世界的にSDGs(エス・ディー・ジーズ/持続可能な開発目標)への関心が高まるなか、国や自治体、企業から個人に至るまで、大小を問わずさまざまな取り組みが行われている。一方で、その具体的な内容を知る機会は少ないのが現状だ。そこで今回、「ガンプラリサイクルプロジェクト」や、「プラモデルを組み立てるオンライン授業」といった取り組みを実施しているBANDAI SPIRITSのデピュティゼネラルマネージャー・松橋幸男さんにインタビューを実施。SDGsへの取り組みや、サステナブルなビジョンについて話を聞いた。

■SDGsってなに?

SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でより良い世界を目指すための国際目標。「誰一人取り残されない(leave no one behind)」社会の実現を目指し、「貧困」「飢餓」「健康と福祉」などをテーマにした17の目標と169のターゲットで構成されている。

■倍率100倍以上の工場見学からヒントを得た「オンライン授業」

――まず、BANDAI SPIRITSが取り組んでいる「ガンプラリサイクルプロジェクト」の活動内容を教えてください。

【松橋幸男】ガンダムシリーズのプラモデル「ガンプラ」のランナー(プラモデルの枠の部分)を回収し、最先端技術であるケミカルリサイクルによって、新たなプラモデル製品へと生まれ変わらせることを目指すプロジェクトになります。

――ガンプラの年間出荷数は2020年に2000万個を超えています。今まで捨てられていたランナーをリサイクルすれば、資源を有効活用する“循環型社会”の実例になりますね。

【松橋幸男】集まったランナーは、静岡にあるガンプラの生産工場「バンダイホビーセンター」から排出されるプラスチックと合わせて再活用します。

――「バンダイホビーセンター」の取り組みについて詳しく教えてください。

【松橋幸男】国内全体の生産拠点となっていて、企画開発セクション、設計、成形まで、すべての工程を取り行っています。

――「バンダイホビーセンター」には、2019年までに約4万人の工場見学者が訪れたとのことですが、どのような体験ができるのでしょうか?

【松橋幸男】1階にはショールームがあり、そこでは歴代のガンダムのプラモデルがディスプレイされていて、ガンプラの歴史を知ることができます。また、少し高い場所(2階)からご覧いただくカタチになるのですが、成形工場を見学できます。見どころとしては、成形機自体がガンダムのモビルスーツ(ロボット)っぽいカラーデザインにしていたり、成形品を運ぶ自動搬送機もガンダムのザクっぽくなっているので、そういった点も楽しんで見ていただけると思っております。

――ガンダムファンなら一度は見学してみたいですね。見学希望の声も殺到しているのでしょうか?

【松橋幸男】工場見学の倍率は夏休み期間などは100倍以上になることもあり、多くの方に工場をお見せできないのが現状でした。現在は新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のため、見学受付を中止しており、再開時期も未定です。

――子供たちにとって貴重な“ものづくりの現場”ですから、見学できないのは残念ですね。現在「オンライン授業×プラモデル」を実施されていますが、その経緯を教えてください。

【松橋幸男】我々としても「多くのお客様に見てもらいたい!」という思いがあったこと、「そしてなぜ、こんなにも多くの方が見学を希望してくれるのか?」という点を突き詰めた結果、ものづくりの原点がココ(バンダイホビーセンター)にあるという答えに辿り着きました。

――“ものづくり”は日本が誇る文化です。

【松橋幸男】はい。将来を担う小学生たちに“ものづくり”の楽しさを知ってもらうため、コロナ禍でもものづくりを学べる「オンライン授業×プラモデル」を実施することにしました。我々としては「日本の強みでもあるものづくりをしっかり知ってもらいたい!」という意気込みから生まれたプロジェクトで、その流れでサステナブルという観点も加わってきたと考えています。

■ものづくりの楽しさを体験し、地球環境を考えるきっかけに

――“ものづくり”の人材育成を掲げるオンライン授業とのことですが、どんな内容なのでしょうか。

【松橋幸男】「ものづくりの大切さ」を知ってもらうには、まずは興味を持ってもらうことが重要なので、体験用プラモデルを小学生に提供して、実際に組み立ててもらったり、プラモデルができるまでの映像を見てもらいます。その際、バンダイホビーセンターの担当者とオンラインで会話したり、質問などもできるという内容です。

授業は、プラモデルの企画や設計、金型製造、成形までの工程を15分ほどの映像で紹介したあと、「Zoom」などのWeb会議システムで子供たちの質問に答えます。さらに、この授業では「ものに触れる」というところを大切にしているので、実際にプラモデルを組んでもらって、「こんな風にできるんだ!」「こうやって可動するんだ!」「面白いな」という、手作りでしか伝わらないものづくりの達成感を知って欲しいです。オンライン授業は、今はまだテスト展開として実施していますが、今秋から本格展開を予定しています。今後の展開にご期待ください。

――なるほど、ものづくりの楽しさを体験しながら、廃材のリサイクルや地球環境を考えるきっかけにもなるわけですね。

【松橋幸男】小さな子供たちが、ガンプラを触って学んで、経験をして、その感動した体験が未来に繋がるというのが、エンタメ企業であるBANDAI SPIRITSの「サステナブルなビジョン」だと考えます。

■未来のものづくりは“浪漫”という“付加価値”を詰め込む

――ほかには、どんな取り組みがあるのでしょうか?

【松橋幸男】「LIMEX」という素材で成形した『恐竜骨格プラモデル ティラノサウルスとトリケラトプス』を9月に発売します。この企画のスタートラインには“プラスチックは枯渇する”という問題定義から入り、その代替品となる素材を試行錯誤した結果、地球環境に優しい新素材「LIMEX」の導入に成功しました。

――地球環境に優しいというのは?

【松橋幸男】「LIMEX」は、従来活用されてきた石油由来プラスチックに替わり、石灰石を主原料とすることで、製品中の石油由来プラスチックの比重を重量ベースで50%以下に抑えています。

また、このプラモを触ると少しヌメっとしています。少し専門的な話になりますが、恐竜の化石は石灰石と同等とされていて、この恐竜骨格プラモは石灰石を50%以上含んでいます。つまり本物の恐竜の化石に近いため、「土に埋まっている恐竜を掘り出したい!」という“浪漫”を叶えられるプラモになっています。

――ランナーのリサイクルや石油由来プラスチックに替わる素材の開発など、資源を有効活用する循環型社会を目指されているということがよくわかりました。SDGsに関して、今後の具体的な指標があれば教えてください。

【松橋幸男】バンダイナムコグループ全体として、2050年までにエネルギー由来のCO2排出量を実質ゼロにするという方針があり、2030年には35%削減(2019年度対比)、50年までにはCO2実質ゼロを目指して取り組んでいるところです。

また、それとは別にエンタメ企業の特性を活かした「IP(キャラクターなどの知的財産)軸戦略」も推進しています。「ガンプラリサイクルプロジェクト」では、全国にあるバンダイナムコのゲームセンターなど約200店舗にランナーの回収ボックスを設置し、バンダイロジパルで回収し、リサイクルをするというプロジェクトを行っています。

当初は「お客様がわざわざ持てきてくれるのか?」という懸念もありましたが、「ガンプラのために!」と、一緒になって取り組んで頂けています。このように、ガンダムというIPを通じて「繋がっている」という新しい実感も湧きますし、まさに「お客様と一緒に成し遂げる」といった点では、バンダイナムコグループならではのSDGsだと考えております。なので、今後の活動としては、「ファンの方と一緒に」「みんなでサステナブル!」というコンセプトで推進していきたいと思います。