司馬遼太郎のベストセラーを映画化した『燃えよ剣』で、新選組副長の土方歳三を演じた岡田准一。『関ヶ原』に続き2度目のタッグとなった原田眞人監督の現場で改めて感じたことや、念願だったという土方役への思い、殺陣シーンの撮影エピソードなどについて語ってもらった。

■土方が存在していた場所に立ってみると「彼をすごく身近に感じられた」
――以前、『関ヶ原』で岡田さんにインタビューさせて頂いた際に、「原田監督はどこから撮っても成立するように動きや場(撮影現場)を作る方なので、役としてただその場にいることができる。幸せな現場でした」とおっしゃっていました。今回、改めて原田監督の現場で感じたことがあれば教えていただけますか。

【岡田准一】今回改めて思ったのは、原田監督はドキュメンタリー性とフィクション性を両立させたい方なんだということですね。例えば、作品で描かれる時代の言葉がどんなに難しかろうが、その時代を生きた人たちの会話の空気感をちゃんと撮りたいということが監督から伝わってくるんです。なので俳優陣はそれに応えられるように準備しなくてはいけません。

場所に関しても監督はリアルを求めていて、西本願寺や二条城などの世界遺産や国宝級建造物など、実際の場所でのロケ撮影もしました。そんな特別な環境が俳優のお芝居を助けてくれることもありましたが、歴史好きの自分としては“畏れを抱かせられる場所”でもあったので、正直少し複雑な気持ちになることもありました。

――幕末を生きた新選組の方々の“魂”を感じる瞬間もあったということでしょうか。

【岡田准一】やはりそういったものは感じました。“この場所で撮っていいのだろうか”とも思いましたし、変な話“土方に嫌われないようにしなきゃいけないな”という感情も生まれたりして(笑)。実際に土方が存在していた場所に自分が立ってみると、彼をすごく身近に感じられたんです。その瞬間に土方に認めてもらえるように演じきらなければいけないと思いましたし、いい意味でのプレッシャーを感じながら撮影することができました。

――土方歳三役は念願だったそうですが、“土方を演じたい”という思いを抱き続けていた理由をお聞かせいただけますか。

【岡田准一】土方はさまざまな戦いを経て、最後は敗戦が濃厚だとわかっている中で箱館(現在の函館)まで突き進むような人です。そんな土方に“戦い続ける悲しさや覚悟”のようなものを感じていたので、いつか演じてみたいという気持ちを抱いていました。今回、原田監督が声をかけてくださって、本作の脚本を読んでみたら僕が思う土方の魅力が詰まっていたので、この作品で土方を演じられるなんてこれ以上の幸せはないなと、そんな風に思ったんです。

僕はこれまでアクションや殺陣、格闘技について多くのことを学んできたので、“戦い”や“戦う男たちの気持ち”、時代劇における“戦う意味”をより深く理解できると思っていました。だからこそ原作ファンにも土方ファンにも認めていただけるような土方を表現できるように全力で挑みましたし、男が惚れるようなかっこいい人物として演じきれたのではないかなと思っています。

■「観客に人物像を刷り込ませること」を意識しながら作った殺陣シーン
――土方は新選組のナンバー2で、鈴木亮平さん演じる局長の近藤勇を支える立場であることから、撮影現場では鈴木さんをみんなの中心に据えて、岡田さんは一歩引いた位置から隊全体を見守ることが多かったと聞きました。

【岡田准一】今回、主演を務めながら殺陣も作っていたこともあって、殺陣シーンの撮影の時はカットがかかるとみなさんこちらを見て、僕の様子を伺っていたのが印象的でした。もしかしたら土方としてその場に立っている姿に圧を感じたのかもしれませんが(笑)、土方を演じるうえでは周りから恐れられているぐらいがちょうどいいぐらいの気持ちでいたんです。

そんな中、鈴木さんは新選組のメンバーを演じたキャストたちをまとめて、率先して場作りをしてくださったのでものすごく助かりました。鈴木さんだけではなく、山田涼介くんも沖田総司として土方の横でニコニコ笑ってくれていたので、自然と近藤、沖田、土方の関係性を作ることができて、演じやすかったですね。

――殺陣を作るうえでこだわったところを教えていただけますか。

【岡田准一】パッと見て“わ〜かっこいい!”という派手なものではなく、自然とキャラクターの特徴が伝わるような殺陣を目指して作っていきました。例えば、冒頭は34歳の土方がバラガキ時代を回想するところから始まるのですが、殺陣というよりもほぼ喧嘩に近いシーンがあって、本来であれば主人公は土方なので、土方から斬りかかってもいいのですが、そこをあえて近藤から斬りかかるようにしました。そうすることで最初の一撃から近藤の実直さやパワーを印象づけることができますし、そのあとに走って斬り込んでいく土方と、その脇を舞うように剣を振るう沖田という流れから3人の関係性がなんとなくわかるようになっています。

あと、伊藤英明さん演じる芹沢鴨と土方が対峙するシーンでは、芹沢が勢いで地面まで刀で斬ってしまったりするのですが、それは彼の強さを表現しています。こんな風に、さりげなく観てくださる方に人物像を刷り込ませることを意識しながら殺陣のシーンを作っていきました。

――先ほど、「原田監督はドキュメンタリー性とフィクション性を両立させたい方」とおっしゃっていましたが、殺陣シーンもそのような撮り方をされていたのでしょうか。

【岡田准一】例えば、僕が出演している映画『ザ・ファブル』や『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』では、アクションシーンのためのセッティングをいくつも作って、カットを割りながら撮っていたのですが、原田監督はアクションにもドキュメンタリー性を求めていたので、「頭から最後まで全部やって欲しい」とおっしゃるんです。

ですが、さすがに長いシーンの場合はアクションとそうではないお芝居部分を長回しで撮影するのは無理なので、3カットぐらいに分けてくださいとお願いして。それでも「もうちょっといけない?」と監督はおっしゃるので、「ここまでで勘弁してください!」と言いながら撮っていたのを覚えています(笑)。

■原作の土方の言葉が役作りの大事なキーワードに
――某インタビューで、原作にある「男の一生というものは美しさを作るためのものだ」という土方の言葉を役作りのうえで大事にされていたとコメントされていました。なぜこの言葉だったのでしょうか。

【岡田准一】江戸時代末期というのは黒船が来航し、開国を要求したことで、幕府の権力を回復させて外国から日本を守ろうとする佐幕派と、天皇を中心に新政権を目指す倒幕派が対立した激動の時代でした。そんな中で、“自分とは一体なんなんだろう”と存在理由を突き止めようとする人も多かったと思うんです。原作では土方の言葉として「男の一生というものは美しさを作るためのものだ」と司馬さんが書かれていますが、これに自分はすごく共感できたので、土方像を作るうえでとても大事なキーワードになっていました。

――この言葉からは男の美学のようなものを感じますし、それを全うして生き抜いた土方はすごくかっこいいですよね。

【岡田准一】冷静に見ると少し危険な人ではありますけどね(笑)。でも、僕はそこが好きですし、儚さや危うさを身に纏っている“不完全な魅力”が土方にはある気がします。

――最後に、本作を楽しみにしている方々に向けてメッセージをお願いできますか。

【岡田准一】映画館で観て満足していただける作品を作るために、原田監督はキャスト、スタッフ、チーム全員にハードルの高いものを求めていました。そういう環境でお芝居をさせてもらえることは僕にとって非常に幸せなことでもあって、結果的に映画館で観ていただくのにふさわしい映画になったと思います。ぜひ大きなスクリーンで鑑賞していただけたらうれしいです。

取材・文=奥村百恵