トヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」は、トヨタとスバルの共同開発によって生まれた電気自動車。その量産モデルをリアルワールドで比較試乗しました。2台の特徴を浮き彫りにするとともに、それぞれどんな人とマッチングがいいのかについて分析します。

わずかながらも感じられた走りの方向性の違い

 トヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」は、オリジナルのボディを与えられたEV(電気自動車)専用モデルだ。

 この2台は両社のエンジニアが“ワンチーム”となって共同開発し、シャシやパワートレインをはじめとするメカニズムの大半を共用。両モデルの違いは、エクステリアデザインの一部、若干の装備、そして4WD車の乗り味などに限られる。

 そんなbZ4Xとソルテラを、今回、名古屋から金沢までのルートで比較試乗することができた。これまでサーキットや雪上の特設コースでプロトタイプを“お試し”したことはあったが、リアルワールドでドライブするのは今回が初めてだ。

 ちなみに試乗車は、bZ4X、ソルテラともに4WD仕様で、電動パワーステアリングやサスペンションのセッティング違いにより、異なる乗り味が与えられたとされる2台である。ただし今回の2台は、bZ4Xが18インチ、ソルテラが20インチと、タイヤ&ホイールの条件が異なっていたことを先にお断りしておく。

 さて、名古屋から金沢まで、約350kmのルートで2台を比較試乗した結論は、確かにドライブフィールに違いはあるものの、その差はごくわずか、というものだ。

 とはいえ、よりシャープなハンドリングを狙ったソルテラは、わずかながらサスペンションが締め上げられており、その分、ドライバーがステアリングを切れば切っただけ、素直かつ機敏に向きを変えてくれる印象。対するbZ4Xのハンドリングは全体的におだやかな印象ながら、小さなコーナーがつづくワインディングでは軽快なフットワークを味わわせてくれるという、懐の深さを持ち合わせている。

 bZ4Xは快適さ、しなやかさ、適度なスポーティさがバランスされた印象で、ソルテラはダイレクト感が強調され、全域でスポーティなフィーリング。この方向性の違いは、タイヤ&ホイールのサイズが同じでも変わることはなさそうだ。

EV所有のハードルを下げたトヨタとbZ4X

 ここからは、そんな異なるドライブフィールを持つbZ4Xとソルテラが、どんな人と好相性なのかについてチェックしたい。

ハイテク感ただようフロントマスクが印象的なbZ4Xだが、思いのほか古い街並みにも溶け込む

 bZ4Xとソルテラでもっとも異なる部分は、販売方法である。ソルテラが一般的な販売方法をとるのに対し、bZ4Xは個人ユーザーに対する通常の販売はなく、サブスクリプション、つまりリースのみとなる。

 カーリースの代金には、車両本体に加えて税金やメンテナンス費用、さらには任意保険まで含んでおり、毎月一定額を支払いながら“利用権を得る”。bZ4Xのそれはトヨタのサブスクである「KINTO(キント)」を通じて提供されるが、駐車場代と走行に必要な電気代、そして有料道路の料金以外はすべて、毎月の利用料に含まれると考えていい。すり減ったタイヤの交換費用でさえ、別途発生しないのだ。

 所有するのではなく“利用権を得る”というサブスクのスタイルは、実はEVと好相性。なぜならEVの購入には、さまざまな不安要素があるからだ。

 その一例が、走行用バッテリーの経年劣化だ。現状のEVは、バッテリーの劣化という不安を払拭できずにいる。しかしKINTOを使ってbZ4Xに乗る場合、一般的な保障範囲を大きく超える“10年20万km走行まで、バッテリー容量の70%を保証”という条件が付帯され、劣化が激しい場合は無料で交換もしてもらえる。これはユーザーに対し、大きな安心をもたらしてくれるだろう。

 また、リセールバリューの心配からも解放される。残念ながらEVは、現在のところ手放すときの下取り価格などがエンジン車に比べて安くなりがちで、次のクルマへと乗り換える際の実質的な支払額が、エンジン車やハイブリッドカーに比べて割高になってしまう。しかし、毎月定額で乗れるサブスクならリセールバリューの不安もない。

