ウミガメの背にサファイア、ネコの目にはルビー…。写実的な生き物に宝石を組み合わせた色鉛筆画が注目を集めている。たびたびメディアにも登場するこの作品を生み出しているのは、「長靴をはいた猫」さん。オリジナル作品に込める思いや絵を描き始めたきっかけを聞いた。

■自分だけの作品を探して生まれた動物×宝石の組み合わせ
現在はメイクアップアーティストになるため、美容学校に通いながら作家としても活動している長靴をはいた猫さん。中学3年の時に本格的に絵を描き始めたという。「当時はUSJにはまっていて、ボディペイントやハロウィンの特殊メイクに興味があったんです。受験に直面した中学3年の時に、本格的にメイクアップアーティストになりたいと思いました。そこで、色の濃淡などについて学ぶ一環として、独学で絵を描くようになりました。最初は鉛筆だけの白黒画で、好きな女優や友達が好きなアーティストなど人物画を主に描いていました」と、きっかけについて話してくれた。

高校入学と同時に入学祝いで色鉛筆を買ってもらったことから、その後は色鉛筆画を描くようになった。「色鉛筆で人物を描くのはハードルが高かったので、影や光の勉強をするために、1年ぐらいは宝石を中心に描いていました。テレビにも出演して宝石の作品が注目を浴びた時に、新しい作品を発表してほしいという声をもらって。そこでユキヒョウを発表した時に、宝石を上回る反響をもらって、そこからは、ほとんど動物ばかり描くようになりました。写真を見ながら模写するんですが、まるで生きているような、写真を超えるものを描きたいと思って、高3まで動物の絵を描き続けていました」。

現在のオリジナル作品である「生き物×宝石・鉱物」シリーズが生まれるまでには、さまざまな試行錯誤があったそう。「高校を卒業してから自分らしい作品を探し始めました。それまでは写真をそのまま描く絵柄だったんですが、自分だけにしか描けないものを生み出したくて。パズルみたいに欠けている作品や、テントウムシと時計を融合させたものも描いてみましたが、ただ何かを融合させることだけを考えていた時期は、本当に納得できるものが描けませんでした。また、東京タワーとサイを融合させてみようとしたけど、それも上手くいかず。途中まで描いたものの、やっぱり納得いかなくて完成しませんでした」と当時を振り返る。

その後たどりついたのが、高1から描いていたモチーフである宝石と、高2から描き始めた動物を融合させた現在の形だという。最初に描いた作品は、ウミガメ×サファイア。その理由は、意外なことに「形にとらわれていたから」。「宝石の形に合う丸い生き物がなかなかいなくて、その時思いついたのがウミガメでした。サファイアは、絵を描き始めた最初のころに反響をもらっていた宝石でもあります。神秘的なイメージを持たせる色でもある青と、海にいる生き物で青と相性がいいウミガメを組み合わせました」。また「今は、アイデアを形にする難しさや完成できた時の達成感を感じて、絵を描くことがより楽しくなりました」と、オリジナル作品への思い入れは強い。

■「夢は2つあってもいいんだ」と気付かせてくれた先生からのメッセージ
現在、メイクアップアーテイストと画家、2つの夢を追いかけている長靴をはいた猫さんだが、その後押しをしてくれたのは、中3時の担任からもらったメッセージだという。学級日誌の1ページに長靴をはいた猫さんが描いたリンゴの絵に添えられたのは、「めっちゃウマイやん!!この才能も大事にしてほしいな」という言葉。

「それまで夢は1個じゃないといけないという固定観念がありました。でも、このメッセージをきっかけに、夢って2つあってもいいんだ、と思えるようになりました。メイクアップアーティストを目指しつつ、作家としての活動も続けていきたいです」

その恩師とは、すでに来年の成人式で会う約束をしているとか。「リンゴと宝石を融合させた、自分にしか描けない作品を渡したいと思っています」とうれしそうに話してくれた。

また、実家で制作を行う長靴をはいた猫さんは、家族のなかでも、母親の意見に助けられることが多いという。「母も絵が好きで、昔からアドバイスをくれます。自分で見るとよくできたなと思っても、違和感があるところを指摘してくれたり、褒めてくれたり。『生き物×宝石・鉱物』シリーズだと、光の当たり具合がおかしいとか全体のバランスが悪いとか、客観的に見てくれています。学校では友達がすごいと言ってくれたことも、モチベーションにつながりました。褒めてくれる人と指摘してくれる人が両方近くにいたおかげで、毎日続けられて上達もしました」とまわりの人への感謝の気持ちを語る。

美容師の国家試験も控えているという自身の今後については、「美容の道では、世界的に誇れるメイクアップアーティストを目標に、作家としては、美術館で個展の開催、画集の出版を目標に頑張りたいです」。今後も、2つの夢を追いかける彼の新たな作品に期待したい。

取材・文=上田芽依(エフィール)