待望のデビューを果たした日産自動車の新型「エクストレイル」。日本仕様に搭載される“ターボe-POWER”が生み出す走りは、まさに驚きの連続でした。

第2世代e-POWERは発電担当のエンジンが大幅進化

 ついに登場した日産自動車の新型「エクストレイル」。そのプロトタイプをテストコースでドライブする機会を得た。

 日本仕様の新型エクストレイルに用意されるパワーユニットは、日産独自のハイブリッド“e-POWER”のみ。エクストレイルは以前もハイブリッド仕様を設定していたが、新型のそれはまったく新しいシステムとなった。

 さらに驚くのは、e-POWER自体の“中身”がガラリと変わったこと。従来のそれとは完全に異なる“夢のエンジン”を組み合わせてきたのである。

「ノート」や「キックス」、「セレナ」に搭載される従来型e-POWERは、1.2リッター3気筒の自然吸気エンジンを組み合わせる。しかし、新型エクストレイルに搭載される第2世代e-POWERは、気筒数こそ同じ3気筒ながら、排気量を1.5リッターへと拡大。さらにターボチャージャーをプラスしている。

 さらにスゴいのはここからだ。なんとエンジン自体を、日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジン“VC(Variable Compression=可変圧縮)ターボエンジン”としてきたのである。

 エンジンは爆発する際、ガソリンと空気を圧縮する工程が不可欠。その際、どれだけ圧縮するか=圧縮比によって、特性が変わるのだ。普通のエンジンでは、この圧縮比が一定だが、VCターボエンジンはクランクシャフト回りに特別な機構を備えることで、圧縮比を低圧縮の8:1から高圧縮の14:1まで、自在に変化させることを可能にした。

 これによりVCターボエンジンは、ハイパワー(=低圧縮&ハイブースト)と省燃費(=高圧縮&ローブースト)を両立。そんなふたつの美点を兼ね備えた“夢のエンジン”を、今回、日産はe-POWERに組み合わせてきたのである。

●“ターボe-POWER”の最高速度は200km/hに到達

 凝りに凝ったパワーユニットを搭載する新型エクストレイル。そのプロトタイプを実際にドライブしてまず感心したのは、加速の力強さだ。

 e-POWERのシステム上、エンジンは発電のみを受け持ち、エンジンで発電した電気を使ってモーターで駆動する。そのためe-POWERは、電気自動車のようにアクセルレスポンスがよく、加速もスムーズかつシャープ。それら本来の特徴を継承しながら、新型エクストレイルに採用された第2世代のe-POWERは、加速力が格段に力強くなっている。

 その秘密はモーターにある。最大トルクは、前輪用がノートe-POWERの約1.2倍、後輪用が同約1.9倍と強力。それが加速時の力強さとなり、グングンと加速していく。また、そうした力強い加速を長く維持できるのも、第2世代e-POWERの強みとなっている。余談だが、新型エクストレイルは最高速度が200km/hに達する俊足の持ち主だ(日本仕様は180km/hでリミッターが作動)。

 さらに驚いたのは、新型エクストレイルの圧倒的な静粛性だ。おとなしく走っていると、エンジンはほとんど始動せず、モーターだけで走るため、当然のことながら静粛性に優れる。これは普通のハイブリッドでも味わえる美点であるが、新型エクストレイルはさらに、アクセル全開時も静かなのだ。

 これはハイブリッドとしても異例のことだ。停止状態から床までアクセルペダルを踏み込んで全開加速をすると、普通はハイブリッドカーでもエンジン回転数が高まり、エンジンノイズがうるさく感じられる。しかし、新型エクストレイルは、耳を疑うほどエンジン音が抑えられているのである。正直、「全開加速なのに、こんなに静かでいいの?」と不思議に思ったほどだ。

 実はこれも、VCターボエンジン採用のメリットだという。VCターボエンジンは低速域からトルクが豊かなため、回転数を極端に上げなくても必要なパワーを得られる。その分、回転数を極端に上げずに済むため、ノイズが大きくならないのだ。

 また、仮にエンジン回転数が高まった場合でも、VCターボエンジンはV6エンジンのようなサウンドを響かせるから、ちっとも不快じゃない。VCターボエンジンを組み合わせた第2世代e-POWERは、動力性能面でも快適性の面でもハイレベルなパワーユニットだ。

* * *

 新型エクストレイルの日本仕様は、海外向けには設定のあるピュアエンジン車を用意せず、e-POWERだけで勝負してきた。ピュアエンジン車はe-POWERよりも販売価格を下げられることから、もし設定すれば購入層を広げることができたはずだ。

 しかし日産の開発陣は、その手法を選ばなかった。「パワートレインは各地のマーケットに合わせて選択する」と彼らは説明するが、ハイブリッド車が一般的になった日本市場においては、本格SUVのエクストレイルであってもe-POWER 1本で勝負できると踏んだのだろう。

 そんな日産のねらいがビジネス的に成功するか否かは、もう少し時間が経ってみないとわからない。だがいずれにせよ、VCターボエンジンを組み合わせた第2世代e-POWERのポテンシャルが高いことだけは間違いない。加速時の爽快感、そして、静粛性の高さがもたらす優れた快適性は、新型エクストレイルの大きな武器となりそうだ。

●NISSAN X-TRAIL G e-4ORCE
日産 エクストレイル G e-4ORCE
・車両価格(消費税込):449万9000円
・全長:4660mm
・全幅:1840mm
・全高:1720mm
・ホイールベース:2705mm
・車両重量:1880kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHC+ターボ
・排気量:1497cc
・駆動方式:4WD
・エンジン最高出力:106kW/4400〜5000rpm
・エンジン最大トルク:250Nm/2400〜4000rpm
・フロントモーター最高出力:150kW/4501〜7422rpm
・フロントモーター最大トルク:330Nm/0〜3505rpm
・リアモーター最高出力:100kW/4897〜9504rpm
・リアモーター最大トルク:195Nm/0〜4897rpm
・燃料消費率(WLTC):18.4km/L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/55R19、(後)235/55R19

●NISSAN X-TRAIL X e-4ORCE
日産 エクストレイル X e-4ORCE
・車両価格(消費税込):379万9400円
・全長:4660mm
・全幅:1840mm
・全高:1720mm
・ホイールベース:2705mm
・車両重量:1850kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHC+ターボ
・排気量:1497cc
・駆動方式:4WD
・エンジン最高出力:106kW/4400〜5000rpm
・エンジン最大トルク:250Nm/2400〜4000rpm
・フロントモーター最高出力:150kW/4501〜7422rpm
・フロントモーター最大トルク:330Nm/0〜3505rpm
・リアモーター最高出力:100kW/4897〜9504rpm
・リアモーター最大トルク:195Nm/0〜4897rpm
・燃料消費率(WLTC):18.4km/L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)235/60R18、(後)235/60R18