メルセデスAMG「EQE53 4MATIC+」は、メルセデス・ベンツのセダン型の電気自動車(EV)「EQE」をベースにしたAMGモデルです。実際どのようなクルマなのでしょうか。モータージャーナリスト島下泰久氏が海外で試乗しました。

AMGダイナミックプラスパッケージ装着車はトータル687馬力・1000Nmを発生

 まだメルセデス・ベンツ「EQE」すら日本には上陸していないのに、本国ではそれをベースにしたAMGモデルが早くも登場です。

 今回、フランスでステアリングを握ってきたのはメルセデスAMG「EQE53 4MATIC+」です。

 その名から想像できるとおり、「Eクラス」のBEV版というべき存在のEQEは、ノーズが短く、ホイールベースを長く取ったキャビンフォワードの前衛的なフォルムを持つセダンです。

 メルセデス・ベンツがBEV専用に開発した「EVA2」プラットフォームを採用。電気モーターはエントリーモデルの「EQE350+」ではリアに、上位グレードの「EQE500 4MATIC」では前後に搭載されています。

 メルセデスAMG EQE53 4MATIC+は、高出力化に対応したAMG車専用の電気モーターを前後に2基搭載して、標準仕様でも最高出力626馬力、最大トルク950Nmという強力なスペックを獲得。さらに、今回試乗したたオプションの「AMG ダイナミック プラス パッケージ」装着車では、それぞれ687馬力、1000Nmにまで達します。

 その結果、0-100km/h加速は3.3秒を実現。最高速は240km/hとなりますが、これはリミッターで制限された数値なので、実力はおそらくそれ以上となります。

 このポテンシャル向上に合わせて、シャシには伸び側と縮み側の減衰力を独立してコントロールできる電子制御式ダンパーを採用して、エアサスペンションと組み合わせています。また、リアアクスルキャリアとボディの締結剛性を高めるためマウントの剛性を50%強化。最大で3.6度の切れ角を持つリアホイールステアも搭載しました。

 そのタイヤは標準が20インチ。試乗車はオプションの21インチとされていました。銘柄はスポーツBEV専用設計のミシュラン パイロットスポーツEVです。ホイールは空力性能を重視したもので、一見スポークデザインですが、よく見るとディッシュ状になっています。

 元々のフォルムからして個性的、未来的なEQEのエクステリアですが、このクルマでは縦スリット入りのブラックパネルグリル、専用の前後バンパーやエアロパーツなどのいわば定番のアイテムを装着することで、いつものAMGらしい精悍な仕立てとされています。

 しかもこれらは単なるデザインではなく、たとえば大型リアスポイラーはドラッグを増やすことなくリアの浮き上がりを抑えているなど、機能に即したデザインとされているのです。

 インテリアもやはり定番の黒基調に赤いステッチというコーディネート。違うのは素材で、本革とバックスキンの代わりに合成皮革のARTICO、マイクロファイバーのMICROCUTが使われています。これはヴィーガンレザーという最近のトレンドに則ったものですが、オプションではナッパレザーも用意されていますので、念の為。

荒々しさはなくスムーズで上質なクルマ

 出力数値、動力性能は凄まじいものがあるメルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ですが、街中を走り出しての最初の印象に荒々しさは無く、むしろとてもスムーズで上質なクルマだと感じられました。

メルセデスAMG「EQE53 4MATIC+」のインテリア

 デフォルトのコンフォートモードでは、最高出力の80%しか出ない設定となっていて、またアクセル操作に対する反応も穏やかに躾けられているので、想像以上に飛び出してしまうようなことはなく、むしろ豊かなトルクを活かしてゆったり行くことが可能です。

 乗り心地も上々。初期の当たりの強さに少しだけ21インチタイヤの存在を意識させられますが、剛性感に満ちてかつ質量のあるボディを土台にサスペンションがしなやかに動くおかげで、とても快適です。

 道が開けてきたら本領を発揮させるべく、100%のパワーを解き放つことができるSPORT+モードにセット。アクセルを深く踏み込むと、それでも決して乱暴ではなく、けれど分厚いトルクが湧き出してきて、あっという間に速度を高めていくことができます。

 その時にエンジン音に代わって鳴り響く、AMGサウンドエクスペリエンスによる電子音はSF映画やゲームか何かのようで賛否が分かれること必至ですが、もちろんオフにすることも可能。更に、OTAで音色を増やすこともできるので、将来的には皆がメルセデスAMGにイメージするような、より本物っぽいサウンドを手に入れることもできるかもしれません。

 唸らされるのはフットワークの良さで、操舵に対して素直に反応する操縦性は、全長5mに迫り、3120mmというホイールベースを持つセダンとは思えないほど。

 重心が低く、前後重量配分も良好という素性の良さが効いているのは間違いありませんし、サスペンション、タイヤ、後輪操舵含む各種電子デバイスの連携も巧みなのは、やはりさすがメルセデスAMGというところでしょうか。

 もっとも車重自体は2.5トン超と重く、ブレーキング時などにもその影響が顔を出すこともあります。とはいえ、ワインディングロードでは常に全開というクルマではないと思いますので、大きな問題ではない……はずです。

 BEVになってもそのダイナミクス性能は、紛れもないメルセデスAMGという仕上がりのメルセデスAMG EQE 53 4MATIC+。ハイパフォーマンスBEVを購入候補にあげているにとっては新たな、有力な選択肢の登場であることは間違いありませんが、これまでのファンにしてみれば、そのサウンド、そしてデザインが実際どうなのかが気になるところだと思います。

 嬉しいことに日本導入は、さほど遠くないとのこと。実際にその感触を確かめられるのは、もうすぐのはずです。