ドラマ「初めて恋をした日に読む話」以降、Netflix全世界同時配信ドラマ「新聞記者」、TBS×ハリウッド共同制作日曜劇場ドラマ「DCU」、主演映画『嘘喰い』など話題作に多数出演する横浜流星。

2022年5月13日(金)公開の映画『流浪の月』では、歪んだ愛情から広瀬すず演じる更紗に暴力を振るう婚約者という、イメージを覆す役を体当たりで演じた。映画化が決まる前から原作のファンだったという横浜に、作品の魅力や役作り、厳しいといわれている李相日監督の撮影現場について話を聞いた。

■最初の亮のイメージは「なんだこいつ」だった
――もともと原作のファンだったそうですが、この作品の魅力をどんなところに感じていましたか?

【横浜流星】女児誘拐事件の犯人の文(松坂桃李)と被害者である更紗が、周りからの理解を得られないながらも互いを必要としている関係性が魅力的だなと思っています。帯にあった「愛ではない。けれどそばにいたい。」というコピーに惹かれて、実写化が決まる前に手に取りました。それってどういうことなんだろう?と。実際に読んでみると、考えの幅が広がったというか、新しい関係性の形を2人が提示してくれたように感じました。

映画ではより文と更紗の関係性にクローズアップして物語が進んでいくので、世間から好奇の目にさらされていく2人の姿にすごく胸が苦しくなったんですけど、最後には少し希望の光がさして救われた気持ちになりました。上映時間は2時間半ありますが、僕はどっぷり世界観に浸れました。もちろん自分のシーンは客観的には観られなかったんですけど(笑)。

――ちなみに、原作を読んだ時点でやりたかった役などはあったのですか?

【横浜流星】実写化を想定して読んでいたわけではなかったので、特になかったです。でも、最初はやっぱりどうしても主人公の更紗と文の目線で読んでいたので、亮に対して「なんだこいつ」と思っていました(笑)。

――オファーを受けた時はどう思いましたか?

【横浜流星】ひとつのズレで変わってしまいそうなこの繊細さを、李監督はどのように表現するんだろう?というのが最初の思いでした。亮役をやると聞いた時には、亮への思いは“憎い”しかなかったので、「おぉ、亮か…」と。でも改めて亮目線で見ると見方が変わって、すごく人間らしいし共感できる部分もあったので、目線によって全然印象が違うんだなと感じました。それに、自分は今まで受け身のお芝居をすることが多かった分、発信するお芝居ができるのは挑戦だなと思いました。

監督とお会いした時に「文をやりたかったでしょ?」と言われたんですが(笑)、いち原作ファンとして映画化されることは楽しみでしたし、監督のもと素晴らしい作品の一部として参加させてもらえることは幸せなこと。断る理由はありませんでした。

――亮役は横浜さんが今まで演じてきた中でも、かなりセンセーショナルな役だと思います。どんな風に役作りをしましたか?

【横浜流星】難しかったです。映画ではあまり深く描かれていないんですが、亮は母親に捨てられた過去があるからこそ、愛に飢えて愛を求めている人物。自分も愛をあげるから、相手からも愛を求めているんです。だから、自分自身も男として共感できた“更紗を愛して、更紗を守りたい”という思いに徹しようと思いました。

逆に言うと、亮はそれだけでよかったんです。それなのに、更紗の心がどんどん離れていくから、どうすればいいか分からなくなってしまう。手を出すのはいけないことだけど、どうしようもなくなってしまったから、亮の中ではそういう選択をすることしかできなかったんだと思うんです。なので、自分が亮目線で見た時に感じた“人間らしさ”を出せたらなと思って演じました。

■抵抗があった“甘える”シーンも亮を演じている時は自然とできた
――出演が決まった時のコメントで「自分の殻を破れたら」とおっしゃっていました。実際に、殻は破れましたか?

