大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいいだけでなくお笑いもこなす親しみやすいアイドルグループとして、2023年には結成13年目を迎え、メンバーたちはバラエティタレントにモデル、グラビアアイドルなど、あらゆるジャンルの前線で活躍している。

なかでも“グルメ”に特化した活動の幅を広げているのが、6期生のゆいなちゃん(出口結菜)。InstagramやTikTokでは「#ラビグルメ」と称し、関西を中心に、お財布に優しいグルメ情報を自らが編集した動画で発信している。過去にはラジオの冠番組で食レポにも挑戦し、ホームページ「#小麦を愛す女子」を立ち上げるなど、“グルメアイドル”道を邁進中。

そんなゆいなちゃんが、大阪にあるパンの名店を紹介する本連載。第6回の舞台は、四天王寺前夕陽ヶ丘駅から徒歩約5分、上町筋沿いに店を構える「Boulangerie Parigot」(ブーランジュリー パリゴ、以下パリゴ)。豊中市で人気を博した「パン工房 青い麦」やフランスで経験を積んだシェフが生み出すのは、日常に寄り添うパン。ゆいなちゃんの「んーーまい!」が止まらない、おいしさの秘密に迫る!


■自転車で通う人も多数!「Boulangerie Parigot」のパンの魅力とは?
出迎えてくれたのは、シェフの安倍竜三さん。早速、おすすめのパンについてお話を聞くことに。

最初に紹介してくれたのは、開店時からずっと同じ製法で作られているという看板商品「バゲット・ド・トラディション」(356円)。「フランスの小麦を約半分に、アメリカと国産の小麦を、そのときの品質を見ながら比率を調整してブレンドしています。このバゲットの特徴は、甘味が強いこと。オーソドックスなフランスパンは仕込みから焼き上げまで8時間ぐらいかかりますが、うちは酵母の量を10分の1ぐらいに減らしてじっくり熟成・発酵させるので、15時間ぐらい。小麦はデンプン質を分解することで甘味になるので、時間をかけることでより強く甘さを感じるようになっています。炊き立てごはんのような甘味をパンで出したいと思っていて、“ご飯の代わりになるようなパン”を目指しています」

同じくオープン時からある商品で、商標登録もされているのが「天白食パン」(421円)。「バゲットの製法で作った食パンです。食パンはバゲットに比べて作る時間が短いですが、これは先ほどのバゲットと同じく15時間かけています。食パンは砂糖やバターで甘味を加えることが多いですが、そういったものは使わず、小麦の甘さと風味をそのまま出した食パンです。発酵がゆっくりなのでキメは粗くなるけど、長時間熟成することによってじっくり甘味が引き出されます。少しだけ米油と、日本人の味覚に合うように酒種も入れています。小麦は北海道の『春よ恋』を100%使用。『バゲット・ド・トラディション』と同じく、うちではロングセラーの商品ですね」

この連載の撮影後には、毎回バゲットを購入しているゆいなちゃん。「種類はいろいろあるんですか?」との質問に、「オーソドックスなものやライ麦のバゲット、もち小麦を半分ぐらい使ったものもあります。甘味も食感も違うので、食べるシーンによって選んでもらえたら」とシェフ。「料理によっても使い分けられますね!」とワクワクしつつ、初めて聞く「もち小麦」に惹かれている様子だった。

最初からゆいなちゃんが「気になる」を連発していた丸いパンが、「もち小麦のきな粉つぶあんぱん」(237円)。「『春よ恋』ともち小麦を50%ずつ使った生地であんこを包んでいます。中はちょっと空洞があるけど、普通のパンとは食感が違って、ひきが強いですよ。小麦のデンプン質はアミロース、アミロペクチンの2種類があって、普通の小麦はアミロースが6〜7割、アミロペクチンが3〜4割含まれています。アミロースは硬くなりやすい性質で、アミロペクチンはなかなか硬くならないのが特徴。もち小麦はこの、硬くなるアミロースが0なんです。普通のパンは焼き上がったらふわっとした骨格を形成していて、冷めたあとにちょっとつぶしてもスポンジみたいに形が戻るけど、この小麦を使ったパンは戻らなくてつぶれたまま。ずっと中が湿っているような状態なんです」

