを達成。それに対応すべく、ピストンなど一部のパーツを強化品へとスイッチしている。

 ちなみに強化ピストンは、国内レースのスーパー耐久選手権に参戦し、水素を燃料として走らせるなど話題を集めている“水素カローラ”用のものを流用しているのだとか。そもそも304ps仕様のエンジンは、モータースポーツ向けに開発されたもの。GRカローラの心臓部はまさに、レースからフィードバックされたものなのだ。

 もうひとつ興味深いのは、GRカローラの特徴のひとつとなっている3本出しのマフラー。マフラーの構造規則や音量の制約がゆるいレース用マシンでは問題ないが、市販車用として考えると、GRヤリスのような2本出しのままでは排気抵抗が大きく、G16E型エンジンで304psを発生させるのは難しかったという。そこで開発陣は、マフラーのパイプを増やすことで所期の目標を達成。つまり見た目からではなく、性能追求のための3本出しなのである。

 そしてこの3本出しマフラーには、中央のパイプに電子制御のバルブが組み込まれている。騒音規制に影響のないアイドリング付近ではそれを解放。騒音を計測するエンジン回転数付近ではバルブを閉じて排気音を静かにし、そして回転が上がると再び解放してパフォーマンスを発揮させるよう制御されている。昨今、走行時の音量規制が高性能モデルの悩みのタネになっているが、今後はこうした電子制御バルブを活用したマフラーが増えそうだ。

GRカローラのエボモデル「モリゾウエディション」

 そんなGRカローラ日本仕様のお披露目に際して、ちょっとしたサプライズがあった。なんと、軽量化のためにリアシートまで取り外したスペシャルモデルの存在が明らかにされたのだ。

GRカローラ日本仕様のお披露目に合わせて公開されたモリゾウエディション

 GRカローラのエボリューションモデルともいうべき「モリゾウエディション」は、リアドアのウインドウが固定式となり、リアワイパーが省かれるなど軽量化を徹底。スタンダードなGRカローラに対し、30kgの軽量化を実現している。

 さらにエンジンの最大トルクは、370Nmから400Nmへとアップ。加えて、ボディのさらなる強化、ギヤ比の変更、専用シートの採用、専用のサスペンションセッティングとタイヤ幅の拡大などにより、走りのパフォーマンスを大幅に向上させている。とくにコーナリング性能の向上は著しく、富士スピードウェイのラップタイムは2分を切るという。

 開発陣によると「モリゾウエディションは限界がより高く、研ぎ澄まされた走りの持ち主。サーキットではレーシングカーのようなフィーリングを味わえる」とのこと。一方のスタンダートモデルは、「荷重移動がしやすくてクルマの動きがスムーズ。峠道などはこちらの仕様の方がドライビングを楽しめる」と説明する。

 いずれにせよ、あのトヨタが5ドアハッチバックにもかかわらず、リアシートのない2シーターモデルを市販するなんて、その攻めた商品企画に驚くばかりだ。

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「GRスープラ」にはじまり、GRヤリス、「GR86」と続々とラインナップを拡充しているGRのスポーツカーだが、GRカローラはそれらで唯一の5ドアモデルとなる。そういう意味では、GRモデルの間口を広げる重要なモデルといえるだろう。

 発売は2022年秋を予定。1日も早くステアリングを握れる日が来るのが待ち遠しい。それくらいGRカローラの中身と走りは本物だ。

●Toyota GR Corolla RZ
トヨタ GRカローラ RZ(日本仕様/開発目標値)
・全長:4410mm
・全幅:1850mm
・全高:1480mm(アンテナ含む)
・ホイールベース:2640mm
・車両重量:1470kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHC+ターボ
・排気量:1618cc
・駆動方式:4WD
・最高出力:304ps/6500rpm
・最大トルク:370Nm/3000−5550rpm
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/40R18、(後)235/40R18

●Toyota GR Corolla MORIZO EDITION
トヨタ GRカローラ モリゾウエディション(日本仕様/開発目標値)
・全長:4410mm
・全幅:1850mm
・全高:1475mm(アンテナ含む)
・ホイールベース:2640mm
・車両重量:1440kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHC+ターボ
・排気量:1618cc
・駆動方式:4WD
・最高出力:304ps/6500rpm
・最大トルク:400Nm/3250−4600rpm
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)245/40R18、(後)245/40R18