 つまりトヨタは、「EVはバッテリー劣化が不安」とか「EVはリセールバリューが不安」といったEVのネガを解消し、ユーザーが安心してbZ4Xに乗れるシステムを提供してきたのである。一部には「KINTO限定のため購入の自由度がない」という声もあるが、それよりもトヨタは、bZ4Xを通じて、ユーザーが不安なくEVに乗れるシステムづくりにもチャレンジしているのだ。

 ちなみにKINTOには、車両保険まで含めた任意保険料が月額利用料に含まれている。そのため、任意保険料が驚くほど高額な、はじめてクルマを所有する人は若い人ほど、KINTOを選ぶメリットがより大きいと感じることだろう。

 一方、「クルマは自分名義で所有しないとイヤだ」という人には、ソルテラをおすすめする。リース扱いのbZ4Xは、手元に置いて占有できてもあくまで“借り物”に過ぎず、車検証の所有者欄にも“株式会社KINTO”と記載される。対するソルテラは、ローンを利用せずに購入した場合、あくまで所有者はオーナー自身。あくまで紙の上の違いに過ぎないが、そこを気にする人はbZ4Xという選択肢はないだろう。

スバル車ならではのこだわりが光るソルテラ

 また、スバル車のこだわりに共感するスバルファンも、bZ4Xという選択肢はないはずだ。

おごそかな合掌づくりの建物の前でも存在感を放つソルテラ

 先述したように、専用のパワーステアリング制御とサスペンション設定が与えられたソルテラは、ハンドリングフィールがスバル車らしくシャープな上、3モード(bZ4Xは2モード)のドライブモード切り替えと、回生ブレーキの強さを調整できるパドルを使って、より意のままの走りを楽しめる。

 また、bZ4Xのそれより発熱範囲の広いフロントシートヒーターや、bZ4Xには設定のないリアシートヒーターの全グレード採用、さらに、最上級グレードへのハーマン/カードン製プレミアムオーディオの搭載など、従来のスバル車の延長線上にある“トヨタとの違い”が盛り込まれる。おまけに、イグニッションを切り忘れた際の警告音など、全領域においてbZ4Xとは異なる“スバルの音”が採用されるなど、スバル車らしさをより実感できるのだ。スバリストは迷わず、ソルテラを選ぶべきだ。

* * *

 結論。トヨタのbZ4Xにマッチする人、それはEVであっても安心感を持って乗りたい人。EV購入や所有にまつわる不安を払拭した点や、おだやかで懐の深さを備えるドライブフィールはきっと多くの人が満足するはずだ。

 対するソルテラと好相性なのは、やはりスバルのクルマづくりに共感するスバリスト。所有することに不安のあるEVでも自分名義で乗りたいという人も、bZ4Xという選択肢はない。

●Toyota bZ4X Z(4WD)
トヨタ bZ4X Z(4WD)
・月額利用料(消費税込):10万7800円/月(補助金適用なしの場合)
・全長:4690mm
・全幅:1860mm
・全高:1650mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2010kg
・駆動方式:4WD
・電気モーター:交流同期電動機
・最高出力:(前)80kW(109ps)、(後)80kW(109ps)
・最大トルク:(前)169Nm、(後)169Nm
・駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
・総電力量:71.4kWh
・1充電走行距離(WLTC):540km
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/60R18、(後)235/60R18

●Subaru Solterra ET-HS
スバル ソルテラET-HS
・価格(消費税込):682万円
・全長:4690mm
・全幅:1860mm
・全高:1650mm
・ホイールベース:2850mm
・車両重量:2030kg
・駆動方式:4WD
・電気モーター:交流同期電動機
・最高出力:(前)80kW(109ps)、(後)80kW(109ps)
・最大トルク:(前)169Nm、(後)169Nm
・駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
・総電力量:71.4kWh
・1充電走行距離(WLTC):487km
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)ダブルウィッシュボーン式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/50R20、(後)235/50R20