アイス売り場で必ず目にする「ガリガリ君」。氷の粒の食感がクセになる、子供から大人まで大人気のロングセラー商品だ。「ガリガリくーん!」でおなじみのテレビCMの効果もあり、今や国民的アイスのガリガリ君は、2021年で誕生40周年を迎えた。

今や多くの人に愛されているガリガリ君の半生は、実は波乱万丈。誰も想像していなかったフレーバーの開発に、開発者いわく「自信満々だった」という挑戦的なフレーバーが3億円もの赤字を叩き出し、とある理由で深々と頭を下げた「お詫びCM」を放送するなど、なかなかインパクトある伝説を残している。

今回は開発にも携わり数々の伝説を生んだきっかけでもある、赤城乳業株式会社 マーケティング担当の岡本秀幸さんにインタビュー。40年の歴史を持つガリガリ君の重大事件を振り返るとともに、新フレーバー開発の苦労や商品に込められた思いを聞いた。

■偉い人たちが頭を下げた「お詫びCM」に絶賛の嵐!
ガリガリ君は棒を手に持ってかじって食べるものだが、もとは「かき氷」だったという。1964年に発売した「赤城しぐれ」というかき氷が大ヒットしたのをきっかけに、1980年に「子供が遊びながら片手で食べられるかき氷を作れないか?」と商品開発がスタート。試行錯誤を経て、かき氷にアイスキャンディーをコーティングすることで棒が抜けずに溶けにくいという、今の形が出来上がった。当初は「ソーダ」「グレープフルーツ」「コーラ」の3種類の味が発売され、この味は今でも定番となっている。

発売当初のガリガリ君は50円だったがその後60円に値上げし、それ以降25年間60円という価格を死守してきた。しかし原材料の高騰などから、2016年に希望小売価格を60円から70円に値上げをすることに踏み切る。その際、「値上げしてごめんなさい」という社長はじめ経営陣が自ら頭を下げるという「お詫びCM」をテレビで放映し、話題となった。

「価格を上げることについて誠心誠意伝えるため、CMを制作することにしました。撮影は当時の本社で行われ、社員を100名ほど集めてエキストラ一切なしで撮影し、当時の経営陣をセンターにして謝罪しました」

いつの間にか値上げをしていたり内容量を減らす商品も多いなか、赤城乳業株式会社のこの対応に消費者は「こんな誠実なCMは他にない」と大絶賛。しかし赤城乳業株式会社が本当に謝罪したかったのは、100円を握りしめて買いにくる子供たち。子供にとって10円の値上げはとても大きいもの。だからこそ実直に伝えたかった結果がこのCMだったという。

■アイスの価値観を変えた「コーンポタージュ」
ガリガリ君は70円のスタンダードなものだけではなく、少し高級感のある「ガリガリ君リッチ」(希望小売価格税抜140円)、高果汁でジューシーな味わいの「大人なガリガリ君」(希望小売価格税抜100円)などいくつか種類がある。これまでに発売された味はなんと150種類を超えるんだとか。シリーズを通して月に1度は新しい商品を発売しているため、社員たちは毎日新味の開発に勤しんでいる。

そのなかでも特に話題となったのが、2012年に発売された「コーンポタージュ」だった。一見、開発者の暴走とも思えるこの商品は、消費者の「ガリガリ君は挑戦をせずに守りに入ってるのでは?」という声を受けて誕生したもの。「お客様をびっくりさせてやろう!」と新商品の開発プロジェクトがスタートした。

「ガリガリ君の存在価値を考えた時、学校帰りにみんなでワイワイしながら食べていた駄菓子のようなイメージがありました。そこから駄菓子屋でどんな商品が売れているかを調査した結果、コーンポタージュ味のお菓子が人気でした。また、テレビで芸人さんが真夏に熱々のコーンポタージュを飲んで『おいしい!』と発言しているのを聞き、熱いものを冷たくしてみたらどうか?ギャップがおもしろいのでは?と思い開発をスタートしました」

しかし、開発の段階で前もって情報が出回り否定的な意見を受けたりすると、なかなか実現できないこともあるという。特にコーンポタージュという、普通はアイスにしないような味なら尚更だ。それを危惧した岡本さんは、自らの睡眠時間を削って夜な夜な開発に勤しんだ。

「当時はみんなが帰った後に試作を行い、朝早く出社して窓を開けて匂いを消すなど、証拠を隠滅したりもしていました(笑)。他の試作品は20%くらいの完成度で企画にあげていましたが、コーンポタージュだけは80%くらいの完成度にして、他と比べるとおいしく感じるように仕向けたりと、企画が通りやすいように必死でしたね。『社内の人を驚かせたい!そしてお客さんを驚かせたい!』という一心でした」