【横浜流星】破れたのかなぁ?自分の中で「よし、破れたぜ!」という確信はないですし、現場でもずっと悩んでいたんです。監督が答えを渡してくれる人ではなくて、ヒントを与えて「あとは考えて」というタイプなので、ずっとこれでいいのか?と思いながらやっていました。でも、監督がOKを出してくれて作品が完成したということは、少しは破れたと思ってもいいのかな、と今になって思えるようになりました。

――「甘えるのが苦手」という情報もありますが……。

【横浜流星】監督から撮影に入る前のリハーサルで、「(更紗と亮は)もう2年くらい同棲しているカップルなのに、その距離感はないよね」と言われました。広瀬(すず)さんとは今回が初共演で、初めましてがリハだったので、まずは広瀬すず、横浜流星としてコミュニケーションをとることから始めました。甘えることに対しては、最初はすごく抵抗があったんですが、亮を演じている時は自然とできていたんじゃないかなと思います。

――亮を演じてみて、学んだことや得たものはありますか?

【横浜流星】毎回思うことなのですが、自分じゃない人を演じることで考えの幅が広がります。今回は特に、もっと深く作品や役への向き合って作っていかなくちゃいけないと思えました。「これを学べた!」というのはまだ分かっていないですが、次の作品、次の作品…となった時に、今回得たものを実感することもあるかもしれないし、体に沁み込んでいるものもあるはず。言葉には表せないんですが、学んだものも得たものも、確実にあると思います。
■ストイックな横浜流星の息抜き方法
――今回の作品も含めて、これまで横浜さんのステップアップに繋がったと感じる作品や、監督、共演者の言葉はありますか?

【横浜流星】いっぱいあります。でもやっぱり、“はじこい(ドラマ「初めて恋をした日に読む話」”は自分にとってたくさんの人に知ってもらうきっかけになったし、そのおかげで今があると思える大事な作品です。映画では『青の帰り道』も印象的。撮影が1年間中断して、1年後にまたみんなで集まって完成させた作品なので、映画にどれだけ多くの人が関わっているのかということや、公開できることが当たり前じゃないことを実感しました。それ以来、公開できることに毎回幸せを感じるし、感謝をするようになりましたね。また、あの作品で藤井道人監督に出会い、その後も定期的に藤井監督の作品に参加させていただいているのはありがたいなと思っています。

今回の李監督との出会いも大きかったです。厳しい言葉も言われますが、こんなにも役者に対する愛があり、こんなにも撮影に時間をかけてくれる監督は珍しい。スケジュールの問題で期間内に撮りきることを最優先に、コミュニケーションも少なく駆け足で進んでいく現場も多い中で、リハも重ねつつ順撮り(時系列に沿った撮影)をしてくださるので、役への感情も繋ぎやすいんです。本当に大切に大切に作品を作ってくださる人なので、公開してたくさんの方に観てもらえたらうれしいです。もし李監督が呼んでくれるのであれば、現場は厳しかったですがまた参加したいです。

――お話を伺うほどストイックさが伝わってくる横浜さんですが、大人になった更紗にとって文の喫茶店が息抜きの場であったように、横浜さんにとって息抜きができる場所はありますか?

【横浜流星】基本的に家にいるので、家は自分らしくいられて切り替えもできる場所です。あとは友だちと過ごす時間。高校時代の同級生といる時は、当時の何者でもなかった自分として過ごすことができます。また、彼らも彼らでほかの仕事を頑張っていて、そういう話を聞くことができるのもいいです。みんなが違うところで戦っている姿を応援したいし、応援もしてもらえる。それでいて、みんなで集まった時は学生の頃の感覚に戻れるので、その時間はこれからも大事にしたいです。

――ご友人の方も横浜さんの作品は観ているんですか?

【横浜流星】そうですね、観てくれていますし、感想も教えてくれます。今回の『流浪の月』も、みんな「絶対観に行く!」と言っていたので、感想を聞くのが楽しみです。

撮影=大塚秀美
取材・文=あまのさき
ヘアメイク=永瀬多壱(VANITES)
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)