「スーパー遊園地」という、シンプルかつ胸躍るフレーズの計画が掲げられたのは、今年2月のこと。2019年9月に創業70周年を迎えるよみうりランドが描くビジョン、目指すべき「スーパー遊園地」の姿とは何か、杉山美邦社長に話を聞いてみた。前編となる今回は、来春オープン予定の「エンタメ植物園」「アート水族館」に焦点をあてる。

――よみうりランドが掲げる「スーパー遊園地」について教えてください。杉山社長が考える、スーパー遊園地のビジョン、ほかのテーマパークとの違いについて教えていただけますか?

【杉山社長】「スーパー遊園地」という言葉を、あえて使ったことには一つ大きな狙いがあります。今年2月に、よみうりランドの成長戦略をまとめました。この成長戦略は「飛躍」という名称でまとめたものです。我々は遊園地事業以外に、ゴルフ事業や健康関連事業、それから公営競技事業、それぞれに関連する事業を多角的に展開していますが、これからの10年を見据えたときに、やはりこの遊園地事業を成長の柱の一つに据えていこうという想いがあります。

【杉山社長】今まで我々が取り組んできた「遊園地」を「スーパー遊園地」へ、そんな想いでこのフレーズを使いました。遊園地というものに皆さんがどんなイメージを思い浮かべるか、それは人によってさまざまかとは思いますが、ジェットコースターとかメリーゴーランドとか、いろいろなアトラクションがあり、そこで遊べる場所、それがだいたいの共通したイメージだと思います。日本でも戦前から各地で遊園地が作られ、これまでの「遊園地の歩み」というものが存在するわけですが、「我々はこれまでの遊園地の枠を超えていきますよ」と、そういった強い想いがあります。そして、事業という観点でも「全国のライバルを凌駕していくスーパー遊園地」という狙いがあります。そうした想い、狙いを表現する上で、「スーパー遊園地」という言葉をつくりました。今までにない遊園地を日本につくっていく、そういう願いを込めています。

――具体的な展開についても教えてもらえますか?

【杉山社長】一つは来年(2020年)春にオープン予定の「エンタメ植物園」。これは既存の植物園とは一線を画す、文字どおり、エンターテインメントを体感できる植物園です。それから、「アート水族館」もその一つです。我々の施設があるこの多摩丘陵を、スーパー遊園地に変貌させていきます。今までの遊園地に、例えば植物園をつくり、水族館をつくり、複合的な遊園地に変えていこうと考えています。つまり、水族館が遊園地でもあり、植物園が遊園地にもなります。これまでのジェットコースターやバンデットのあるところも遊園地ですが、もっと大きな意味で、我々は総合的に「スーパー遊園地」という空間をつくろうと考えています。他の遊園地と比べ、楽しみ方や楽しむことのできる施設の数、そのバリエーションの差で圧倒的に優れたものを提供できるのではないかと考えています。

――「エンタメ植物園」や「アート水族館」は、社員の方のアイデアから生まれたとうかがいました。社長から出された“夏休みの宿題”だったとか。

【杉山社長】よくご存じで(笑)、そのとおりです。よみうりランドの社員は「人を楽しませたい」「人に感動を与えたい」というマインドを持っています。私がここに来て(2017年6月に社長に就任)、成長戦略を策定するにあたり、1年かけて成長戦略をつくろうと決めまして、昨年(2018年)夏に“宿題”として、「今後10年を展望したときに、我々の会社をどうやって成長させるのか、そのアイデアを出してください」という形で、全社員からレポートを出してもらいました。本当にたくさんのアイデアが集まりまして、その中でも、「これは面白い」「これを実現しよう」というアイデアを、提案したメンバーを集めて、ヒアリングを重ね、マーケット調査もかなり念入りに行いました。その中から選ばれたのが、「エンタメ植物園」と「アート水族館」なんです。

――それぞれの展望について具体的に教えていただけますか?

【杉山社長】まず、「エンタメ植物園」から説明させていただきます。もともとよみうりランドの一角に「聖地公園」という日本庭園があるのですが、ここがなかなかお客様には観賞していただけていないスペースでもあるんです。石垣があったり、春になると桜が咲いたり、すごく立派な庭園なんですよ。ただ、我々にとっていわば“眠った資産”でもあったので、ここに手を加えて、皆さんに見ていただきたいなと思っていました。そこに、社員のアイデアで「植物園をやりたい」というものがあったので、他の植物園とはまた違った魅力を提供できる植物園にしようと考えました。貴重な文化財が並ぶ日本庭園の景観を活かし、自然の花とデジタルを融合したり、小動物のパフォーマンスを組み込んだり、夏場にはホタル鑑賞ができたりという、1年中、エンターテインメントを体感できる植物園を実現します。目指しているのは、今までにない植物園、そういう意味での「エンタメ植物園」です。

――従来の植物園とは概念が違うわけですね。

【杉山社長】はい、それが我々の狙いです。それから「アート水族館」ですが、まず「東京の水族館」という話からすると、水族館はもともと臨海部、品川や葛西など、海に近いところに多いんです。この多摩丘陵、東京の西部地区には残念ながら大型の水族館は存在しません。マーケット調査を繰り返した上での結論として、「ここに大型の水族館をつくればお客さんに楽しんでいただける」という解答にたどり着きました。さまざまな魚の展示ももちろんしていきますが、水族館自体が一つのミュージアム、美術館のようなアート性を強調した水族館にしたいと思っています。先ほどのエンタメ植物園にも通じますが、最先端のデジタル技術を用い、観客側にも魚を浮かび上がらせたり、実際の魚が回遊している水槽と融合し、水の世界に入り込むことのできる演出を手掛けたり、一つひとつの水槽がまるでアート作品のようなこれまでにない水族館を目指しています。こちらはスタートの時期を含め、これから本格的な検討に入る段階ですので、ご期待いただければと思います。

【杉山社長】大型ではありませんが、よみうりランドも水族館を運営していたことがあります。施設の老朽化もあり、2000年に閉鎖しましたが、我々のスタッフには水族館事業を経験した人材もいますから、そういうものが“遺伝子”として残っていて、「水族館をやろう」というアイデアが出たこともあり、過去のノウハウを生かしながら取り組んでいきたいと思っています。

――近年の遊園地業全体について想うこと、杉山社長の考える、これからの遊園地のあるべき姿について教えていただければと思います。

【杉山社長】日本においての遊園地の歴史を調べると、戦前、1850年ごろから花やしき(第二次世界大戦の影響で1947年に再開園)が登場し、その後、いろいろな遊園地が全国各地に生まれました。大きな背景としては、各鉄道会社の沿線開発に伴う「人々を呼び込もう」という計画もそうですし、何よりも高度成長とともに余暇に対する人々の関心が高まったという背景があります。そして、2000年前後から遊園地は“冬の時代”を迎えました。これは日本がデフレ経済に陥ってレジャーに対する支出が抑えられていったという背景もありますが、遊園地の魅力が薄れてきたという側面もあるのではないかと思います。ディズニーランドやUSJに代表される、遊園地に対抗する新しいテーマパークが登場し、従来の遊園地の魅力が薄れてきたということが一つの要因でもあると私は考えています。我々は遊園地を基盤にした会社ですので、「スーパー遊園地」という言葉のとおり、これまでの遊園地の枠を飛び越えて、新しい形の遊園地をつくることによって、よみうりランドをさらに成長させたいと考えています。努力を重ね、挑戦を重ね、スーパー遊園地、新しい遊園地の姿を提供して、人々に新たな感動を与えていきたいと思っています。(東京ウォーカー(全国版)・浅野祐介/ウォーカープラス編集長)