そうして無事完成したコーンポタージュ味は見事大ヒット。「予想外においしい!」と評判になり、一瞬で品薄に。3日で販売を休止するほどだった。

■気合いを入れすぎた結果の悲劇!「ナポリタン味」
コーンポタージュの大成功で味を占めた赤城乳業株式会社が次に発売したのが、江崎グリコ株式会社と共同開発した「ガリガリ君リッチ クレアおばさんのシチュー味」。そしてシチュー味の次に開発されたのが「ガリガリ君リッチ ナポリタン味」だった。記憶に残っている人も多いのではないだろうか。これは当時のナポリタンブームに端を発した商品で、ナポリタンの懐かしい雰囲気がガリガリ君にマッチするという理由と、「嫌いな人があまりいなさそう」という理由で開発がスタート。

しかし、アイスの中にトマトやパスタの味わいと食感を連想させるゼリー、ピーマンやタマネギの風味など味を再現することにフォーカスしてしまったため、結果は消費者から「まずい」と酷評で、なんと3億円近い大赤字。大量の在庫を抱えてしまう。

「確かに『ナポリタン』にはなったかもしれないけど、今思えばおいしかったかどうか私には分かりません…。それくらい夢中で作っていて、社内全体も血迷っていましたね。新しいものを作ることに燃えていて、それはよかったのですが…ナポリタンを選んだのは違いましたね(笑)。あまりの大失敗で、社内は『あーあ、やっちゃったなぁ』という雰囲気でした」

ナポリタン味は大失敗に終わったものの、この時に学んだことがその後の商品開発に生かされている。パンの食感や香りを再現した「ガリガリ君リッチ メロンパン味」、巷でスムージーが流行ったときは「ガリガリ君リッチ グリーンスムージー味」を開発するなど、流行を取り入れながら、食感や香りを再現することは今でも受け継がれている。赤城乳業株式会社は社員のチャレンジが認められる会社。日々トライアンドエラーを繰り返しながらヒット作を生み出している。

■実は大人に愛されていたガリガリ君
ガリガリ君のメインターゲットは子供だが、実は1番食べているのは30〜50代の男性だという。小さい頃に食べた味を大人になってから思い出し、その後ヘビーユーザーになるケースが多いそうだ。食べた後に甘さが口に残らないスッキリとした爽快感から、お風呂上がりや酒を飲んだ後などに食べるのにぴったりと、大人にも根強い人気を誇っている。

また、20〜30代の女性に特に人気なのが、夏限定「梨」。梨の食感を再現するため、氷の粒が通常より小さくなっていて、実際の梨と同じシャクシャクとした食感を楽しめる。果物の梨は8月下旬くらいからスーパーに並ぶが、「ガリガリ君 梨」の発売時期は毎年7月頃。「梨を早く味わいたい!」という熱烈な梨ファンにとってもありがたい商品だ。

誕生から40年経った今でもガリガリ君は多くの人に愛されており、子供も大人もあの“ガリガリ”という食感にハマり続け、安心感すら覚えている。2020年には翌年に40周年を迎えるにあたり、公式サイトで「実現して欲しい味」のアンケートを取ったところ、応募総数およそ5万件。そのなかで1位だったのが「うめ」だった。

「うめ味は1367票という応募があり、『こんなにうめ味を食べたい人がいるんだ』とびっくりしました。うめ味をリクエストした人は30〜40代が多かったです。梅といえば梅酒の緑のイメージと、梅干しの赤いイメージがありましたが、子供がターゲットだということ、そして駄菓子屋にも梅味のお菓子があるということで、赤い梅干しをイメージしたガリガリ君を開発しました」

うめ味は鮮やかな濃いピンク色の見た目から、かわいく写真に撮ってSNSに投稿する10〜20代も多かったそう。味だけでなく見た目も楽しいと気づかせてくれた40周年だ。

■50周年までに5億本突破したい!次なる味は?
ガリガリ君が次に目指すのは、誕生50周年。年間でおよそ4億本を販売し、ピーク時はコーンポタージュ味販売時の4億7500万本という最高記録を叩き出したが、まだ5億本を超えてないのが現状だ。岡本さんは、「50周年を迎えるまでに5億本を」と話す。

「当社はとにかく毎日アイスのことだけを考えていて、だからこそ他社がしないようなことにどんどん挑戦し続けていくことを大事にしています。自分たちが500%、1000%の情熱があって、初めてお客様に商品の良さが伝わると、私は思います。これからもいろんな味に挑戦し、まだまだ多くの人にガリガリ君を楽しんでいただける機会を増やしていきたいです」

12月28日には40周年記念プロジェクトとしての最後の商品「ソフト君伝説のプレミアムミルク」が発売予定。コンビニでは火曜日にアイスの新商品が並ぶことが多いそうなので、もし火曜日にコンビニに行った際は、新しいガリガリ君があるかどうかをチェックしてみよう。

私たちがなにげなく食べ続けてきたガリガリ君には、氷だけでなく開発者の並々ならぬ努力と情熱がぎっしり詰まっていた。50周年にはどんなフレーバーが登場するのか、今から待ち遠しく思う。

取材・文=福井求

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