「おもしろ〜い!噛みごたえも全然違いそうですね。このあんぱんは全然つぶれなさそうな見た目なのに」と、ゆいなちゃんはますます実食が楽しみになった様子で、「きなこにもこだわってるんですか?」と質問。「丹波黒豆のきなこを使っています。パン屋さんって商品自体の値段が安いからどうしても材料費を抑えがちなんですけど(笑)、いいものを使ってもちょこっとなら原価は合うんですよ」

■新食感を味わえる希少なもち小麦にゆいなちゃんも興味津々!
シェフがもち小麦に初めて触れたのは、10年ほど前だそう。「もち小麦を研究している藤田修三先生という方が、『パンに使ってみて』と持って来たのがきっかけです。今は梅花女子大学の管理栄養学科で客員教授をされていますが、当時は農研機構で研究をしていて。商品化するまでは3〜4年ぐらいかかりました。もち小麦を入れたパンはつぶれやすいので、お客さんが持って帰るときにつぶれちゃうんですよね。今はもう割り切って、『つぶれるときはつぶれる』って思って出してますけど(笑)。もち小麦を使った生地で食パンも作っています」

ここで、「もち小麦のバゲット」(356円)も登場。「普通のバゲットより小ぶりなのは、売値をあまり高くしたくないから。もち小麦って日本で少ししか作られていないので、めちゃくちゃ高いんですよ」

「これはつぶすと、ほかのパンとは全く別物」と言いながらシェフがバゲットをつぶすと、見事にぺちゃんこに。全く形が戻る様子もなく、ゆいなちゃんもびっくり。「パッと見は普通のバゲットに見えるのに!つぶすと全然違う。パンでは見たことない現象で、もち小麦ってめちゃくちゃ魅力的ですね。食べるのが楽しみです!」

定番人気の「クロワッサン」(313円)も登場。「クロワッサンの折り込み数は27層が多いですが、うちは12層。少なくすることで皮をしっかりさせて、バターの風味を感じやすくしています」とシェフ。「折りすぎないほうがカリカリに、たくさん折ったら柔らかくなるんですよね?」と、ゆいなちゃんも連載での経験を活かして確認。「折り数が少なくなると、生地の面積が分厚くなるので湿気を吸いやすくなります。つまり、できたてはバリバリ食感だけど、劣化が早い。折り数が多いほうが劣化しにくいんです。でも風味は強くならないので、うちはずっと、少なめのこの折り方。バターはフランス・ノルマンディー地方で作られるイズニーの、A.O.P.認証されたもの。その風味を活かせるようにしています」

ちなみにシェフは、2002年にフランス・パリで開催されたクロワッサンコンクールの職人部門で入賞した経歴を持つ実力者。「製法はそのときのものをベースにしていますが、フランスとは使う材料が違うので、配合は変えています」とのこと。


続いて、こちらもゆいなちゃんがにこにこしながら眺めていた、「ニダベイユ」(334円)。「フランスのブリオッシュ菓子で、“蜂の巣”という意味です。焼き菓子のフロランタンのフィリングをブリオッシュ生地の上にのせて焼いています。中は本来、普通のバタークリームですが、それだと重すぎるので、うちはレモンも加えて、ちょっとさわやかに食べられるようにしています。上はアーモンド入りで硬めのカリッと食感、中はとろっとしたクリームです」。この説明を聞き、ゆいなちゃんは「フロランタン!!」とうれしそうに叫んでいた。

最後は、「ブロックベーコンとじゃがいものエスカルゴバター」(313円)。「バゲット生地を使った調理パンのなかで、一番売れています。エスカルゴバターとベーコンを合わせたパンです」。この時点で、「最高…」とつぶやくゆいなちゃん。シェフの説明は続き、「実は、京都にある『たま木亭』の玉木さんが、15歳のときからずっと一緒にパンの勉強をしていた兄貴分なんです。彼の店で人気の商品が、『パンシュー』というエスカルゴバターとベーコンを使ったもので。それをオマージュして僕なりに作ったのがこの商品です」とのこと。

