フィギュアスケート界も、新型コロナ禍の影響ですべてのイベントが中止、または延期となってしまっている現状だ。最新の情報をお届けできないことに忸怩たる思いがあるが、一方で過去の取材をご紹介する良い機会でもある。 そこで今回は、2010年にオランダ、ハーグで開催された世界ジュニア選手権をご紹介したい。羽生結弦を筆頭に、日本勢が大活躍した大会だ。

■優勝候補の期待に見事応えた羽生結弦
2008-2009シーズンにジュニアに昇格した羽生結弦は、ジュニア2年目となるこのシーズンには国際大会でも圧倒的な活躍を見せた。国内、海外を問わずジュニアの大会では全戦全勝。まだ15歳の若さながら優勝候補の筆頭として臨んだ大会であった。この頃の羽生結弦は、まだ4回転ジャンプを試合のプログラムに入れておらず、ステップやつなぎの表現についてはまだ粗削りな面があったが、伸びやかな滑り、美しいジャンプのランディングなどは当時から卓越したものがあり、既に将来の活躍を確実視される存在になっていた。その期待にたがわず、ショート、フリーともほぼノーミスの演技で優勝を果たした。特にフリーでは、パーソナルベストとなるスコアを見て喜びを爆発させたのだが、その瞬間のキスクラ写真もカメラに収めることができた。通常、男子選手は高校に上がる頃まではジュニアに留まることが多いのだが、中学生にして世界ジュニアを制した羽生結弦は、翌シーズンから異例の速さでシニアへと昇格。その後はご存知の通り、一気にスター街道を駆け上がることとなる。

■女子、ペアでも日本勢が活躍した
一方の女子では村上佳菜子が優勝。幼少時は緊張癖があり、試合で実力を発揮できないことが多い選手だったが、このシーズンにはその欠点を克服。ジュニアの大会では全戦全勝。文句なしの一番人気として世界ジュニアに臨み、2005年の織田信成、浅田真央が達成して以来の世界ジュニアでの男女アベック優勝を果たした。この時、ショートでは2位発進だった村上佳菜子だが、フリーでは23番滑走で首位に立つ演技を見せた。まだ最終滑走の選手が残っていたのだが、優勝を確信した私は、最後の選手の演技を観ずに村上佳菜子のコメントを聞きに行ったことをよく覚えている。彼女もまた、この試合を最後にシニア昇格。その後は世界選手権に5回、2014年のソチオリンピックにも出場を果たすトップ選手となる。さらにこの大会ではペアにおいて高橋成美&マーヴィン・トラン組が銀メダルを獲得。彼らはその後、2012年、ニースでの世界選手権で銅メダルを獲得という快挙を成し遂げることとなる。このように2010年世界ジュニア選手権は、日本フィギュア界の歴史において特別な意味を持つ大会となったのだ。

文・写真=中村康一(Image Works)