2020年10月に発売になった「氷結(R)無糖 レモン」シリーズ。RTD(=Ready to drinkの略。購入後そのまま飲める飲料のことで、特に低アルコールドリンクを指す)は、これまで甘くて、食事とは別のシーンで飲むアルコール飲料というイメージが強かった。そのイメージを一新した「氷結(R)無糖 レモン」は瞬く間にヒット商品に。その開発秘話をキリンの担当者に聞いた。

缶を開けたらすぐに飲めるRTDは、飲みやすいという意味でも、適度な甘さのあるものが主流だった。キリンのRTDカテゴリー戦略担当の森永里乃さんは「ジュースのような飲みやすさはRTDならではの魅力でもあるので、それ自体をネガティブにとらえてはいません。ただ、RTDがお客様の日常に深く入り込んでいく過程で、飲用シーンや嗜好も多様化し、“食事に合う甘くないチューハイ”へのニーズが顕著化してきました」と話す。こうした変化を受けて、既存のRTDのイメージを一新する、新たなおいしさを提供する商品が必要だと考えるようになったという。

実は、「キリン 氷結(R)」ブランドからはすでに甘くないRTDを販売している。「2016年に“食事を美味しくする”をコンセプトに販売した「氷結(R)ストロング グルメ」(終売)や、甘さ控えめ糖質50%オフの「氷結(R)サワーレモン」(通年品)があります。しかし、 “甘くないからこその美味しさ”にこだわって作ったのは『氷結(R)無糖 レモン』が初めてです」と商品開発研究所・中味チームの宮下さゆりさん。

RTD市場はここ12年連続で拡大を見せている。その要因の一つとして考えられるのが、これまで他の飲料を飲んでいた人が、RTDを飲むようになったことが挙げられる。その中でも目立つのがビール類ユーザーだ。さまざまな理由が考えられるが、2019年10月の消費増税やコロナ禍での家飲みが増えたことが挙げられる。さらに、2020年10月に酒税法が改正され、税率の変動がなかったRTDはより飲用者数を増やしていった。

RTDカテゴリー戦略担当の森永里乃さんによると、「『氷結(R)無糖 レモン』の開発は、酒税改正対策ではありませんでしたが、一つの追い風ととらえていました。RTD市場の拡大をけん引しているのはビール類ユーザーの流入ですが、その人たちにとってRTDの“甘さ”は最大のトライアルバリア。ですから、ビール類を飲用する人がRTDを手にする機会が増える酒税改正のタイミングでは、甘くなくておいしいRTDにこそ機会があると考えていました」

一方、ビールユーザーには、RTD=甘いというイメージがあり、「食事に合わない」「ジュースのようだ」という意見が多かった。それを打破するためも、「氷結(R)」ブランドで“甘くないからこそおいしい”チューハイを作ることを目指した。商品開発研究所・中味チームの中島麻紀子さんは「氷結(R)ブランドでは、みずみずしい果実感が爽快に味わえる香味作りを目指しています。私たちは、目指す香味の実現のためには、味わいの調和が大事であると考えてきました」と話す。味わいの要素の一つである甘さを極端に減らしてしまうと、目指す味わいを達成できない可能性が高いと判断していたという。

今回の「氷結(R)無糖レモン」が広く受け入れられたのは、酒税改正やコロナ禍という“環境”だけでなく、一番はその味わいだ。「今回、“甘くないからこそおいしい”チューハイを作りたいとの話を聞いたときは、かなりハードルの高いミッションだと思いました。しかし、実際に試してみると“糖類・甘味料不使用“という制約とレモンという果実との相性が良く、自分たちが思っていた以上に、レモン感が爽快なチューハイに仕上がりました」と中島さん。

“レモンフレーバー”をチョイスしたことも大きい。宮下さんは「糖類・甘味料不使用で目指したスッキリした飲み心地と相性がよく、お店や自宅で作るレモンを絞っただけの甘くないレモンサワーが好きだという人も多いので、その味わいを缶で実現したいと考えました」と話す。レモンフレーバー市場は2020年も前年比134%で拡大している、RTD内で最も大きな市場。レモンフレーバーで発売することによって、より多くの人に手に取ってもらう機会が生まれると考えたのも、フレーバー選定の理由の一つだったそう。

この味わいが受け入れられるのに時間はかからず、発売とともにその反響が見られたという。「高橋一生さんが出演するTVCMで、『なんで今までなかったんだ?!』とおいしさに驚くシーンがあるのですが、実際に飲んだ方々が、『本当に、なんで今までなかったんだ!』『こういうのを求めていた!』と次々にSNSに投稿してくれました」と森永さん。“甘くないからおいしい”、食事と合わせたくなる味わいを好む反響が口コミでも広がっていったと考えられる。
 
また、過去商品と比較してリピート率が非常に高いことから、「一度手に取った人たちが、味わいを気に入って継続購入してくださっている様子が伺えます。甘くない分、レモンの果実感を味わえることや食事との相性がよいことのほか、重くならず飲み飽きないことも、ご支持いただいているポイントです」(森永さん)

「レモンの輪郭がはっきりと感じられてアルコール臭さがなく、とても飲みやすかったんです。この驚きがきっとお客様にも伝わって喜んでいただけると強い確信を持ちました。今回のヒットについては、まさにお客様にこのおいしさを実感していただけたからだと思っています」と話す森永さん自身も一番初めの試飲でヒットを確信したという。

“甘くないからこそおいしい”を実現させた「氷結(R)無糖 レモン」。「氷結(R)」シリーズは、定番の「シチリア産レモン」や「グレープフルーツ」などのスッキリとした味わいの商品のほか、「もも」や「みかん」などのほどよい甘みが楽しめる商品も通年商品としてラインアップしている。森永さんは「“甘み”はあくまで軸のひとつ。そこにこだわるのではなく、多様な魅力ある商品をお届けしていけたらと思っています」と話す。今後の「氷結(R)」シリーズにも期待が高まるところだ。