京都の大人気店の名前が出たことに驚きつつ、ゆいなちゃんは「エスカルゴバター、食べたことあるかな…」とポツリ。「キノコのソテーに合わせたり、イタリアンでも使われるので、たぶんありますよ」とシェフ。ちょっとだけニンニクが入っているという情報に、「うれしい!ニンニク大好き!休みの前の日はニンニクチャーハンを食べるんですよ。よく韓国に行く理由も、ニンニクを使った料理が多いからです」と興奮。さらに、「エシャロットとニンニクを炒めて、そこにパセリを入れてバターと混ぜています」と詳細を聞くと、「最高ですね。お酒飲まないけど、きっとお酒にも合うんでしょうね!なんとなくわかります(笑)」と、大人な味わいにドキドキ。

デニッシュからハード系まで豊富なラインナップを誇るパリゴだが、なんと食パン系とフランスパンが売り上げの半分を占めるそう。ゆいなちゃんも、「さっき店内にお邪魔しましたが、おっきいパンを買ってる人がめっちゃいましたね!」と納得。シェフは「僕としては、日常で食べるバゲットや食パンを買いにきてくれた人が、小腹がすいたときに総菜パンや甘いパンを食べるのが理想の形」と言い、「一つひとつ食べやすいサイズですよね。本当に何個でもいけそうです」と言うゆいなちゃんに、「そう、いい材料を使いたいから、小さくしているんですよ。僕自身が、大きくて適当な材料を使っているものよりは、小さくて良質な材料を使ったものを何個も食べたいから」と話してくれた。

■フランスで知った「小麦のよさを引き出すパン」。若手の育成にも尽力
現在47歳のシェフは、21歳ごろから、4年半ほどフランスに滞在していたそう。

「15歳のときに、当時『パン工房 青い麦』(以下、青い麦)をオープンする前だったオーナーが運営していたパン学校に通っていて、そこで『たま木亭』の玉木さんも同期だったんです。僕が就職するときにも、オーナーに紹介してもらって、『ビゴの店』に入りました。そこにはフランス人が何人もいたけど、そのときはまだフランスに興味がなくて。20歳のときに、この夕陽ヶ丘で『麦の花』という店を立ち上げて、責任者をしました。その後、引き続きお世話になっていた『青い麦』のオーナーに『もっと本場を見てこい』って言われて、フランスに行くことになったんです。最初は行く気がなかったんですが、渡仏してから、フランスのパンに興味を持ちました。日本とは全然違うんですよ。それまでは見た目がきれいなパンが中心で、あとは甘いものをどう合わせるか、ということばかり考えていました。でも、向こうに行ってからは小麦の甘さとか、見た目じゃない、パンの本当のおいしさを引き出すフランスの作り方を知って。1年もしないうちに帰ってこようと思っていたんですが、いろいろなことを勉強したくなって、4年半ぐらい滞在しました。今うちで作っている小麦の甘みを引き出すパンは、そういう経験がベースになっています」

「フランス、行ったことないから全然想像がつかないです…」と言うゆいなちゃんに、「日本と似ていて、職人も食べ物にうるさい人が多いかもしれないですね(笑)」とシェフ。「ごはん目当てに行きたいです!ケーキとかチョコレートとかなんでもすごくおしゃれだから、フランスのほうが見た目を気にすると思っていたんですが、味にこだわっているのを知れて余計に行きたくなりました。(渋谷)凪咲さんがパリに行かれたときに、マネージャーさんが『パン屋さんほんまにすごかったで』って写真を撮ってきてくれたんですよ」

フランスのパン事情についてもシェフが教えてくれた。「当時は、フランスで売られているのはほとんどがバゲットでした。ほかはハード系やライ麦パンぐらい。クロワッサンやブリオッシュ菓子はあるけど、日本のパン屋さんほど種類は多くありませんでした。フランスも嗜好がちょっとずつ変わってきているので、今は種類も増えているみたいですね。昔はバゲットやクロワッサンなど数種を必死に作ればパン屋さんは成り立ったけど、今はインターネットでいろいろな国の情報が入ってくるから、ほかも作らないと厳しいみたいです」。ゆいなちゃんも、「SNSもありますもんね…」と納得。

