映画『ダンスウィズミー』、『犬鳴村』、『十二単衣を着た悪魔』や、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』など、話題作への出演が続く三吉彩花。彼女が『MIRRORLIAR FILMS Season1』(and picturesの伊藤主税、阿部進之介、⼭田孝之が立ち上げた短編映画制作プロジェクト)に参加し、初監督作品となる短編映画『inside you』を完成させた。本作の撮影秘話や監督に初挑戦した感想、刺激を受けた映像作品などについて語ってもらった。

■「要望を言葉で明確に伝えることの難しさ」を感じた初監督の現場
――本作は三吉さんにとって初監督作品となりますが、どういった経緯でお話がきたのでしょうか。

【三吉彩花】MIRRORLIAR FILMSのプロデューサーである伊藤主税さんと『Daughters』という映画でご一緒した時に、「できるかどうかはわかりませんが、映画監督として作品を撮ることに興味があります」とお伝えしたんですね。そしたら、そのあと割とすぐに伊藤さんが今回の企画で声を掛けてくださって。それがすごくうれしかったので参加を決めました。

――本作は、やりたいことが分からない主人公が「幼い頃、何を夢見ていたのか?」と自問自答しながら、とあることをきっかけに変わっていく物語ですが、脚本のどんなところに惹かれたのでしょうか?

【三吉彩花】脚本を手掛けた相羽咲良さんの、言葉のセンスや物の捉え方が純粋に美しいなと感じたので、そこにまず惹かれました。相羽さんに脚本をお願いすることが決まってからいろいろと打ち合わせを重ねたのですが、何かを質問すると自分には考えつかないような視点から見た答えが返ってきたので、そこで気付かされることがものすごく多かったんです。

私のほうから「もう少しこういう世界観にしたいのですが」と提案すると、きっちりとそれを反映した脚本があがってきましたし、やり取りをする度に「こういう風になったんだ!すごい!」と思うことばかりでした。今回、相羽さんとご一緒できて良かったです。

――全体的に映像がとても美しい作品ですが、三吉監督が特にこだわったポイントを教えていただけますか?

【三吉彩花】色味や衣装、メイクなど、とにかく画面に映るものすべてが美しいという世界観にこだわって撮りました。もちろんただ美しいだけじゃなく、観た方が主人公に自分を重ね合わせて何かを考えたり感じたりできるような要素も盛り込んでいて、映像としてはきれいな世界観だけど、ちゃんとリアルな部分も感じていただけるように気を付けていました。

――普段は俳優として演出を受ける側の三吉さんですが、今回監督として主演の山口まゆさんを演出されてみていかがでしたか?

【三吉彩花】山口さんは、“こういう作品にしたい”という私のイメージを繊細に台本から汲み取ってくださって、「次はこういうパターンでやってみましょう」といったリクエストにも柔軟に対応してくださいました。とにかく完璧で、私からは何も言うことがないぐらいに(笑)。

ただ、自分自身に対しては思うところがいろいろとあって、今回は“要望を言葉で相手に明確に伝えることの難しさ”をものすごく実感しました。というのも、本作は台詞がほとんどなく、主人公の感情の繊細な変化を表現してもらうために、自分が思うニュアンスを言葉で説明するのがすごく大変だったんですよね。改めて俳優と監督のセッションは本当に大切なんだなと感じた現場でした。

■自ら手紙を書いてオファーしたバレエダンサー・飯島望未への思い「重要な役を受けていただけてうれしかった」
――ヒューストン・バレエ団プリンシパルとして活躍されていたバレエダンサーの飯島望未さんが、河川敷でクラシックバレエを踊るシーンがとっても素敵でした。「あのシーンだけ別料金が発生します」と言われてもおかしくないレベルの素晴らしさといいますか。

【三吉彩花】あははは!実は私もスタッフさんもみんな、あのシーンを撮影しながら「これって全員いますぐお金を払うべきだよね」なんて言っていたんです(笑)。もちろん、飯島さんにはお仕事でお願いしているので冗談で言っていたのですが、本当に素晴らしい踊りを見せてくださって感動しました。

――監督自らオファーされたのでしょうか?

【三吉彩花】以前から飯島さんの活動を拝見していて素敵な方だなと思っていたので、今回お手紙を書いてダメ元でお願いしたら受けてくださって。クラシックバレエを踊ることで主人公に強いメッセージを与えるという重要な役でしたので、飯島さんに受けていただけて本当にうれしかったです。

――飯島さんのシーンの撮影で印象に残っていることを教えていただけますか?

