欧州で先行お披露目されたときから注目を集めてきたマツダ「CX-60」。いよいよ2022年6月24日、日本での受注が正式にスタートします。それを前に、いち早く“仮注文書”にサインしたのは、自動車ライターの工藤貴宏さん。まだ実車をドライブしていないCX-60を、ガレージに迎え入れる決断をした理由を報告してくれます。

直6ディーゼルと新しいシャシはやはり魅力的

“ラージアーキテクチャー”と呼ばれる、新開発のプラットフォームを使った初のモデルとしてデビューしたマツダ「CX-60」。なにを隠そう筆者は、そんな話題のモデルをすでにオーダーしたひとりである。

 なぜ、まだデリバリーもはじまっていないCX-60を契約することにしたのか? 今回はその3つの理由についてご報告しよう。

 ひとつ目の理由は、直列6気筒ディーゼルターボエンジンの魅力を味わいたかったからだ。

 マツダによると、ディーゼルエンジンに乗っているユーザーの6割以上は、次もディーゼルエンジン車へと乗り換えるらしい。筆者もまさにそのひとりだ。

 現在の愛車は、2.2リッターディーゼルターボを搭載するマツダ「CX-5」。そのトルクフルな走りと燃費のよさ、そして燃料代の安さに起因するランニングコストの低さには大いに満足させられてきた。となれば「次もディーゼルで!」と考えるのは当然の成り行きである。

 ディーゼルエンジンはウィークポイントとして、振動やノイズの問題が挙げられる。振動に関しては、マツダの2.2リッターディーゼルターボはよく抑えられているのでまったく気にならないが、ディーゼル特有のノイズはたしかにゼロとはいえない。しかし、慣れてしまえばその音も気にならないレベルであり、再びディーゼル車を選ぶことに一切の抵抗はなかった。

 しかもCX-60のディーゼルエンジンは、CX-5の4気筒とは違って6気筒だ。なめらかさをはじめとする6気筒ディーゼルの素晴らしさは、これまでもメルセデス・ベンツやBMWのそれで味わってきた。マツダが6気筒ディーゼルを新規開発したとなれば、興味がわかないはずがない。

CX-60 XD Lパッケージが搭載する3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボ

 ふたつ目の理由は、後輪駆動ならではのドライブフィールを楽しみたかったからである。

 輸入車、なかでもヨーロッパのプレミアムブランドには、メルセデス・ベンツ「GLC」やBMW「X3」といった後輪駆動ベースのSUVが存在する。しかしその他のモデル、とくに日本車に目を向けると、これまで乗ってきたCX-5はもちろんのこと、トヨタの「ハリアー」や「RAV4」、日産の「エクストレイル」、三菱「アウトランダー」など、前輪駆動ベースのモデルが一般的だ。そんななかマツダは、後輪駆動ベースのプラットフォーム採用へと舵を切った。

 その背景には、環境性能と走りを両立するため、とか、北米マーケットでは6気筒エンジンの方がユーザーにウケるから、といったメーカーサイドの事情があるものの、かつてスポーツカーでワインディングでのドライブを日々楽しんでいた筆者には、後輪駆動という響きはあまりにも魅惑的だった。きっとCX-60も、最高のドライビングプレジャーを味わわせてくれるに違いない。

知れば知るほどCX-60は買い得感が高い

 そして最後の理由は、CX-5からの乗り換えがしやすかったからである。

CX-60 XD Lパッケージのフロントスタイル

 味わい深い直6ディーゼルを搭載し、後輪駆動ベースのプラットフォームを採用するCX-60。しかし、上級シフトしたモデルであるため、現在乗っているCX-5と比べると、どうしても価格アップが避けられない。そのため、CX-60がいかに魅力的でも、簡単には手を出せない、と思っていた。

 実際、上級グレードである「XD Lパッケージ」どうしで比べてみると、CX-5は前輪駆動モデルで352万円なのに対し、CX-60は後輪駆動で400万4000円と、50万円ほどの価格差がある。

 たしかにCX-60は、プラス2気筒となったエンジンのコストアップが大きいだろうし、先進安全装備も確実にグレードアップ。さらに、上級グレードではメーターパネルがフル液晶化され、センターディスプレイも大型化、加えて、CX-5にはない電動のステアリング調整機能も備わっている。タイヤだって、20インチへとアップしているのだ。これらクルマの内容を考慮すれば、50万円アップなど当然のことだと思う。

 ただ見方を変えれば、高コストの直列6気筒ディーゼルを搭載し、これだけ装備が充実しているにもかかわらず、ほぼ400万円で手に入れられるというのは、輸入車などに比べればはるかにコスパが高い。その中身を知れば知るほど、CX-60は買い得なモデルなのだ。

 とはいえ、いくらコストパフォーマンスに優れていても、ない袖は振れない。だからあきらめかけていたのだが……見積もり書をもらってみると、なんとサプライズが起きた。残価設定ローンの月々の支払い額が、想像を超える魅力的な金額だったのだ。それを見て筆者は、迷わず注文書にサインした。

●マツダ地獄からの完全脱却を実感

 CX-60の月々の支払い額が抑えられた秘密は、現在乗っているCX-5の下取り査定が驚くほど高かったからだ。

 下取り車の査定額はクルマのコンディションによって左右されるため一概にはいえないが、残価設定ローンを利用していた筆者の場合、当初設定されていた残価額を査定額が大きく上回った。その分を頭金に充当し、CX-5と同条件でローンを組んだ場合、月々の支払額はCX-60の方が安くなるという逆転現象も起きたのである。

 実はこうした“買いやすさ”も、マツダの戦略のひとつなのだ。かつて“マツダ地獄”とうたわれた時代の反省を踏まえ、2012年以降に発売された新型車では、オーナーが手放す際の査定額、いわばクルマの資産価値をマツダは重視してきた。これこそが、マツダがいうところの“プレミアム化”の功績であり、当然CX-60も、同様の価値を持ったクルマになることを目指して開発が進められてきた。

 つまり、イマドキのマツダ車は中古車相場が高くなった結果、乗り換え時の下取り査定額がアップ。結果的にマツダ車オーナーは、次も積極的にマツダ車を選びたくなるという仕組みになっているのだ。筆者はそんなマツダの戦略に、見事にはまったようである。