奈良市民にとって重要な乗り換え駅である近鉄大和西大寺駅(以下、地元民の呼び名である西大寺駅とする)。奈良から大阪へ、京都へ、もちろん奈良のあちこちへでかけるにも必ずといっていいほど利用するのがこの駅だ。奈良在住の小説家・森見登美彦氏はエッセイで「あたかも西大寺駅は世界の中心であるかのようだ」と語っている。それほどに重要な駅なのである。奈良県民にとって、なくてはならない(でも意外に降りたことはない)駅。そんな西大寺駅前に「餃子の自販機ができた」という噂が。さっそく実食してみた。

バスターミナルが整備され、新しいマンションが次々と建設されるなどして再開発が進んでいる西大寺駅南口。バスターミナルの西側、コインパーキングの片隅に自販機が並んでいるのが見えた。

ドリンク・ドリンク・「餃子」。違和感なく並んでいる。ドリンクの自販機はいずれもソフトドリンクのみ。

メニューは「MYP餃子(17個入500円)」「鶏餃子(14個入600円)」「カレー餃子(14個入600円)」「黒餃子(14個入600円)」の4種類。右側のタッチパネルを操作して購入する。現金のみ、お札は1000円札しか入れられないので注意。

MYP餃子、鶏餃子、カレー餃子の3種類を買ってみた。ちなみにMYP餃子は販売元の「有限会社MYP食品」にちなんで名づけられているらしい。

自販機のメニューに「冷凍」の表記がないものも全て冷凍で販売されている。タレが2つ付いているのがうれしい。当然ながら持ち帰り用の袋はついてこないので、エコバッグ(保冷バッグならなおよし)を持参することをおすすめする。

パックの中に入っていたチラシには、焼き方・茹で方の説明が。写真付きでわかりやすい。ごま油をひき、中火で軽く焼き色をつける。その後熱湯を注ぎ、フタをして水分を飛ばしてそこがきつね色になれば完成。

3種類ともフライパンで焼き上げた。皮が破れることもなく、簡単に焼けた。焼き色をつけるのに約1〜2分、蒸し焼きは3〜4分程度で完成した。薄めの皮なので、調理時間が短く済むのはうれしい。

まずはMYP餃子から。チラシによると、豚肉や野菜、にんにくはすべて国産。シイタケや昆布などの出汁をふんだんに使用しているとのこと。にんにくのパンチはあるものの、あっさりした味わいでいくつでも食べられそうだ。キャベツのシャキッとした食感もちょうどいい。

続いて、奈良の特産である大和肉鶏を使った鶏餃子。噛むごとに鶏肉のジューシーさと旨味が口いっぱいに押し寄せる。食卓を一緒に囲んだ家族からの評判が最も高かった。

最後にカレー餃子を。パック裏面の原材料名一覧によると、餃子の餡にカレーパウダーが混ぜこまれているようだ。風味付け程度かと思いきや、意外にガツンとスパイシー。ありそうでなかった組み合わせがクセになる。

いずれの餃子もにんにくがしっかり効いていたが、不思議と翌日には影響しなかった。手軽に買えて調理時間も短いので、「晩ごはんづくりをパパッと済ませたい」「チョイ飲み用に何かほしい」などと思い立ったときの強い味方になりそう。自販機でこんなに本格的な餃子が買えるとは予想していなかった。

チラシによると、自販機を運営しているのは西大寺駅から1つ奈良寄りの新大宮駅前にある「生餃子製造直売所」らしい。スタッフの増井さんにお話を聞いてみた。

―餃子自販機はいつから設置されたのでしょうか。

「今年7月に設置して、8月に始めたばかりです。」

―運営元の生餃子製造直売所について教えていただけますか。

「2019年にオープンしたテイクアウト専門店です。当店の運営会社は以前居酒屋を営んでいました。そちらの人気メニューだった餃子のノウハウが生かしながら、ご家庭で気軽に焼けるジューシーで美味しい生餃子を提供しています」

―自販機で餃子を販売することになったきっかけはなんでしょうか。

「自販機は新型コロナ対策の1つなんです。店舗がある新大宮はオフィスが多く、リモートワークの普及で人通りが減ってしまいました。対面販売に抵抗があるという方もいらっしゃいますし、なんとか新しい販売方法を考えなくてはと」

―なるほど、コロナ対策だったのですね。お店売りと自販機でメニューは違うのですか?

「自販機にある4種類はお店でも変えますが、個数が異なります。自販機は端数の関係で17個入りにし、店舗では付けていない餃子のタレを入れています。お店にはにんにくなしの餃子やカテキン餃子も販売しています」

―とくに人気がある餃子はどれですか?

「当店のスタンダードであるMYP餃子がやはり一番人気ですね。ただ、自販機では比較的どの商品もまんべんなく売れていく印象です。今回はお買い上げいただいていないとのことですが、発酵させた黒ニンニクを使った黒餃子(600円)もおすすめですよ」

―今度試してみます!餃子はどんなところで作っておられるのですか?

「当店の工場は『就労継続支援B型事業所』と言いまして、障害者の方が働く場となっています。お店を始めた当初は2人でしたが、今は13人が日々餃子づくりをしてくれています」

―西大寺駅前のほかにも自販機を置いているところはありますか?

「西大寺駅南口前のほかにも、西大寺駅から徒歩10分ほどの場所にある知人の会社敷地内に2台、生餃子製造販売所の店舗前にも2台、計5台が稼働中です」

―今後も自販機の台数は増えていくのでしょうか?

「まだ始めたばかりですし、急激には増えないと思いますが…。実は近鉄のとある駅構内に設置するお話が進んでいます」

―駅構内!ますます買いやすくなりそうですね。楽しみにしています。

コロナ禍という時代に見直されつつある自販機という古くて新しい販売方法。あなたの町にも意外なモノが並ぶ自販機が現れるかも?

取材・文=油井やすこ