パンの世界大会であるモンディアル・デュ・パンに、職人として2度出場したのち、コーチとして日本を総合優勝に導いた経験も持つシェフ。「大会では18種類ぐらいのパンを作るので、職人の得意・不得意を見て、得意な部分で点数をとって、苦手な部分で点数を落とさないようにコントロールするのがコーチの役割です」とのこと。

さらに、近年は若手の育成にも力を入れているという。「今まではあまり知られていなかったんですが、技能五輪という、22歳以下の若い層が出る世界大会があって。僕はパン屋さんの組合・リテイルベーカリー協同組合でも活動しているんですが、パン職人は担い手が少なくなっていて、外国の方に頼っている状況なんです。外国の方は出稼ぎに来ているから真面目で、このままじゃ日本が抜かれてしまって、日本の若い子に技術を伝承できない。だから、ひとりでもパン業界にとどまってくれる人を育てて、技能五輪を目指せるような人を育てられる環境を作っていっています。来年、ひとり技能五輪に送り出すんですよ。東京の店からですけど、業界全体が盛り上がるなら、それは自分の店にとってもいいこと。『最近、若い子が働かない』って言うオーナーも多いけど、僕らの時代は情報がなくて、漠然としたものを信じて我慢してやってきただけ。今は情報が手に入るから、『こういうことをやってたらアカン』と思ったらやらない。それはダメなんじゃなくて、いい選択をしているということだと思います。いい選択肢のなかに僕らの職業が入らないのが問題だから、一生懸命、場慣らしをしている最中なんです。パン作りは時間がかかるので、労働基準法のことを考えると少し大変で。昔は見習いの子が早く出てきて先輩の分も雑用をして勉強していたけど、今の時代はそれはできないから、おいしいパンを作れる技術を残していくためにその環境作りを頑張っています」

パン業界の話を真剣な表情で聞き、「アイドル業界とも照らし合わせられるお話な気がします」とゆいなちゃん。パン好きとしてだけでなく、アイドルとしても何か気づきがあったようだ。

■ゆいなちゃんも気づいたら完食!「もち小麦」の魅力を実感
ここからは、お待ちかねの実食タイム!「あんぱんの食感がめっちゃ気になる。もち小麦が初めてなんで、それを使ったパンの食感が全部楽しみ。フロランタンも、女の子は大体好きですよね!」とワクワク。

まずはクロワッサンを手に取り、皮のパリパリ感に感動。かじると、「バターの味がしっかり感じられて、めっちゃおいしい!香ばしさもあります。中は弾力があって、もちもち。外はほんまにパリパリのパイみたい。めっちゃおいしいです、このクロワッサン。絶対買ってください!」と、感想とおすすめが止まらない。

続いて、もち小麦のバゲットも実食。ひと口で、「あっ、ひきが強い!」と力強く拳を握りながら叫び、「中がもっちもちでしっとりもしていて、なんだかぬれおかきに似ていますね。めっちゃおいしい。たしかにちょっと湿ってる。バゲットじゃないみたいです!けっこう歯応えがあるので咀嚼をしっかりしないといけないけど、しっとりしているから水分が持っていかれない。全然パサパサしてないです!」と初めての感覚に驚いていた。

最後に、お楽しみの「もち小麦のきな粉つぶあんぱん」をガブリ。「うん、これもひきが強い。きなこが上品でおいしい!あんこもめっちゃ入ってます。シェフが言っていたように、たしかに空洞になってるけど、食感がもちもちしているので食べ応え抜群です。大きいんですけど、ギュッとつぶれるから食べやすいです」と語りながら、いつのまにか完食。3個目のパンをペロリとたいらげ、「いつの間に!?」とスタッフを驚かせた。

平日は80種、土日には110種が並ぶというパリゴ。11時30分ごろが一番多くの種類がそろうが、お昼すぎには売り切れになるものも多い。シェフは、「遠くから来てくれる人はもちろんありがたいですが、基本的には、地元のお客さんに買いに来てもらえるパン屋であればそれでいいと思っています」と話してくれた。

初めてのもち小麦に感動し、フランスの話にも聞き入ったゆいなちゃん。またまた巨大紙袋を抱えて、満足そうに店を後にした。次回はどんなパン店が登場するのか?お楽しみに!

取材・文=上田芽依
撮影=福羅広幸

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