【三吉彩花】時間がタイトな中で夕暮れを狙って撮っていたのと、いろいろなアングルのカットが必要だったこともあって、結果的に飯島さんに15回ぐらい踊ってもらったんです。なので「本当に申し訳ない」という気持ちで飯島さんを見たら「全然いいですよ」と言って快く応じてくださったので、ありがたいなと思いました。

途中で雨が降ってきたりもしたのですが、日が沈み始めたのと同時に晴れてきたので「今だー!」とか言いながら慌ててカメラを回したのを覚えています(笑)。飯島さんだけじゃなく、スタッフの方々にもたくさん無理を言ったのですが、みなさんのおかげで美しい映像を撮ることができました。振り返ってみると、ほんと河川敷の撮影はバタバタだったなと思います(笑)。

――飯島さんの着ているドレスから赤い液体のようなものが噴き出すシーンもありましたが、あれはCGですか?

【三吉彩花】結果的にCGを使ったのですが、最初はどんなやり方がいいのかいろいろと試して検証していきました。例えば、冒頭の白いお花が急に赤く染まるシーンは、お花の中に針を入れて、そこに赤い液体を入れた水風船を落として撮っているんです。そのあと私もスタッフさんも合羽を着て、背中に水風船を投げたらどういう風に破裂するのかを検証してみたのですが、痛すぎたので「これは飯島さんにはできないよね!」と判断して(笑)。それでCGを使うことになりました。

――お話を聞いているだけで現場の楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

【三吉彩花】スタッフさんが『Daughters』のチームで、とても信頼できる方々だったこともあって、“これは仕事なんだろうか?”と思ってしまうぐらい楽しい現場でした。

■実体験を歌うテイラー・スウィフトの楽曲は「すごく説得力がある」
――また監督をやる機会があるとしたら次はどんな作品を撮ってみたいですか?

【三吉彩花】自分の経験と重ね合わせられるものじゃないと、“三吉彩花の作品”にはしたくないな、という謎のこだわりがありまして(笑)。例えば、本作の主人公は本人にしかわからないようなことや存在が人生の大きなターニングポイントになりますが、それは他人から見たら小さな変化なのかもしれないし、観る人によってこの作品をどう感じるか、捉えるかは全然違うと思うんです。

私は俳優というお仕事をしているので「ター二ングポイントは『○○』という作品ですか?」と周りから聞かれることも多いのですが、そういうわかりやすいものではない人生の分岐点って誰にでもあると思うんですよね。そういったことを日々考えていて、それで本作のような作品を撮りたいと思ったんです。

だから、今後もし監督の機会をいただくことがあるならば、自分自身も観る人も、主人公を自分に置き換えながら何かを考えたり感じたり、振り返ったりできるような、説得力のある作品を作りたいです。

――そんな三吉監督が最近、刺激を受けた映像作品があれば教えていただけますか?

【三吉彩花】去年テイラー・スウィフトのNetflixドキュメンタリー『ミス・アメリカーナ』を観たのですが、そのあと彼女の楽曲を改めて聴いてみたら全然感じ方が違ったので驚きました。彼女は実際に起きたこと、経験したことを全部ノートに書いていて、それを楽曲に落とし込んでいるんですよね。恋愛に関しても本当にあったことを歌っているので、すごく説得力があるんです。

――確かにアーティストのドキュメンタリーを観ると、楽曲の背景がクリアに見えてきて説得力が増したりしますよね。

【三吉彩花】そうなんです。あと“こういうことがあったから、彼女は当時そういう活動をしていたのか!”と納得することも多くて。音楽の世界でトップの座を勝ち取った人間はどういうことを考えているのかとか、良い作品を作るためにどんな人たちとどういうやり方をしているかなどを知ると、やっぱりすごいなぁと、圧倒されますよね。

そのあと彼女のライブ映像『テイラー・スウィフト: レピュテーション・スタジアム・ツアー』もNetflixで観たのですが、鳥肌が止まらなかったです。会場にいるファンがテイラーの言葉一つひとつに耳を傾けていて、テイラーもファンとしっかり向き合っていることが伝わるので、グッときてしまって。

先ほどお話しした、自分の経験と重ね合わせられるものじゃないとダメだと思ったのは、テイラーのドキュメンタリーを観たことが大きいです。かなり影響を受けましたね。とってもおすすめなので、まだご覧になっていない方はぜひ観てみてください!

取材・文=奥村百恵

◆ヘアメイク:牧野裕大
◆スタイリスト:岡本純子
◆撮影協力:Fogg Inc.

衣装=ジャケット、パンツ/ともに ディウカ(ドレスアンレーヴ 03-5468-2118)
ピアス/Ted Muehling(YAECA HOME STORE 03-6277-1371)
タンクトップ、靴/ともにスタイリスト私物