全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第35回は、宮崎市にある「Calmness of Beauty」。店主の大脇幸太さんは東京で出合ったスペシャルティコーヒーから焙煎に興味を抱き、自分なりのやり方、サイズ感で地元の宮崎にコーヒーの魅力を広める一人。最初は無店舗でロースターとして活動を始め、2018年12月、宮崎市に実店舗をオープン。コーヒーを楽しむ場所としてはカフェや喫茶店がほとんどの宮崎で、ドリンクはテイクアウトのみ、豆売りに特化した独自のスタイルを貫く。“美の静けさ”という意味を持つ屋号に込めた理由を含めて、大脇さんならではのコーヒーに対する考え方に触れてみる。

Profile|大脇幸太(おおわき・こうた)
1986(昭和61)年、宮崎県高鍋町生まれ。高校卒業後、福岡へ。岡山、東京と拠点を移しながら、音楽関係などさまざまな仕事を経験。東京で暮らしていた2010年ごろ、スペシャルティコーヒー、浅煎りを主体とするコーヒーショップと出合い、コーヒーの世界に興味を抱く。毎日コーヒーを飲むようになり、自宅で手網焙煎を始め、焙煎のおもしろさに開眼。宮崎へ帰郷後、小型の焙煎機を購入して、無店舗でロースターとして活動開始。2年ほどはカフェなどへのコーヒー豆の卸しをメインに、イベントにも積極的に出店。2018年12月、「Calmness of Beauty」をオープン。

■本流ではない、自分なりのコーヒーショップを
JR宮崎駅から車で5分ほどの住宅地に店を構える「Calmness of Beauty」。7:00〜15:00と通常のコーヒーショップとは異なる時間帯で営業する、一風変わったスタイルだ。もともとテイクアウト専門の唐揚げ店だったというテナントだけに、わずか3坪と最低限のスペースで店を営み、カフェスペースはなし。テイクアウトのドリンクとコーヒー豆だけを販売している点がユニークだ。もともと音楽関係の仕事を長くやっていたという大脇さんは、「サードウェーブからコーヒーに興味を持ったのですが、それもコーヒーの味わいというより、カルチャーに惹かれたから。昔から本流ではない、いわゆるカウンターカルチャーに分類されるものが好きで、コーヒーの世界にハマったのも、そこが入口」とコーヒーとの出合いを振り返る。

東京でスペシャルティコーヒーを柱とするコーヒーショップが増え始めていた2010年ごろ、大脇さんはさまざまなロースターを巡り、華やかなフレーバーを持つ浅煎りのコーヒーに少しずつ魅了される。「毎日飲みたくなる味わい」だと実感した大脇さんは、自身で日々コーヒーを楽しむために、手網焙煎を独学で始めた。もちろん最初は自分のために焙煎していたのだが、おぼろげに地元・宮崎でスペシャルティコーヒーを広められないか考え始め、2016年に帰郷。同時に250グラムの小型焙煎機、COFFEE DISCOVERYを購入し、知人のカフェやバーなどを中心に豆を卸し始める。徐々に卸先も増え、焙煎機を据えていた高鍋町と宮崎市の移動時間を短縮させる意味から、宮崎市に拠点を構えることに。それが、「Calmness of Beauty」開業の理由だ。

大脇さんにとっては宮崎市の拠点という意味合いでオープンさせた「Calmness of Beauty」だけに、先に述べたように店はテイクアウトのドリンク、豆売りに特化。卸先に豆を配達する時間等も考慮し、営業も7:00〜15:00という時間帯にしているというわけだ。

■テロワールが感じられる一杯を
「Calmness of Beauty」のコーヒーメニューはドリップコーヒー(ホット400円、アイス450円)、ラテ(450円)、カプチーノ(450円)のみ。ドリップコーヒーは豆が選べるスタイルで、常時5〜6種のシングルオリジンを用意している。ボディ感を出したい時はKalitaウェーブ、華やかですっきりとした味わいを表現したい時はHARIO V60とドリッパーも使い分け、味わいに明確なこだわりがあることを感じさせる。

大脇さんは「焙煎する際に最も大事にしているのはテロワールです。当たり前ですが、生豆の産地や品種ごとに持っている個性は違い、それを焙煎を通して最大化する。常にそのことを意識しながら焙煎するようにしています。それもあり、当店で深煎りとしている豆も、一般的には中深煎りに分類されると思います」と説明。

2022年7月現在、豆のラインナップは浅煎りのブルンジ、ルワンダ、エチオピア、中深煎りのブラジル、深煎りのグアテマラ、ペルーの6種。仕入れる生豆は時期によって異なり、時にはCOE(カップ・オブ・エクセレンス)、ゲイシャ種など、グレードが高く、より個性豊かな豆を仕入れることもあるそうで、コーヒーの多様な魅力を広めている。

■屋号に込めた想いをコーヒーで表現
屋号の「Calmness of Beauty」は直訳すると“美の静けさ”。自分への戒めも込めて名付けた屋号であり、コーヒーを焙煎し、抽出する上でのスタンスにもなっている。大脇さんは「雲の形とか、木の枝ぶりとか、自然に生まれた美しいものに心が動かされることがありますよね。当店のコーヒーを飲まれた方に、そんな感覚を感じていただけたら。すごく抽象的ですが、コーヒーってロジカルな側面はもちろんありつつ、感覚的に訴えかけるものだと思っていて。素材が当たり前に持っている魅力を、自然な形で表現していく。これからも、そんなコーヒーを作り上げていきたい」と大脇さんは話してくれた。

■大脇さんレコメンドのコーヒーショップは「恋史郎コーヒー」
「同じ宮崎市内にある『恋史郎コーヒー』さんをおすすめします。なんと言っても、宮崎で浅煎りコーヒーを最初に広めたのはこのお店ですから。市内の若手コーヒーショップのほとんどがお世話になってきたんじゃないでしょうか。まずはここ行っとけ、的な。店主の田中さんはコーヒーに対して非常に真面目で、常に“なぜ”“なに”を考えている人。彼のコーヒーはとても美味しいです」 (大脇さん)

【Calmness of Beautyのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式3キロ
●抽出/ハンドドリップ(Kalitaウェーブ、HARIO V60)、エスプレッソマシン(La Marzocco Linea mini)
●焙煎度合い/浅煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム850円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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