5歳の長女と2歳の次女を育てるさざなみさん(Twitter:@3MshXcteuuT241U)。幼稚園で文字や計算などを習い始めた長女の勉強から気付いた子供とのコミュニケーションの取り方、勉強の教え方について感じたことをまとめた漫画が「目からうろこが落ちた」「子供との関わり方が腑に落ちた」と大きな反響を得ている。子供たちのクスッとするエピソードから、子供とのコミュニケーションに焦点を当てた内容まで、育児に関するさまざまな話を漫画にしているさざなみさんに、自身の育児について語ってもらった。

■子供は自分と違う他者であることを常に意識
作品内では子供たちの怒りや癇癪(かんしゃく)に対して冷静に対処している印象のあるさざなみさんだが、意外なことに自身が幼い頃は“激情タイプ”だったそう。

「泣き出すと手が付けられないと言われていました。私は子供のころの記憶がわりと鮮明にある方なので、自分でも泣いていた時のことを覚えているのですが、その時は自分なりの考えや理由があったように思います」

その記憶があるからこそ、子供たちがぶつけてくる怒りにも彼女たちなりの理由があると感じている。

「子供たちと接する時、相手は自分とは違う他者だということを常に思っています。完全に理解したり、コントロールしたりはできない相手であり、言葉を尽くしても気持ちが通じないかもしれない相手です。相手に自分とは違う考えや理由があることを認めた上で、『泣いたり暴れたりするんじゃなくて、こんなふうに伝えてほしい』と、見本を示すようなつもりで静かに対応するようにしています」

とはいっても、さざなみさん自身のコンディションが悪いと理想通りにできない時もあるそうで、「そんな時は正直に『今ちょっと心配事があって、落ち着かない』というように説明をするようにしています。そんなふうにならないのが一番なんですけどね」とのこと。こうした、さざなみさんの誠実な姿勢が子供たちにも通じているのを作品から感じる。

そして、「母」であるさざなみさんに加えて、もう一人、子供たちにとって大事なのが「父」。さざなみさんの夫も、さざなみさんとはまた違うアプローチで子供たちと関わっているのに注目だ。

幼稚園で教わる勉強がだんだん難しくなっていくことに対して不安を覚えた長女に「そうかなあ、むずかしいから面白いんじゃないか」「簡単なことやる方がつまんないよ」と話す。夫のこの考えは、“新しいことに挑戦し、失敗を当然と受け止めるためのマインドセット”だとさざなみさんは気付く。

「夫は冷静でストイックに努力を続けることができるタイプです。でもだからといって、同じようにできない私や子供たちを見限ることはありません。1つ分からない問題に直面すると、何もかも嫌になってしまうところのある長女ですが、お父さんから問題の切り分け方法を実地で教えてもらうことで、難しい問題に挑戦することを厭(いと)わなくなってきました。私にはできない導き方なので、夫にすっかり任せていて本当にありがたく思っています」

その後、長女は算数にハマっているのかと聞くと、今はクロスワードが好きだとか。

「ゲームや塗り絵にハマっている時もあります。特に何かを奨励したり、遠ざけたりはしないでおこうということは、夫婦でよく確認し合っています。遊びにしろ、勉強にしろ、子供がやりたいと思うタイミングで色んなことを体験させてあげたいという思いは共通です」

■大人にも通じる声掛けの技術
しばしばバズるさざなみさんの作品の中でも、特に反響が大きかったのが「困ってる?という問いかけ」。

ある日、ショッピングモールで1人たたずむ女の子に、さざなみさんが「大丈夫?ですか?」と尋ねると、女の子は「だいじょうぶです、すみません」と答える。しかし、さざなみさんの母が「ごめんなさいね、もしかしてあなた困ってる?」と聞くと、女の子は「……はい、こまってる」と答えるという話だ。問いかけ方によって、自分の状況を素直に話しやすくなるというエピソードは子供に限らず、大人にも通用する話だと多くの反応があった。

さざなみさんの母は元保育士。その経験が生きたエピソードなようだが、さざなみさんも母から良い影響を受けているそう。

「母は元保育士ですが、私が出産することが決まった時に、いろいろな最新育児の本を図書館から借りてきて勉強し直していました。30年近く保育に携わってきたのに、改めて新しい情報を取り入れようとする姿勢にプロ精神を感じて感服すると共に、一緒に借りてきた『孫育て』の本まで熟読している姿には、笑いがこみ上げてきました。『過干渉はいけないからね』と言って、私の拙い子育ても見守ってくれていることにいつも感謝しています。いつか、私の娘たちが子供を持つ時がきたら、同じようにしてあげたい、と自然に思っています」

■子供時代の記憶が、人生を通して残ることを実感
そもそも、さざなみさんが育児漫画を描くようにきっかけはなんだろうか?

「Twitterにアップする前から育児漫画は趣味として描いていたのですが、家族に読んでもらうための簡単な4コマ漫画で、とても公開できるものではありませんでした。しかし、子供たちの成長に伴って育児に関しての私の悩みや思いも複雑化していきました。その中には宝物のような体験や心に刻みたくなる気持ちもあって。漫画の形で残しておきたいと、空いた時間でストーリー漫画を描き始めました。最初のころは誰も共感しないだろうなぁと思ってましたが、思いがけずたくさんの反応をいただいて驚きました。『うちも同じだ』と寄せられる声に勇気をもらったり、『こんな場合もあるよ』という声に学ぶこともありました。それ以来、時間と余裕がある時にのんびり描き続けています」

さざなみさんの育児漫画は、育児の経験がない人からも反応があるのが特徴。子供時代の澱(おり)が消えた、悩みがスッキリしたと感謝されることがしばしばあったそう。

「何年も、時には何十年も前のもやもやが“言語化”された、という声はとても不思議に感じました。育児や人間関係に関する悩みが普遍的なものであると理解すると同時に、子供時代に感じていたことが人生を通して心に残ることを改めて感じ、気が引き締まる思いです」

今後については「子供たちの悩みもプライベートな部分が多くなってきているので、公開できるようなストーリー漫画を描くことは徐々に減っていくと思います」とのことだが、絵は好きなので、描き続けたいと話してくれた。

子供は同じ月齢であったとしても、成長の度合いも、性格も一人一人違うもの。なので、誰かと同じようにすればいいというものではないが、手探りが続く育児において、誰かの体験は励みになったり、ヒントになったりすることが多い。そして、育児とは“他者とのコミュニケーション”がキーとなっている。今、育児をしている人もしていない人も、コミュニケーション方法のヒントが散らばった漫画から得るものが多いのではないだろうか?

取材・文=西連寺くらら